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日蓮大聖人・池田大作

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風邪 「万病の元」だからこそ注意を

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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2  風邪の症状でも風邪と限らない
 豊福 ええ。風邪は、くしゃみ、鼻水、発熱といった症状を起こす病気の総称なんです。医学的には「かぜ症候群」と言います。
 どんな病気でも、風邪の症状があれば、「風邪ですね」と言えるので、医師にとっては便利な名前です(笑い)。もちろん、真の病因を見つける努力はしますが……。
 池田 診察を受けて「風邪」と言われたら要注意ですか(笑い)。まして、素人判断で、風邪だと決めつけてしまうのは危ない。
 日蓮大聖人は「病の起りを知らざる人の病を治せばいよいよ病は倍増すべし」と仰せです。これは、「病気の原因を知らない人が病気を治療すれば、いよいよ病気は倍増するであろう」との指摘です。
 ろでしょう。
 ところで寒いと風邪をひくのですか。夏風邪というのもありますが。
 豊福 寒さだけでは風邪をひきません。
 池田 南極の昭和基地の越冬隊は、風邪をひかなかったと聞きました。孤立状態でウイルスに感染する機会がないからでしょうか。
 豊福 そう思います。風邪は、ウイルス、マイコプラズマ、細菌などの感染によって起こります。夏と冬では種類が多少、違いますが、年間を通じていつでも感染する可能性があります。
 森田 寒い時期はインフルエンザが流行します。インフルエンザウイルスは「寒くて、乾燥している」(低温・低湿)ほど感染力が強いのです。しかも、室内は閉めきられていて感染しやすくなります。
 のどや鼻の粘膜も乾燥し、抵抗力も落ちてしまい、「寒さが風邪をひきやすい状態をつくる」わけです。
 池田 では、夏風邪は? 夏に強いウイルスが原因ですか。
 豊福 そうです。アデノウイルスなどは、湿度が高いほど活動的です。風邪の原因の約八割はウイルスですが、その種類は二百種類以上あります。どのウイルスに感染しているかは、検査をすればわかりますが、たいてい、結果がわかるまでに治ってしまいます。
 森田 それで結局、「風邪ですね」で、終わってしまうんです。(笑い)
 また、ウイルスがわかっても、退治する方法が今のところありません。
 池田 モスクワ大学の故ホフロア総長のご子息(アレクセイ・ホフロフ教授)と対談したとき、ウイルスはポリマー(高分子)の一つとうかがいました。「ウイルス」とは、どういう意味ですか。
 豊福 ラテン語で「毒」という意味です。発見(一八九二年)当時は、細菌の毒素と考えられていました。
 のちに、物質には違いないが、中心に遺伝子があり、動物や植物などの細胞に入ると増えることがわかりました。
 池田 「自分の力では増えることはできないが、人体に入り込んで増える」というのは、いかにも悪者らしいふるまいですね(笑い)。顕微鏡で見えますか。
 森田 電子顕微鏡で、見ることができます。細菌よりも小さく、一万分の一ミリくらいです。
 豊福 風邪の原因はウイルスだけではありません。人間の側にもあります。同じような環境にあっても、ひく人とひかない人がいますから。
3  疲れをためない、抵抗力をつける――病は「四大の不調和」から
 池田 仏法では「回大の調和」を説きます。古来、インドでは四大、つまり「地」「水」「火」「風」の四つの要素でとらえる生命観があった。「地」は骨や毛、歯、筋肉を、「水」は血液などを、「火」は体温を、「風」は呼吸をあらわし、これらが和合したものが人間と説いています。そして身体の病は、この「四大の調和」が乱れることにあると説いています。(「摩訶止観」)
 森田 医学的に言えば、「四大の不調和」によって、抵抗力が低下してきます。そこにウイルスが感染し風邪をひくと言えるでしょう。
 豊福 抵抗力の低下の原因には、いろいろあると思いますが、おもに疲労や不摂生などが考えられます。
 池田 大事なのは、疲れをためないことです。これは、すべての病気の予防に通じます。疲れたら早めに休む。その日の疲れは、その日のうちにとる。それも健康のための戦いです。無理と強信とは違う。
 無理は長続きしないものです。
 風邪の予防法として、うがいや手洗いも大事ですね。
 森田 そのとおりです。くしゃみやせきで飛び散ったウイルスは、「吸い込んだり」「手から口に入つて」感染するので、こまめに行っていただきたい。
 豊福 マスクも、ほとりを防いだり、のどに湿気をあたえる効果があります。また予防法には、人ごみをさけるというのがあります。そのとおりなのですが、それだけでは、通勤や買い物、会合など、実際生活ができなくなってしまいます。
 森田 むずかしいところですね(笑い)。体の抵抗力を強くするしかないわけですが……。
