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日蓮大聖人・池田大作

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夏の健康管理 爽快な夏を! 爽快な朝を!

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  「O157」も細菌性の食中毒
 池田 海外訪問中(=名誉会長は、一九九六年七月、アメリカ、パナマ、キューバ、コスタリカ、メキシコの北中米を訪問した)に、日本で集団食中毒の被害が広がったと聞きましたが。
 森田 「O157」と呼ばれる毒性の強い病原性大腸菌が原因です。
 池田 食中毒の原因には、どういうものがありますか。
 豊福 何といっても多いのが細菌による食中毒です。食中毒の七〇パーセントを占めています。「O157」も、これに入ります。ほかには毒キノコやフグなど自然毒によるもの、水銀やヒ素など化学物質によるものがあります。
 池田 食中毒を起こす細菌は何種類くらいあるのですか。
 森田 大きく分けると、十数種類あります。
3  細菌は、まな板からもうつる
 池田 どうすれば防げるのでしょう。
 森田 まず「清潔」です。不潔な手で食品をさわったり、調理しないことが大切です。
 豊福 食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌は、人の皮膚などのいたるところに見られます。とくに、のどや鼻、傷口を″たまり場″にしています。
 池田 外から帰ったら、手洗いや、うがいを行うことが大切ですね。意外とやっていない。仏典によれば、釈尊も、食前に手洗いや、うがいを必ず行うよう、弟子たちに教えていたとされています。(「四分律」)
 かといって、神経質になりすぎる必要もありません。あまり神経質になると、息もできなくなる。(笑い)
 豊福 それでは長生きもできません(笑い)。ですが、「風邪をひいている場合はマスクをして調理する」などの配慮が必要だと思います。
 森田 包丁や、まな板、ふきんなども、念入りに洗ってほしいものです。夏に多くの食中毒を起こす腸炎ビブリオは、魚のエラやウロコについています。だから、まな板などを通じて、次に調理する食品にうつるんです。
4  細菌の毒は加熱しても壊れない
 池田 なるほど。やはり夏は、生ものはさけたほうがいいですか。
 豊福 そうですね。生ものは焼くとか煮るとか、食品の内部まで十分に熱を加えて食べるようにしたほうが安心です。
 池田 十分に加熱すれば、大丈夫ですか。
 森田 ほとんどの細菌は死にます。ただ、なかには菌は死んでも、菌が出した毒素で食中毒を起こすことがあります。
 豊福 先ほどの黄色ブドウ球菌は加熱すれば簡単に死にますが、菌が生みだす毒素のエンテロトキシンは、加熱しても簡単には壊れません。
 池田 「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」と言いますが、細菌は死んで「毒」を残す。これは油断できない。(笑い)
 森田 そうなると、煮ても焼いても食べられません(笑い)
5  冷蔵庫は、つねに整理・清掃を
 池田 ″冷蔵庫に入れて、おけば安心″と、つい買いだめしてしまう場合も、ありますね。
 豊福 はい。ところが冷蔵庫に、すき聞なく食品をつめこむと、中の空気のめぐりが悪くなり、温度が上がるんです。
 すると、細菌が繁殖しやすくなる?
