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日蓮大聖人・池田大作

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人生・社会について  

「希望対話」(池田大作全集第65巻)

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10  問10 21世紀の日本や世界はどうなっているのか
 今、科学は非常な勢いで発達していますが、一方で公害や環境破壊が大きな問題になっています。二十一世紀の日本や世界はどうなるのでしょうか。
 未来の社会がどうなるかを予測することは、非常にむずかしい問題です。数年前、未来学が一種のブームになり、いろいろな学者によってバラ色の未来社会が描かれましたが、最近では、公害や環境破壊の問題などが大きくクローズアップされて、むしろ悲観的な観測が多くなされているようです。ですから、正確に予測することはほとんど不可能に近いといってよいでしょう。
 それに、どのような時代になるかを考えることも大事ですが、より大切なことは、どのような時代にしていくかです。二十一世紀の日本や世界は、他のだれのものでもない。君たちのものなのですから、どういう時代を創るか、君たちが主体的に考えていかなければならない問題だと思うのです。
 ここでは、そのための参考として、いくつかの問題点を指摘しておくことにしましょう。ただし、第三次世界大戦のような大規模な戦争がないという前提での話です。大戦争が起これば、二十一世紀どころか、人類自体の存続さえあやういからです。
 第一に、科学技術が想像もできないくらいの発達をとげることは間違いないと思います。最近の科学文明の発展は驚くべきものがあり、ひと昔前までは夢物語だった月の探検(一九六九年七月、アメリカのアポロ11号が、月画着陸に成功。人類が初めて月に降り立った)さえ現実のものとなりました。二十一世紀まで約三十年、科学がどの程度まで進歩するか、まさに限りないといってよいでしょう。
 しかし、ここで考えなければならないことは、科学技術の発達が、そのまま人々の幸福に結びつくとはかぎらないということです。たしかに、交通や通信の技術はめざましく発達し、新製品が次から次ヘと造られて、生活は以前とは比較にならないくらい便利になりました。が、ついに核兵器のような大量殺人のための道具も、科学の進歩によって製造されるようになったのです。
 科学は、それ自体では善にも悪にもなるものです。肝心なのは、それを使う人間です。人間しだいで、人類の幸福の増進に計り知れない貢献もすれば、人類を絶滅させる凶器にもなるのです。とすると、人間自身の問題が、必然的に大きなテーマになってくるでしょう。
 第二に、科学の発達に関連しますが、公害や環境破壊の問題がますます切実になってくると思われます。今、空といわず河川といわず、海も陸も、私たちの周囲はすべて有毒物によつて汚染されているといっても過言ではないくらいです。しかも環境問題を一挙に解決する方法は、これといってないうえに、文明が発達すればするほど汚染の度合が激しくなるのですから、どうにも始末の悪い問題です。こうした現状に対し、人類は徐々にではあるが確実に死へ向かっていると、多くの学者が警告を発していますし、このまま進めば、その時期は意外に早いという人さえいます。
 現在では、日本などの先進工業国でとくに問題になっていますが、今まで環境問題など思いもよらなかった清浄な地域が、次々に汚染されていることを思うと、こうしたことが、やがて世界的な規模で起こるのではないかと心配です。
 第三に、物質面での生活は豊かになり、労働時間も短くなるでしょうが、その一方で、生きる目標が失われた社会になっていく恐れが多分にあります。現在でも、アメリカなど豊かな国では、人間らしく生きることをめざして青少年がかなりヒッピー化しています。それは、欲しいものはだいたい手に入り、仕事はほとんど機械がやってしまうようになると、何のために自分は生きているのかという根本的な疑問がわいてくるからでしょう。この問題は、まさしく人間そのものの問題であり、今後、人間はどうあるべきかという問題の解明が、非常に重要になるにちがいありません。
 このほかにもいろいろな問題があるでしょうが、こう考えてみると、どうやら二十一世紀の最大のテーマは″科学と人間″ということではないかと私は思います。そして、なかでも人間自身の問題が、最重要の問題として、過去のどんな時代よりも大きく取り上げられるようになる気がします。
 さらに、ではその人間自身の解明、科学の正しい発達は何によってなされるかというと、結局、生命と哲学の問題に帰着せざるを得ないのですから、二十一世紀は″生命哲学の世紀″とでも呼ぶべき時代になるといってもよいでしょう。

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