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日蓮大聖人・池田大作

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生命力を引き出す仲介者

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  体のもつ「治す力」を助ける――「薬に頼りすぎ」は危険
 池田 ところで、薬とは何でしょうか。
 金谷 中国では何でも薬になると言われています。(笑い)
 加藤 日本の薬事法という法律では、人や動物の病気の治療、診断、予防のために使われるものとされています。
 児玉 そのなかでも、厚生省の認可を得たものが「医薬品」です。
 金谷 薬の基本は、体のもっている「治す力」を助けるものです。薬(内服薬)を英語で「メディスン」と言いますが、その語源には「媒介」「仲介」「仲裁」などの意味があります。体のもっている「自然治癒力」を引き出す媒介が薬だと思います。
3  戸田先生「体は一大製薬工場、薬は補い」
 池田 そうでしょうね。戸田先生は「人間の体は一大製薬工場だ」と言われていた。「それを、なんとか医学で、薬で、補おうというだけなのです」と。
 児玉 それは、すごく大事な観点だと思います。薬に頼ればいいというのではなくて、根本は、できるだけ薬がなくてもいい方向に、自分の体をもっていくことなんです。
 池田 では、「病院でもらう薬」と、「町の薬局・薬局で自由に買える薬」とは、どう違うのですか。
 児玉 病院の薬は「医療用医薬品」と呼ばれ、医師の処方せんが必要です。薬局・薬店で市販される薬は「一般用医薬品」と呼ばれています。
 池田 風邪をひくと、病院では何種類もの薬が出ますが、薬局で買うと一種類ですね。どうしてですか。
 加藤 病院の薬は、「一つの薬に一つの成分」というのが基本になっています。ですから、「熱があって」「せきが出て」「鼻水がひどい」といった場合、それぞれの症状に応じて薬が出されるので、種類が多くなってしまうのです。
 児玉 市販の薬は、風邪のいろいろな症状に効くように、いろいろな成分を一つにまとめたものと考えればよいと思います。
 金谷 あえて料理にたとえると、市販の薬は「レトルト食品(調理した食品を袋づめし、熱と圧力を加えて殺菌したもの)」と言えるかもしれません。それに対し、病院の薬は、野菜や肉、果物など、いろいろな材料を使った「手料理」と言えるでしょう。
 池田 なるほど。医師はその材料を、患者さんの要望に応じて、処方するわけですね。
 加藤 はい。調理そのものは薬剤師がします。
 児玉 病院の薬の大きな長所は、同じ風邪でも、熱がある場合やない場合など、個人の状態に適した薬を処方できることです。
 金谷 それに、眠くならないようにしてほしいというような患者さんの要望に、ある程度、応じることができます。市販の薬では、それができません。また、熱がなくても解熱剤が入っていたりして、必要のない薬を飲んでしまうことにもなります。
4  市販の薬は急場のときに、症状が長引くときは病院へ
 池田 すると病院の薬と市販の薬は、どう使い分ければいいですか。
 児玉 旅行中とか、症状がひどくなくて急場をしのぐためには、市販の薬が手軽でよいと思います。
 金谷 その場合でも、「この症状なら風邪薬」と自分勝手に判断しないで、薬局の人に症状を伝えて、いちばんいい薬を紹介してもらったほうがいいでしよう。そのとき、持病などで、いつも飲んでいる薬があれば、忘れずに話すことが大切です。
 加藤 いつもと違う症状があったり、症状が長引く場合は、病院できちんと診察を受け、薬をもらったほうがいいと思います。そのときも、病院に行くまでに飲んでいた薬があれば、医師に伝えてください。
5  複数の薬を″同時に服用″は注意!――「薬と薬が体内で争う」
 池田 「病院の薬」と「市販の薬」を同時に飲んでいる人もいますね。
 金谷 はい。市販の薬を、何種類も飲んでいる人もいます。勝手な素人判断で、薬を使うことは、ぜひともさけてほしいですね。必ず、医師や薬局の薬剤師に相談してください。
