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日蓮大聖人・池田大作

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血圧 生命を支える「血液の流れ」

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  正しい血圧の知識を
 池田 その結果、「血圧が上がる」というわけですね。何を高血圧といい、何を低血圧というか。その基準は、どうなっているのですか。
 豊福 「正常血圧」は、最大血圧が一三九以下で、最小血圧が八九以下の場合です。最大が一四〇以上、あるいは最小が九〇以上に、なると「高血圧」です。
 たとえば、上が一三六で、下が九八の場合は高血圧になります。「低血圧」とは、最大血圧が一〇〇以下の場合を言います。
 池田 最大血圧が高い場合と、最小血圧が高い場合とでは、どちらがやっかいですか。
 森田 最大血圧に比べて、「最小血圧の変動はずっと小さい」のがふつうです。ですから「最小血圧がいちじるしく高い」場合は、怖いですね。
 池田 最大と最小の差は、どれくらいがいいのでしよう。
 豊福 成人では五〇前後あるのがふつうのようですが、あまりこまかな数値にこだわる必要はありません。
 池田 「怒ると血圧が上がる」と言いますが(笑い)、血圧は、そんなに簡単に変動するのですか。
 森田 一日のうちでも、めまぐるしく変動します。たとえば、起きているときは高めに、眠っているときは低めになります。また、一年のうちでは、秋から冬に向かって高くなり、春から夏に向かうにつれて、低くなる傾向があります。
3  激しい温度差には要注意!
 豊福 安静にしているときと動いているとき、緊張しているときとリラックスしたときでは、かなり違います。興奮したり、激しい温度差を感じると、急に上昇することがあります。
 池田 それは「要注意」ですね。急に戸外に出たり、風呂上がりのときに倒れる人が多いとも聞きます。
 森田 ふだんは正常なのに、検査に臨むと緊張して高くなる人もいます。「白衣性高血圧」と呼ばれています。
 豊福 同じ「白衣」でも、こわそうな医師が測った場合と、優しそうな看護師さんが測った場合とでは、意外なほど差が出ることもあります。(笑い)
 池田 「血圧」は人間的なんですね(笑い)。最近は、家庭でも簡単に使える自動血圧計が普及しているようですが。
 森田 高血圧症の人の場合は、ぜひ勧めたいと思います。
 家庭で血圧を測ることは、血圧の管理のためにも、治療を続けるためにも、たいへんにいいことです。
4  高血圧が「心臓病」「脳卒中」と関係――高血圧は「自覚症状が少ない」
 池田 「自分の血圧は自分で守る」ということですね。自分自身が″患者″でであると同時に、ある意味、自分が″医師″となり、″看護師″となって健康を賢く守っていかねばならない。
 もちろん、治療については自分勝手な判断をすべきではない。医師とよく相談するのは当然です。
 あまり自覚症状がないのが、高血圧の特徴のようですね。「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」と呼ぶ人もいるという。
 豊福 そうです。″症状が出にくい″ために、つい不摂生を重ねてしまう。しかし、自覚症状には関係なく、心臓の肥大や動脈硬化は進みます。
 森田 治療の機会を遅らせると、やがて脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、眼底出血、腎不全など危険な病気につながってしまうのです。
 池田 高血圧症の原因はいったい、何でしょうか。
 豊福 腎臓や副腎、内分泌系などに、原因が見つかることがあります。(「続発性高血圧症」)
 森田 このタイプは高血圧症全体のせいぜい一割ほどで、残りは原因がはっきりしない「本態性高血圧」と呼ばれるタイプです。ただし、血圧を押し上げる″要素″は、かなりはっきりしています。
5  塩分、ストレス、肥満、疲労も原因
 池田 どういう要素ですか。
 豊福 まず「遺伝的素因」です。高血圧になりやすい体質は遺伝的に受け継がれます。そこに、老化、塩分のとりすぎ、肥満、寒さ、精神的ストレス、疲労、睡眠不足、過度の飲酒などの要素が加わり、「血圧が上がる」のです。
 森田 なかでも精神的ストレスと血圧の関係は注目されます。精神的ストレスが生じると、脈を速くさせる交感神経の働きが活発になり、末梢血管を収縮させ、血圧が上がると思われます。
 豊福 一般に血圧は、都市に住む人のほうが周辺の住民より高く、周辺から都市に移った場合、上昇することが知られています。都市の満員電車、渋滞、イライラなどがストレスを増加させるのです。
 池田 日蓮仏法では「貪り・瞋り・癡の三毒がしだいに強盛になっていくにしたがって、しだいに人の寿命も縮まる」(御書一四六五ページ、通解)とされています。
 貪・瞋・癡の働きが強くなるほど、健康な生命力が衰える。精神的ストレスを生み、心身のバランスをくずして、やがては寿命を縮めることにもつながっていきます。