 森田 そうなんです。とくに夏場は、「他の季節より保存できる期間が短い」と考えてほしいですね。決して冷蔵庫を過信しないでください。開け閉めも頻繁なため、中の温度が上がってしまいます。
 豊福 冷蔵庫は、つねに整理と清掃を心がけてください。何より、どんな食品も絶対に長くは保存しないことです。
 池田 冷蔵庫の食品が傷んでいるかどうか、見分ける方法はありますか。
 森田 じつは、色も臭いもまったく新鮮に見える食品でも、食中毒を起こす場合があります。加熱して異臭がするようなら、傷んでいる可能性が高いと言えます。
6  真空パックでも細菌は生き残る
 豊福 真空パックの食品についても同じです。食中毒を起こす細菌のなかには、空気のない場所でも生き延び、毒素を出す菌もあるからです。もし包装を開けたときに、変な臭いがするようなら、絶対に口に入れないことです。
 池田 ″食いしんぼう″な人は注意が必要だね(笑い)。「これぐらいなら」という油断が事故のもとです。日蓮大聖人も「心にふかき・えうじん用心あるべし」があげられています。
 豊福 新鮮な素材を選び、しかも、早く使いきることが、食中毒から身を守る根本です。
7  釈尊も食中毒に
 池田 食中毒と言えば、釈尊も亡くなる直前に、激しい食中毒にあったと言われています。
 豊福 何かにあたったのですか。
 池田 一説には、キノコの毒とされています。釈尊は晩年に、鍛冶工の子であるチュンダという弟子がもつマンゴーの林に滞在しました。チュンダは釈尊の説く教えに感激し、「ぜひわが家で食事をしてください」と申し出ました。釈尊は沈黙によって同意します。チュンダは、釈尊を最高のごちそうでもてなしました。それが、キノコ料理だったというのです。
 釈尊は、料理を食べるや、赤い血が出るほどの激しい下痢と腹痛に襲われました。結果的には、この下痢が体力を奪い、釈尊の命を縮めることになります。しかし、釈尊は臨終を前に、そばの弟子にこう語ります。
 「だれかが、チュンダを後悔させるかもしれない。『チュンダよ、釈尊は、お前のさしあげた食物を食べて亡くなられた。だからお前には功徳はない』と言って――。
 だから、チュンダに、こう言ってあげなさい。『チュンダよ、友よ。釈尊は、あなたがさしあげた食物によってすばらしい涅槃に入られたのだ。だから友よ、あなたが供養した食物は、他の供養の食物よりも、はるかにすぐれた大いなる功徳がある』と」(『ゴータマ・ブッダ』2、『中村元選集〈決定版〉』12所収、春秋社、参照)
 自分の身は病み苦しんでい、ながらも、他人の身を心配し、苦しまないように慈愛の手を差しのべる――まさに「仏法の心」を象徴する話です。そして、これこそ深い意味での「健康人生」ではないでしようか。
8  夏バテ・冷房病・寝不足にならない工夫――夏の体になるには二週間かかる
 池田 話はもどりますが、いわゆる″夏バテ″原因をつくるのも、これからの時期ですね。
 森田 そうです。しかし暑いからといって、必ず夏バテするとはかぎりません。本来、人間には、環境に適応する能力が備わっているからです。
 豊福 それでも、暑さに慣れて夏型の体になるには約二週間かかると言われています。
 池田 そうすると、夏の健康管理のポイントは、まず「暑さに適応できる体をつくる」ことですね。
 森田 そうです。その基本は、「バランスのとれた食事」「十分な睡眠」「適度な運動」です。
 池田 たしかに蒸し暑い時期は、食欲がおちます。
 豊福 ダイエットには、もってこいの季節かもしれません。(笑い)
 ただ栄養の偏りが心配です。めん類やお茶づけなど、さっぱりしたメニューだけに食欲が向きがちです。健康の維持に必要なタンパク質やビタミンが不足しやすくなります。
 池田 昔から、夏のスタミナ食として「土用のウナギ」が有名ですね。
 豊福 はい。暑さで体力を使ったぶん、ウナギなどの動物性タンパクで栄養を補給するという知恵だと思います。
 池田 しかし、あまり食欲がないときは、ウナギにも手が出ない。
 森田 最近は、値段のほうも″うなぎのぼり″ですから。(笑い)
 豊福 そういう場合に、お勧めしたいのが、「冷ややっこ」です。豆腐の原料である大豆はグ畑のタンパク質と呼ばれています。
 池田 のどの通りもよいし、値段も庶民的ですね。(笑い)
