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腰痛 「腰」は肉体の「要」

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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1  池田 体の″急所″はどこか。いろいろな答え方がありますが、その一つは腰でしょうね。「腰」という漢字は、「肉月」に「要」と書く。文字どおり、「肉体の要」です。「要」という字も、じつは、要骨の形を表したものです。腰痛に悩んでいる人も多いですね。
 森田 多いです。整形外科に来る患者さんで、もっとも多いのが腰痛と言います。
 豊福 私も腰痛に悩まされた経験があります。旅先で、やわらかすぎるベッドに寝たのがきっかけでした。
 池田 それは貴重な経験です。「一度も病気になったことのない人間は、よい医師になれない」ということわざもありますから。(笑い)
 豊福 おっしゃるとおりです。(笑い)
2  腰には体重の六〇パーセントがかかる
 池田 それにしても腰痛で悩む人は、どうしてこんなに多いのでしょう。
 森田 ずばり、腰は人体の″弱点″だからです。
 「立って歩く(直立歩行)」のは人類だけです。その結果、手を自由に使えるようになったわけですが、上体の重みが、ズシッと腰にかかるようになったのです。
 池田 なるほど。″腰痛は人類の宿命″と言えるかもしれませんね。
 豊福 そうなんです。腰の部分の背骨、すなわち「腰椎」には、体重の六〇パーセントがかかると言われています。
 ですから、背骨をつくっている椎骨という骨の間には、椎間板がはさまり、″クッション″の役目を果たしているのです。
 池田 無理な力をやわらげ、吸収するのですね。
 豊福 はい。さらに骨と骨をつなぐ靭帯、腹筋や背筋が腰椎を支えています。
 森田 腹筋と背筋が強いと腰も安定します。しかし、筋肉が弱ると、ちょっとしたショックでも腰椎に直接に響き、「痛い」ということになるわけです。じつは、とくに病気とは言えない、この種の「腰痛症」が圧倒的に多いのです。
 池田 「ぎっくり腰」も、その一つですか
 森田 そうです。さまざまな原因で起きる急性の「腰痛症」のことを言います
 池田 ドイツ語では「ぎっくり腰」のことを「魔女の一撃」と言うそうです(笑い)。突然、猛烈な痛みが襲ってくる――実感が出ています。
 豊福 聞いただけで、痛くなりそうな名前ですね。
3  同じ姿勢で仕事をする人に多い
 池田 どういう人が腰痛になりやすいのですか
 森田 終日、デスクワークをしている人、長距離便のドライバーなど、長時間、同じ姿勢で仕事をしている人に多いですね。肥満体の人もそうです。
 池田 男性と女性とでは、どちらが腰痛を起こしやすいのですか。
 豊福 女性です。男性に比べて腹筋・背筋の力が弱いのです。またホルモンの関係で、更年期や、お産の前後に多くなります。
 池田 ″動かない″男性のほうが起こしにくいのは不思議です(笑い)。何かの病気が原因で、腰痛になる場合もありますか。
 森田 腰痛をもたらす病気としては、「椎間板へルニア」が、もっとも代表的です。二十〜三十代の若者に多いのです。
 豊福 「ヘルニア」とは「飛び出す」という意味です。椎間板は、中身がゼリー状で、弾力のある軟骨で包まれています。
 しかし、二十歳ごろから、軟骨にしだいに弾力がなくなってきます。そのため、中身の″ゼリー″が外に飛び出し、背骨の神経を圧迫してしまうのです。
4  痛みを我慢すると悪循環――青年時代は鍛え、中年以降は保護
 池田 やはり運動不足が原因ですか。
 森田 そうです。自動車などの発達によって、あまり動かず、歩かなくてもすむ世の中になっていますから。
 池田 二十代、三十代は、心身ともに自分を鍛えることです。それが一生の土台となる。何ごとも、土台が鍛えられていてこそ、そのうえに立派な建設ができる。
 健康も同じです。個人差も大きいですが、四十代以降は「鍛え」よりも「保護」「体力の維持」に重点が移ります。鍛えるべきときには鍛え、保護するべきときには賢明に保護することです。
 豊福 そのとおりだと思います。病気が原因の腰痛には、このほか「変形性脊椎症」「骨粗鬆症」などもあります。
 池田 内臓の病気が原因の場合もあるようですね。
 豊福 はい。腎臓結石、胆石、胃潰瘍、膵炎などの病気でも、腰が痛くなることがあります。
 池田 実際に腰痛が起こった場合は、どうすればいいのですか。
 森田 とにかく″安静第一″です。激しい痛みがおさまるまでは、静かに、休んでください。
 豊福 それでも強い痛みがとれないときは、医師に事情をよく話して、痛み止めや、炎症を抑える薬をもらってください。
 池田 冷やしたほうがいいのですか、温めたほうがいいのですか。
 森田 痛みの強い時期は、急性の炎症を抑えるために、冷やすのが基本です。
 ある程度、痛みがやわらいできたら、温めたほうがいいでしょう。ぬるめのお風呂に、ゆっくり入るのも効果があります。
 池田 「痛い」のを我慢している人もたくさんいると思う。しかし、これだけは「忍耐は美徳」というわけにはいきませんね。