 森田 たしかに怒りっぽい人は、交感神経が絶えず緊張して、血圧も上がります。
 豊福 高血圧は、生活習慣病のうち、「がん」以外の「心臓病」「脳卒中」と深くかかわっています。また血圧が高いほど寿命が短いというデータもあります。
 池田 「三毒」は、サイレント・キラーを操る″黒幕″と言えますね。(笑い)
 問題は瞋りなどの三毒を、どう価値的にコントロールするかです。三毒などの煩悩を賢明に菩提へと転換することです。「煩悩即菩提」です。
 その結果、慈悲の心や智慧、勇気、希望などによって、「健康な生命力」を強め、心身をコントロールできるのです。
 森田 そのとおりだと思います。高血圧になりやすい体質でも、心身の要因をコントロールすれば発病を防ぐことは可能です。
 豊福 ですから、恐れずに定期的に健診を受け、その結果をあなどらず、治療を続けていただきたい。次に、具体的な高血圧の治療法や、低血圧の問題に移りたいと思います。
6  生活習慣の改善が基本
 池田 さあ、高血圧の治療法ですね。
 森田 まず、高血圧の大半を占める「本態性高血圧」について、考えてみたいと思います。
 豊福 「本態性」とは、「原因がわからない」ということです。ですから、これは現在のところ根本的に治す方法はありません。しかし、きちんと治療を続ければ、血圧を下げることはできます。
7  食塩は一日六グラム以下に
 池田 一般的には、どんな治療法がありますか。
 豊福 まず薬を使わずに、生活習慣を改善するところから始めます。その一つが食生活の見直しです。「塩分を控えめに」「各種の栄養素をバランスよくとる」ことです。
 池田 どうして塩分はよくないのですか。
 森田 食塩の主成分が、血圧を上昇させるナトリウムだからです。食塩は、できれば一日六グラム以下にすることが理想とされています。(小さじ一杯のしようゆに約一グラムの塩分がふくまれる)
 池田 しかし、薄味の食事では物足りない人もいますね。
 豊福 ちょっとした工夫で、ずいぶんと違います。たとえば、減塩しようゆを使うとか、塩のかわりに、しようが、わさびなどの香辛料を上手に使つて、味にアクセントをつけるとか。
 森田 どうしても塩分がほしいときは、一品だけに重点的に使うのもいいと思います。
 池田 高血圧によい栄養素は、何ですか。
 森田 カリウムには、血圧を下げる働きがあります。ホウレンソウなどの緑黄色野菜や、バナナ、じゃがいもなどに多くふくまれています。
 豊福 カルシウムや食物繊維、また植物の油や魚も多くとるようにしてください。
 池田 肥満も血圧を上げる要素でしたね。
 森田 はい。肥満を解消するだけでも、血圧は下がります。早足の歩行など「適度な運動」を毎日、続けることも大切です。
 豊福 アルコールの飲みすぎも注意してください。また高血圧の人は禁煙も必要です。
 池田 こうした努力でも、あまり効果のない場合は、どうなりますか。
 森田 薬による治療をすることになります。その目安になるのは血圧の高さです。年齢などによって違ってきますので、医師の診断をあおいでください。
 豊福 ただし薬物治療を始めたからといって、食事療法や運動療法を中断しないでください。必ず並行して続けることです。
 池田 高血圧の治療薬は一度飲み始めたら、一生続けなければならないのですか。
 豊福 原則として続けなければなりません。降圧剤は、高血圧の根本的な原因を治すための薬ではありません。あくまで高い血圧を下げるための薬です。ですから薬をやめると、また血圧は上がります。しかし状況によっては、途中で中止することが可能な場合があります。
 池田 副作用はありますか。
 森田 人によってある場合があります。しかし命にかかわるようなことはありません。不安な点があれば、必ず医師と相談してください。
 池田 よく聞くのは、高血圧の薬を自分で勝手にやめてしまって、その後、倒れてしまうというケースです。脳卒中などを起こす場合がある。
 森田 そのとおりです。大変に危険な状態におちいった方がたくさんいます。
 池田 これは大事ですね。皆の共通認識にしておきたい。
 森田 薬の増減や中止については医師の判断にしたがってください。
 豊福 また指示どおりに飲んでいないのに、医師には「飲んでいる」と報告する人がいます。これも、医師の判断を誤らせるので、必ず正直に伝えてください。
 池田 気持ちはわかる気がしますが(笑い)、こんなことで″見栄″を張ってもしかたがない(笑い)。自分の体のことですからね。
8  血圧を下げるカギは自己管理――自分が治す、医師は協力者
 森田 はい。高血圧のように長期間の治療が必要な病気では、″医師まかせ″というわけにはいきません。治療の方針を立てるのは医師ですが、通院、服薬、食事療法など、治療を実行するのは患者さん自身なのです。
 池田 仏典には、病人としての積極的な心構えが説かれています。
 (1) それぞれの病気に適した食事や薬を服用する。
 (2) 治療する人・看病する人の言葉にしたがう。
 (3) 自分の病気が重いか、軽いかを認識する。
 (4) 苦痛を耐え忍ぶ。
 (5) 努力を怠らず、聡明な智慧をもっ。(「摩訶僧紙律」)