 豊福 流行時に風邪のウイルスがいちばん多いのは病院です(笑い)。だからといって、医師や看護婦が風邪になるとはかぎりません。
 池田 抵抗力を強くすることですね。乾布摩擦や冷水摩擦も風邪の予防によいと言われていますが。
 森田 皮膚を刺激すると、体に緊張感をあたえ、自律神経を刺激して、体の抵抗力を高めます。冷水摩擦も同じです。手首や首筋など、外気にさらされる部分だけでも効果があります。水で顔や手を洗うこともいいですね。
 豊福 いつもお元気で、はつらつとしている多宝会の方に、日常、気をつけている点をうかがったことがあります。そのなかに「風邪をひかない」というのがありました。
 池田 日ごろから、意識しているか、いないかで大きく違うものです。乾布摩擦は皮膚を通して体を引きしめる。
 一方、「風邪をひかないぞ」という決意は、心の側から全身の神経を刺激して抵抗力を高める。心が動けば、その方向に頭脳も体も動きだすのです。
 森田 風邪と言えば、忘れられない光景があります。第二回の世界青年平和文化祭(一九八二年九月、当時の埼玉・西武ライオンズ球場)のときのことです。開会前から、雨が降っていました。そのなかを、池田先生はグラウンドを一周されました。ある来賓は、「名誉会長はいったい、どんな言葉をかけるのだろう」と思って見ていたそうです。何か、雨なんかに負けずに頑張れといった言葉を予想していたようです。
 ところが池田先生は「皆さん、本当にご苦労さま。風邪をひかないよう、工夫してくださいね」と。優しい心のこもった声を聞いて、「あの姿こそ、本当の指導者の姿だ」と感動していました。
 池田 当然のことをしただけですが……。友の健康が第一です。皆が日々を健康で、生き生きと社会で活躍することが根本です。私は、いつもそのことを祈っているのです。
4  御書では風邪を「風気」と表現
 森田 ところで、なぜ「風邪」というのでしょうか。
 池田 中国の古典によると、「外気」が「邪(気を乱すもの)」となって病気を起こすのを、「風邪」等と呼んだようです。(『西洋医学大事典』参照)
 森田 日蓮大聖人も風邪をひかれたのでしょうか。
 豊福 実際にひかれたかどうかはわかりません。ただ鎌倉時代にも、現在の「風邪」を意味すると思われる「風引き」「風気」等の病名が記録に残っています。
 池田 御書にも、「日蓮鎌倉に罷上る時は門戸を閉じて内へ入るべからずと之を制法し或は風気なんど虚病して罷り過ぎぬ」と仰せです。これは、「病気の原因を知らない人が病気を治療すれば、いよいよ病気は倍増するであろう」との指摘です。
 「風邪の治療薬を発見すればノーベル賞もの」と言われるが、特効薬はありますか。(笑い)
 森田 残念ながら、まだノーベル賞は遠いようです。(笑い)
 池田 病院でもらう薬や、市販の薬はどうですか。
 豊福 現在の薬は風邪そのものを治すのではなく、頭痛、発熱、鼻水、せき、くしゃみといった「症状」を和らげるものでしかありません。
 森田 薬を補助的に使い、保温、休養、水分、栄養を補給して、自分の自然治癒力で治すのが、風邪の基本的な治療法です。
 池田 「休養をとる」ことですね。しかし多忙な現代人には、なかなかむずかしそうですね。
 豊福 無理は事故のもと|――そう銘記して、少しでも早く休めるように努力してほしいと思います。また休めなくとも、体を冷やさないようにして、栄養を十分にとることを心がけていただきたい。
5  「発熱」は防衛反応
 池田 なぜ、風邪のときに熱が出るのでしょう。
 豊福 風邪を治そうとする防衛反応が発熱です。体温が高くなるとウイルスの活動が鈍くなるのです。
 池田 水分の補給は、お茶でもいいのですか。
 豊福 緑茶や紅茶にはカテキンという物質がふくまれていて、ウイルスの感染予防に効果があると言われています。
 池田 アルコールで補給する人もいるようですね。(笑い)
 豊福 卵酒程度ならかまいません(笑い)。アルコールは飲んだ量以上に、水分が尿として排泄され、その後は脱水ぎみになります。
 森田 薬を飲んでいるときのアルコールは禁物です。薬の効果が強くなったり、悪酔いすることがあります。
 池田 お風呂はどうでしょう。
 豊福 入浴は体力の消耗や湯冷めの心配があるので、とくに、熱のあるときは勧められません。
 池田 風邪のときは、どんなものを食べればいいのですか。
 森田 ひき始めは、鍋料理や煮込みうどんなど、体を温めるものが望ましいです。せきが出るときは、豆腐を使った料理やゼリーなど、のど越しのよいものを。鼻がつまっているときは、温かい雑炊やうどんなど、湯気が立つものです。
 豊福 熱があるときは食欲がないので、フレッシュジュースやプリン、アイスクリームなどで水分を補給するとよいでしょう。下痢がひどいときには、無理に食べる必要はありません。ただ、下痢、発熱は脱水症状を起こしやすいので、水分だけはしっかりとることが大切です。
 池田 満々たる生命力をたたえ、四大を整える――風邪の予防も、治療も、「心身の調和」をもたらす聡明な生活が根本のようですね。

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