 豊福 ええ。痛みが続くだけで、体に悪影響が出てきます。
 森田 「痛い」となると、その刺激は神経を通って脳に伝えられ、「痛い」部分の筋肉や血管のけいれん・収縮を起こします。すると血のめぐりが悪くなって、筋肉が余計に硬くなる。それでまた神経が刺激されて「新たな痛み」が起こるのです。
 池田 なるほど。「結果」がまた次の「原因」になる。「痛みの悪循環」ですねね。(笑い)
 豊福 第一、腰痛を放っておくと、何をするにも「腰が座らない」ですね。(笑い)
 池田 「腰を入れてしやるべき仕事も、「腰砕け」になってしまう。(笑い)
 では腰痛は、どうしたら防げるのですか。
 豊福 腰に無理をかけないことが第一です。まず「立つ」「座る」「寝る」ときの姿勢を見直してください。
 森田 「立ち方」ですが、あごを引いて、背筋を伸ばし、おなかを引っ込めることです″猫背″は、腰にそうとうな負担をかけます。
 また、おなかが突き出て、腰が反り返った格好も要注意です。これは、見かけもよくありません。(笑い)
 池田 いつも威張っている人には、腰痛が多いかもしれませんね。(笑い)
5  姿勢を正し、血行をよくする――「美しい姿勢」が若さと健康のもと
 池田 「美しい姿勢」は、さわやかで、はつらつとした感じをあたえます。背筋を伸ばし、腰を伸ばし、胸を張る。そうすると見かけだけでなく、体の神経が適度に緊張し、健康にもよいのではないでしようか。
 年齢に関係なく、「体の姿勢」しだいで美しくなる。努力しだいで心身が若返りますね。
 森田 そのとおりです。腰痛がある場合は、寝るときは、横に丸くなるか、ひざの下に小さな座布団などを入れるのがよいとされています。
 豊福 それから、腰が沈むような、ふかふかの寝具はさけることです。
 池田 実感あふれる言葉です。経験者でなくては語れません。(笑い)
 森田 イスに座るときは、深く腰かけるのがポイントです。イスを低くして、ひざが太ももより少し高くなるくらいが適切とされています。
 豊福 座る姿勢も大事ですが、同じ姿勢を長時間、続けることがもっとも問題なんです。
 池田 今は一日中、ワープロやパソコンと向きあっている人もいますね。
 森田 わずかな時間でもかまいません。一時間に一回はデスクを立ち、お手洗いに行ったり、窓の外を眺めるなど、少しでもリフレッシュすることです。
6  適度の運動で筋肉を強くする――あぐらより正座
 豊福 「あぐら」より「正座」のほうが、腰への負担は小さいとも言われています。
 池田 そうでしょうね。天台大師は、仏道修行のあり方として「調五事(調食・調眠・調身・調息・調心)」を示しました。
 このうちの「調身」は、一般的に言うと、姿勢を正すことでしょう。食事・睡眠・姿勢・呼吸・心を整えて、心身ともに、安定した状態にもっていくのです。そうやって、わが生命が宇宙と交流するための準備ができる――としたのです。
 豊福 正座で背骨をまっすぐに伸ばせば、血液の流れもスムーズになります。
 森田 ただし、太っていると正座は苦しい。(笑い)
 池田 苦しいからこそ、ダイエットを決意できるとも言える(笑い)。ほかに日常生活でできる工夫はありますか。
 豊福 物を持っときは、たとえ軽いものでも、中腰でなく、深く腰をおろしてから持ち上げるようにしてください。また、重い荷物の場合は、なるべく体のそばに近づけて、ひざを軽く曲げて持ち上げるようにすれば安全です。
 池田 持ち上げる前に、これから物を持ち上げるんだ」と、しっかり意識することも大事ですね。
 森田 はい。どんな動作でも、反射的に体を動かすと、脳からの指令が間に合いません。腰の筋肉が働く態勢に入る前に、動作が始まってしまう。その結果、「ぎっくり腰」になるのです。
 豊福 冷えや寒さも、腰痛の大敵です。着る物やカイロなどで腰のまわりを温めるとよいでしょう。
 森田 腰を支える筋肉の力を鍛えることも大切です。その意味で適度な運動が必要になります。
 池田 具体的には、どういう運動がいいのでしょうか。
 豊福 いちばん実行しやすいのは「歩く」ことです。少し大股で、手を振って歩くと、血液の流れもよくなり、全身が生き生きとしてきます。肥満の解消にもなります。また、一般に腰痛体操と呼ばれている体操も適していると思われます。
 森田 腹筋や背筋の筋力アップは、最低でも三カ月はかかりますから、楽しく長続きするものがいいでしよう。ただし、腰痛になってしまった人は、強い痛みがおさまり、医師の了解を得てからにしてください。
 池田 冒頭、「腰は肉体の要」と言いました。日蓮大聖人が、「我等が頭は妙なり喉は法なり胸は蓮なり胎は華なり足は経なり此の五尺の身妙法蓮華経の五字なり」と仰せのように、「心の不思議」こそ、仏法が説く肝心要であるとされています。
 その意味で、「腰」は、そびえ立つ「宝の塔」を支える「要所」と言えるでしょう。正法のために心を使い、体を使っていくならば、全身が「妙法の宝塔」と輝き始める。心身ともに健康になっていくことは間違いありません。「もっと健康になろう。そのために動こう」との一念で、楽しく、生き生きと、足取りも軽く行動していきたいものです。

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