Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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家庭について  

「希望対話」(池田大作全集第65巻)

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6  問6 家が経済的に大変で自信をもてない
 僕の家は貧しいので、友だちを家へ呼ぶこともできないし、持ち物などもひけ目を感じます。こういう気持ちがよくないことはわかっているのですが、どうもいろいろな面で自信がもてないのです。
 君は、こんな昔話があるのを知っていますか。
 ―― 昔、村一番の貧乏だという男が長者の家へきて言いました。
 「長者さん、あなたはすばらしい宝を持っているそうですが、私に見せてくださいませんか」
 かねがね、だれかに見せて自慢したいと思っていた長者は、わが意を得たりとばかり喜んで、次から次へと、七つもの蔵をあけては、世にも珍しい宝を得意げに示すのでした。
 が、それを一つずつ眺めていた男は、たいして驚いた様子もなく、平然とこう言いました。
 「見事なものですね。でも私の家には、もっと高価な宝があるんですよ」
 それを聞いた長者は、こんな貧乏な男が宝などもっているはずはない。どうせ負け惜しみだろう、ひとつ見に行って恥をかかせてやろうと思い、次の機会に男の家を訪問することを約束しました。
 約束の日、男の家へ行ってみると、男はニコニコ顔で迎えましたが、村一番の貧乏だけあって、壁は落ち、畳はすりきれて、人間の住むところとは、とても思えないほどです。
 ところが、宝どころの話ではないと思っていると、男が手をたたくや、七人の男の子が出てきて、ヒザをそろえて、あいさつするではありませんか。その七人の子を前にして、男は胸を張って言ったのです。
 「これが私の宝です。あなたの宝はあれ以上の価値は生みませんが、私の宝はどれほどの価値を生むか無限です。社会のために、どれほど貢献できるかも限りがありません。そして、その楽しみは、一日一日増しているのです」と――。(『日本昔話通観』同朋舎出版、2巻、7巻、24巻を参照)
 この話の男の家ほど、君の家は貧乏ではないでしょうが、君のお父さんの気持ちは、おそらくこの男と同じではないかと思います。親にとって最も大事なものは、財産でもなければ地位や名誉でもない。わが子ほどかわいく、大切なものはないのです。そして、最大の生きがいは、まさしく子どもの成長なのです。
 そう考えれば、貧乏だからといってひけ目を感ずるということが、いかに愚かなことか。私は、君の質問を聞いて、とても残念に思います。どんなに貧しくてもよいではないか、君自身が、お金には換算できない君の家のすばらしい財産であり、君の成長こそ、本当の意味で君の家が裕福になることなのだと言いたいのです。
 貧乏といえば、私の少年時代も大変な貧乏でした。父の家業が失敗し、四人の兄もみな、戦争にとられてしまったため、高校にも行かずに働かなければならなかったのです。それ以前にも、家が海苔の製造をしていましたので、小学生のころから、真冬でも夜明け前に起き、海へ出て海苔を採る手伝いをしていました。
 しかしそのころ、自分がみじめだと思ったことは一度もありませんでした。そして、今そのころを振り返ってみると、貧乏でよかったと思っています。そうした生活を経験したからこそ、貧乏で悩んでいる人々の気持ちもわかるからです。
 「若いときには買ってでも苦労をするべきだ」と言われますが、それは、苦難こそが、本当に強くたくましい人間をつくるからです。
 家庭が貧しいのは、将来の自分のためにわざわざ貧乏になっているのだ、と思い、どんな苦難にも負けず、歯を食いしばってがんばってください。

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