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日蓮大聖人・池田大作

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はじめに 『健康と生命と仏法を語る』

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  先日(二〇〇四年九月十四日)の厚生労働省の発表によると、日本の百歳以上の長寿の方々は、二年連続して二万人を突破し、過去最高を記録した。私のよく知る人生の先輩方も、かくしゃくと活躍されている。
 高齢社会が本格化する一方で、食生活の欧米化にともなう生活習慣病も増加してきた。高齢者介護の問題も、重大である。鳥インフルエンザなど、新しいウイルスも人類の健康を脅かし始めている。
 いかにして、すこやかに長生きしていくか。ウォーキング(歩くこと)などへの取り組み、健康食品ブームなど、近年の健康への関心の高まりは目を見張るものがある。
 トインビー博士は、私と二年越しの対話を開始したとき、八十三歳であった。博士のモットーは、ラテン語の「ラボレムス(さあ、仕事を続けよう)」である。その言葉どおり、「さあ、きょうも何かを始めよう!」「後世のために何かを残そう!」と、日々、生き生きと研究に励み、学びぬき、書き続けておられた。博士のように、心身ともに、はつらつと充実した毎日を生きるには、どうすればよいか。長寿で価値ある人生を生きるには、何が必要か。その確かな答えを、現代人は求めてやまない。
 こうしたテーマを、私は折にふれ、創価学会のドクター部や白樺会・白樺グループ(看護者の集い)の代表の方々と語りあってきた。その座談会を一冊にまとめたものが、本書である。
3  私自身、青春時代は、病気との闘いで始まった。戦時中、肺結核を患い、医師からは「三十歳まで生きられるかどうか」と言われたこともあるゆえに、いつ倒れても悔いがないよう、一日一日を完全燃焼で生ききってきた。人生の師である戸田城聖先生(創価学会第二代会長)は、戦時中の弾圧で、二年間の過酷な投獄に耐えぬかれた。大難の連続のなかで、「いかなる病さはりをなすべきや」との強靭なる生命力を示されたのである。
 とともに師は、私たち弟子の健康を気づかい、こまかな点まで注意してくださった。
 たとえば「生活のリズムをつくりなさい」「夜はできるだけ十二時までに休むことだ」「疲れをためないように」「栄養は足りているのか。消化のいいものを食べなさい」等々。
 その「健康の智慧」は、まことに具体的であった。師匠の慈愛というものは、ありがたいものである。
 仏典によれば、釈尊も弟子たちに健康のアドバイスを贈っている。その内容は、手洗いやうがいなど、細部にまでわたる。やはり、弟子が健康で戦えるように、長寿で修行を達成できるように、との心配りであったにちがいない。実際、健康を維持するためには、平凡なようであっても、こまかい点に注意することである。生活の基本を大事にすることである。
 「教養ある食生活」「よく歩くこと」「温度差に気をつけること」など、ちょっとした心がけで、かけがえのない命を守れる場合が多々ある。
 自分の健康は、ある意味で自分自身が″医師″となり″看護師″となって、賢く守っていかねばならない。聡明な智慧の力によって、どれほど多くの人が、健康長寿を勝ち取っていかれることか。
 仏法は、人間の内面から智慧を薫発して、医学の知識や力を賢明に活用する。仏典には、患者のあるべき姿として「みずから努めて智慧を発揮しなさい」(「摩訶僧祇律」)と説かれている。生命のリズムを整え、その本源の力を自他ともに高めていく哲理が、仏法なのである。
 現在、私は、世界的に著名な心臓外科医で、ヨーロッパ科学芸術アカデミー会長のウンガー博士と対話を重ねている。(=二〇〇七年八月、対談集『人間主義の旗を――寛容・慈悲・対話』〈東洋哲学研究所〉を発刊)
 博士は明快に語っておられた。「長生きするには『身体面の運動』をし、なければなりませんが、同時に『精神面の運動』が必要です。これがカギになると思います」と。
 「信仰」や「信念」という心の次元の活動が、長生きにもよき影響をあたえるという洞察である。
 いかなる苦難や逆境のときにも、勇気凛々と前進していく人は、いつまでも若々しい。みずから希望を生みだし、実現し、さらに、より大きな目標に向かって、「いよいよ、これからだ!」と元気に進み続ける、その原動力が信仰であり、信念なのである。
4  日本は、現在、世界一の長寿国となった。この流れを、さらに「長寿即健康」「長寿即幸福」へと高めていきたいと、私は願う本書が、みずみずしい智慧と生命力を輝かせながら、二十一世紀の「健康長寿社会」を築いていく一助となれば、望外の喜びである。
   二〇〇四年十一月十八日
      創価学会創立記念日に      池田大作

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