 森田 食欲増進には、酢も効果的です。殺菌効果もあります。
 池田 水分の補給は、どうすればいいですか。
 豊福 水やお茶で十分に補うことです。のどが乾いたからといって、清涼飲料水ばかり飲んでいると、糖分をとりすぎ、食欲もなくなるので要注意です。
9  疲れは、その日のうちにとる」が肝心――夏の疲労回復には昼寝も効果的
 池田 暑くてなかなか寝つけないと、どうしても寝不足になりがちですね。
 豊福 そうなんです。リズム正しく熟睡できれば、夏バテも半分は克服できたようなものだと言われます。
 森田 寝不足や不規則な生活は、免疫力の低下や無気力を生みます。なるべくふだんより早く休み、早起きを心がけてほしいものです。
 池田 夏はとくに、疲労を次の日に残さないことです。年配の方は、翌日、疲れが残っているなと思ったなら、ちょっと昼寝をするのもいいかもしれない。かなり疲れがとれるものです。
 とにかく、「疲れをためない」ことです。そのためには、睡眠を上手にとることです。熟睡するための工夫はありますか。
 森田 寝る前に、シャワーや入浴でさっぱりと汗を流すのも効果があります。
 寝間着などは、風通しがよくて汗を吸い取りやすい綿製品がいいと言われています。
 豊福 夏の健康管理のバロメーターは、どれだけ快い汗を流したかです。適度な運動は、血のめぐりをよくするため、疲労回復につながります。
 森田 朝夕の涼しい時間を選んで、乾布摩擦、ラジオ体操、散歩などに取り組むといいでしょう。また出動のさい、いつもより早く家を出て、一駅歩くこともいいと思います。
 池田 一日一日の充実には、朝の出発が肝心です。「朝の勝利」が、一日の勝利です。その積み重ねが、人生全体の勝利となる。
 ゲーテでしたか、「朝は黄金の時間」と言っています。仕事も、よくはかどる場合が多い。「さわやかな朝の出発」ができるよう挑戦していきたいものです。私どもにとって、その要が朝の勤行にあることは言うまでもありません。
10  家庭の冷房は二八度くらい
 池田 夏は体調をくずす原因の一つに冷房がありますね。
 豊福 はい。暑い戸外と、冷房のきいた室内を何度も出入りしていると、おなかが冷えて腹痛や下痢を起こしゃすくなります。
 森田 手足や体がだるくなったり、女性の場合は生理不順になったりします。いわゆる「冷房病」です。
 池田 冷房の温度は、どれくらいが健康にいいのですか。
 森田 一般に二八度くらいが適切です。快適な温度には、個人差がありますが、外の気温と極端な温度差が生じると、健康にとっては″百害あって一利なし″です。
 池田 多人数の会合では、会場の温度に配慮が必要ですね。ただたんに″暑いから冷やせばいい″というものではない。とくに冷えの影響を受けやすい女性や、病弱な方への気配りを絶対に忘れないでいただきたい。
11  温度差に備え、必ず上着を一枚用意
 森田 冷気に直接あたらないためにも、必ず背広やカーディガンなど上着を一枚用意しておくといいですね。
 池田 そうです。上着一枚で激しい温度差から身を守ることができます。
 豊福 汗をかいてはすぐに冷やされるといったことが繰り返されると、夏風邪をひきやすくなります。汗をかいたら、こまめに着替えることも大切です。
 森田 職場でも、ジャンパーや、ひざかけなどをうまく利用し、足や肩を冷やさない工夫をしてください。
 池田 日本では、昔から、蒸し暑い夏を過ごすために、さまざまな工夫が生みだされてきました。縁台、浴衣、打ち水、すだれなども、自然の涼風をうまく取り入れようという生活の知恵が生んだものですね。「健康」も「幸福」も「智慧」が必要なのです。
 御書には「此の題目の五字、我等衆生の為には、三途の河にては船となり、紅蓮地獄にては寒さをのぞき、焦熱地獄にては凉風となり」と仰せです。
 これは気候的な暑さのことではありませんが、妙法を根本とした生活は、暑さにも負けない「生命力」をあたえてくれるのは事実です。
 そして「生命力」には「智慧」がふくまれている。賢明に生きることです。名パイロットのごとく、自分で自分の体調をうまく操縦しながら、″毎日が快調″の生活を送っていきたいものです。

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