 池田 日蓮大聖人も、「病人に薬をあたえるには、前に服用した薬のことを知らなければならない。薬と薬が(体内で)ぶつかって、争い、人の体をこわすことがある」(御書一四九六ページ、通解)と仰せです。
 思想・哲学においても、これまでどんなものが広まっていたのかを、よく知らなければ、ならない(教法流布の先後)ということの譬えとして言われたのです。
6  薬の歴史は人類の歴史とともに古い
 金谷 日蓮大聖人は、当時の医学にも通じておらたのですね。
 池田 仏教では、釈尊の時代以来、心身の苦しみを癒すものとして、薬物に深い関心を寄せ、多くの研究、論述もなされました。
 くわしいことは省きますが、ともあれ薬は、人類の「病苦との闘い」の結晶です。
 「薬の歴史」は、人類の歴史とともに古いと言ってよい。いちばん古い薬の記録は、メソポタミアで発掘された粘土板にあるそうです。紀元前二六〇〇年ごろのものです。
 児玉 釈尊の時代のインドでは、ケシやキョウチクトウ、ウコン、ビャクダンといった植物、ジャコウジカなどの動物、水銀などの鉱物が、薬として使われていたそうです。水銀をのぞけば、現在でも医薬品やその原料になっています。
 加藤 自然の植物や動物などから薬の成分を取り出したものを「生薬」と呼びます。現在の医薬品にも、こうした生薬がなぜ効くのかを分析して作られたものが、たくさんあります。
 池田 数千年がたつでも、現代に生きているのですから、人間の知恵はたいしたものですね。
 金谷 はい。しかし、なかには、首をかしげたくなるような薬もありました。
 たとえば、メソポタミア文明では、馬糞が薬とされていました(笑い)。効果のほどはわかりませんが、長い間、薬として使われていたようです。
7  ドリンク剤は薬でない場合も
 池田 薬局には、ビタミン剤、滋養強壮剤などドリンク剤がたくさん並んでいますが、これは「薬」ですか。
 金谷 薬の場合もあります。その場合は、基本的に医薬品と明記されています。
 それ以外のものは、清涼飲料水や健康食品に分類されます。
 池田 医薬品でなくても効果はあるのですか。
 加藤 直接に病気の治療に役立つというよりも、病後や食欲がないときに、栄養を補うために使うということです。
 児玉 元気で食欲があるときは、必要なビタミンは食物から吸収されているので、飲んでもむだになることがあります。
 いくら多くとっても、排泄されてしまうからです。
 金谷ビタミンは体にとって大切なものですが、ビタミンBやCなどは体の中に、たくさんためておくことができません。野菜や果物で毎日とるのがいちばん効率がよく、バランスも保たれます。
 加藤 滋養強壮剤は、睡眠不足や疲労ぎみのときに使う人が多いようです。本当は、疲れたときには休息するのがいちばんいいのですが……。
 池田 現代人は、せわしなくて、休みたくてもなかなか休めない。だから、つい手軽なドリンク剤を飲むことが多いようです。しかし、それで無理をして病気になってしまっては本末転倒ではないでしょうか。とくに年配の方は、休むことが疲労回復にはいちばんです。賢明に休養への工夫をしていただきたい。
8  西洋医薬と漢方薬
 池田 ビタミン剤というと西洋医薬で、滋養強壮剤は漢方薬というイメージがありますね西洋医薬と漢方薬はどう違うのですか。
 金谷 西洋医薬というのは、病気を主体に考え、胃腸や眼、耳といった病気の症状がある器官に、おもに作用します。
 それに対して、漢方薬は、人間全体を主体に考え、症状のある器官に関係なく、体全体の調和を整え、状態をよくして、病気を治す、というものです。
 池田 部分を見るか、全体を見るかの違いですね。
 児玉 はい。たとえば、西洋医薬では、「この症状」には「この薬」というように対応しています。どんな患者さんでも、痛みがあるときは鎮痛剤、じんましんが出れば、抗アレルギー剤といった具合です。
 ところが、漢方薬の場合はそうではありません。関節痛でも、じんましんでも同じ薬が処方されることがあります。
 反対に、同じ症状でも、患者さんによって、まったく別の薬を使ったりします。