 ″医師まかせ″ではない、主体性を教えたものでしよう。前にも、言ったとおり、根本は、自分自身が自分の″医師″なのです。
 豊福 医師の側も患者さんに少しでも病気を理解してもらえるよう、努力する必要がありますね。
 池田 そうお願いしたいですね。治療も「良医との連携」でたしかな効果が出る。そのためには、「医師との信頼関係」が基盤になります。人間は機械ではない。病気の治療は機械を修理するのとは違います。
 温かい「励まし」や、こまやかな配慮が、劇的なまでに大きな効果をもたらすことは、数多くの例が証明しています。
9  「声を出す」ことの効能
 池田 ほかに参考になることはありますか。
 森田 じつは、「読経」も、ストレスを解消し、血圧を下げる効果がある、と言われています。
 池田 それは、とくに壮年部に教えてあげたい。(笑い)
 森田 私も壮年部ですが……。(笑い)
 勤行・唱題によって生命力が強くなることは当然として、正座して背筋を伸ばし、腹式呼吸することは、医学的にも健康によい呼吸法の一つとされているんです。
 豊福 呼吸機能が活発になれば、″血のめぐり″もよくなります。
 また声を出すことは、ストレス解消にもなります。
 池田 唱題の声は、大きすぎたり、小さすぎたりせず、さわやかに白馬が駆けるようなリズムでありたい。自分自身が南無妙法蓮華経なのだから、自分自身の生命のリズムを、じっくり整えるつもりで、心豊かに行うことです。
 森田 前にも、話題になったように、高血圧には「激しい温度差」に対する注意も必要です。
 池田 とくに年配の方は、風呂あがりやお手洗い、寒い季節に外に出たときに倒れる場合が多いと聞きます。
 豊福 交感神経が緊張して末梢の血管が収縮し、一気に血圧が上がるのです。
 池田 浴室と脱衣場との温度差を小さくするなどの工夫も考えられますね。
 森田 お手洗いも暖かくしたほうがいいと思います。
 池田 また寒いときに外出するさいには、「これから寒い外に出るんだ」と、はっきり意識してから出ることです。
 そうすれば、体が寒さに対して準備する。いきなり、ぽっと出てしまうのが危ない。
 豊福 最近は、冷房が完備され、夏でも屋内と屋外の温度差が大きくなっています冷房のきいた部屋では、重ね着するなど保温を心がけることも大切です。
 池田 仏法では「賢きを人と云いはかなきを畜といふ」と仰せです。これは、「病気の原因を知らない人が病気を治療すれば、いよいよ病気は倍増するであろう」との指摘です。
10  低血圧の人は「無理なく」「むだなき」毎日を
 池田 「低血圧」で悩んでいる方もいますね。
 豊福 はい。「血圧が低いせいか、どうも朝が弱くて」という声をよく聞きます。
 森田 医学的には「低血圧だから、寝起きが悪い」とは、必ずしも言えないのですが。(笑い)
 池田 そうすると今後、遅刻の言いわけには使えないね(笑い)。低血圧にも、いくつかタイプがありますか。
 森田 一つは、何らかの病気が原因でなる「症候性低血圧」です。
 豊福 次に、「起立性低血圧」があります。急に立ち上がったりすると、血圧が下がって、めまいや立ちくらみを起こすものです。
 池田 何が原因ですか。
 森田 本来、人体には、「姿勢の変化による血圧の変動を、うまく調節する機能があります。低血圧の場合は、この調節がスムーズにいかないのです。
 豊福 症候性・起立性低血圧は、神経系や内分泌の病気、糖尿病、降圧剤の副作用などが原因です。
 池田 なるほど。
 森田 もう一つが、原因のわからない「本態性低血圧」です。大半の人が、これに当たります。
 豊福 遺伝的な要因や環境、年齢、生理的な要因が関係していると考えられますが、高血圧の人と比べると、脳卒中や心臓病などの危険性が少なく、むしろ長寿の傾向にあるとされています。
11  「さあ働こう!」と朝の出発を
 池田 それでは治療する必要はありませんね。
 豊福 「本態性低血圧」は、これといった自覚症状がなければ、とくに治療の必要はありません。
 森田 ただ現実には、めまいや立ちくらみ、″朝すっきり起きられない″″体力がなく疲れやすい″といった症状の人が多いことも事実です。
 池田 何となく惰性や習慣で夜ふかしし、疲れがとれないまま、朝も寝坊してしまう場合もあるのではないでしょうか
 森田 そうなんです。低血圧の人は、″宵っぱりの朝寝坊″になりやすい。したがって、睡眠や食事など生活の習慣を見直すことが必要でしょう。
 豊福 とくに、朝食をきちんととり、脳の働きが、朝から快調になるように、することです。
 池田 無理なダイエットも危険ですね。
 森田 また適度な運動で、着実に体力をつけていくことも大切です。冷水摩擦、乾布摩擦を続けると、末梢血管の血液の循環がよくなります。
 豊福 どうしても寝覚めの悪い人は、横になった状態で、まず背伸びとか、軽い体操を行うとスムーズに起きることができます。
 池田 時間を価値的に使って早めに休む。そして「さあ、きょうも働こう」と、満々たる意欲で朝を出発する。これが、健康で長寿の生活の基本ですね。「無理のない」そして「むだのない」価値創造の日々でありたいものです。

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