 加藤 ですから、この漢方薬は何に効く薬ですかと聞かれるのがいちばん因るんです。(笑い)
 池田 ほかに違いはありますか。
 金谷 薬の内容も違います。西洋医薬は一つの薬は一種類の成分からなっていることが多いのですが、漢方薬は多くの生薬が混合されています。一つの生薬には、さらに多くの成分がふくまれているので、数百という成分からできていると考えられます。
 池田 子どものとろにおなかをこわしたとき、「熊の胆」を飲んで治ったのですが、「熊の胆」は漢方薬ですか。
 児玉 熊の胆は漢方薬の原料で、熊胆と呼ばれています。
 池田 西洋医薬、漢方薬のどちらにも副作用はありますか。
 加藤 あります。西洋医薬は効いてもらいたい器官だけでなく、ほかの器官にも薬の影響が現れてしまいます。
 漢方薬も体質にあわなかったりすると、副作用が出ることがあります。
 池田 それぞれに長所があるようですね。西洋医薬と漢方薬を、うまく使い分けることはできますか。
 金谷 金谷急性の病気や、感染症、などには西洋医薬が力を発揮します。
 一方、はっきりと病気とは言えないが、体の調子が悪いとき、また、調べても原因がよくわからない場合、などには、漢方薬が適しているとされています。
 児玉 たとえば、「高血圧症で血圧を下げる」には降圧剤が有効です。しかし、「血圧が下がっても、頭痛や不眠、しびれ感などの症状がある」場合には、それらの症状をよくするのに漢方薬のほうが効くことがあります。
9  漢方薬の併用は専門家とよく相談して
 池田 では西洋医薬と漢方薬をいっしょに使ってもかまわないのですか。
 加藤 はい。これは「併用療法」と言われています。とくに慢性の病気などで、西洋医薬の副作用を抑えたり、「漢方薬で体質の改善をしながら西洋医薬の量を減らす」ために行われることが多いようです。
 金谷 ただ漢方薬は、たいへんきめこまかい処方を必要とするので、漢方の専門家の指示にもとずついて使用することが大切です。
 池田 いろいろ、な薬がありますが、信頼できる専門家と相談して、それぞれの長所を生かしていくことですね。先ほど、人体は「一大製薬工場」と言いましたが、生命には本来、「病気を治す力」が備わっています。
 この力を、仏法では「薬王菩薩」と説く場合がある。妙法のリズムに合致すれば、この「薬王菩薩」の働きが活発になります。薬もよく効くようになると考えられます。
 児玉 それは私たちも、多くの例で見ていますし、自分自身も実感していることです。
10  「飲み方」で効き目が変わる
 池田 薬は「諸刃の剣」と言いますね。体にいい反面、有害な場合もある。
 金谷 はい。その代表が「副作用」です。よく効く薬でも、人によっては、副作用の出方が強いこともあります。
11  薬は毒にもなり、毒も薬になる
 池田 「薬は毒にもなる」というのは、そのへんのことを言ったのでしょうか。
 児玉 はい。薬は本来、体にとって異物ですから、多少の毒性をもっています。「服用法」や「飲み合わせ」を間違えると、毒性を現すことがあります。
 池田 「毒薬」も、「毒薬」と言うぐらいだから、「薬」の一種ですか?
 加藤 そうなんです。薬の中で、毒性が強く、ごく少量で強い効き目が出るものを「毒薬」と言います。「使用していい量」と「死にいたる量」の差が少ない薬も「毒薬」です。
 児玉 有名なのがトリカブトです。これは古くから毒性が強い植物として、知られていますが、同時に鎮痛剤として使われていました。
 今でも、漢方薬では「附子」と呼ばれて使われています。
 池田 青酸カリも薬になりますか。
 加藤 青酸カリは純然たる「毒物」であって、薬にはなりません。
 池田 なるほど。よく時代劇などで「一服盛る」と言いますね(笑い)。あれは、どんな毒を盛っているのですか。
 金谷 よく、わかりませんが。(笑い)おそらく青酸カリなどがふくまれたものだと思います。
 池田 薬の副作用には、どんな症状がありますか。
 児玉 胃の痛みや便秘・下痢、「眠くなる」「集中力が落ちる」などの症状が多いですね。

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