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日蓮大聖人・池田大作

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クラブの悩み  

「希望対話」(池田大作全集第65巻)

前後
1  ―― 今回はクラブ(部活)の悩みです。三年生の男子からです。
 「僕はバスケット部です。まわりが受験ムードになってきて、自分も勉強しようと思うのですが、練習で疲れて、九時には寝てしまいます。一学期の中間テストも、いい点が取れませんでした。
 夏に引退してから勉強して、受験に間に合うのか心配です」
 運動系と文化系では違いますが、クラブの多くは、夏休みや、その前後に試合やコンクールがあります。三年生は、そこで引退しますので、今、総仕上げの段階です。
 しかし、七月に入ると、すぐに期末テストも待っています。今がいちばん苦しい時期かもしれません。
 また、一年生にとっても、「クラブと勉強の両方は大変だ」と思い始めるころでしょう。野球部で、毎日の練習がつらく、一年生が数十人もいて、「とてもレギュラーになれそうにない」と、一年の終わりにやめてしまった人を知っています。
 池田 それで、勉強するようになった?
 ―― 「クラブをしてる人に、勉強で負けたくない」と思って、自分ではがんばったようです。しかし、実際は遊ぶ時間も増えました。(笑い)
 池田 そういうものかもしれないね(笑い)。人間、時間があるから、たくさんのことができるとはかぎらない。
 大事なのは「集中力」です。
2  クラブで「心」と「人格」を鍛えよう!!
 「自分は、これをやる!」と決めて
 池田 ともかく、クラブでもいい、勉強でもいい、ボランテイアでもいい、何かに「燃える」ことは、いいことだ。
 「自分は、これを、やるんだ!」と、自分で決めて、それを、やり通してみることです。そうすれば、「自分は、やりきったんだ」という自信ができる。
 もちろん、よく考えて、クラブをやめるとか、途中で方向転換することもあるでしょう。その場合でも、別の何かに徹底して打ち込んでいってもらいたい。
 一つのことに中途半端な人は、ほかのことにも中途半端になることが多い。反対に、クラブをちゃんとできる人は、ほかのことも――勉強も、がんばれないわけがないと思う。
 ―― 本当に、そう思います。先ほどのクラブをやめてしまった子の友人は、野球部を続けキャプテンになりました。「俺は野球をやるんだ!」と決めていたのです。勉強の成績はよいとは言えませんでしたが、引退してから受験勉強に取り組んで、野球の強い高校に合格しました。そこでも野球部のキャプテンをして、甲子園にも行きました。社会人の球団にも進んだのです。
3  万年補欠でもいい
 池田 もちろん、みんなが″甲子園″に行けるわけではない。″弱小チームの万年補欠″で終わる人もいるにちがいない。それだっていい。くじけずに、やり通したこと自体が立派です。
 クラブでは、いろいろなことを学べる。苦手なことにも挑戦する勇気。失敗しても、あきらめない粘り強さ。目標をめざして進んでいく持続力。かけがえのない友情を築くこともできる。体も鍛えられる。
 全部、あなたの「一生の財産」です。クラブは、心と人格を鍛える「人間形成」の場であると思う。
4  悩んでいるひまに一ページでも
 池田 悩みを寄せてくれたバスケット部の彼も、不安な気持ちは、よくわかる。しかし、不安や、あせりに負けてはいけない。受験が不安なのは、あなただけではない。
 今まで一生懸命、クラブをやってきたのだから、大変なことも乗り越える「心のエンジン」が鍛えられているはずです。だから、「忙しくて、できない」と悩んでいるひまがあるなら、その間に、一ページでも勉強を進めることだ。クラブから帰ると、疲れて眠いのはしかたがない。だったら、朝、今よりも早く起きて、集中して勉強すればいい。
 ―― 疲れがとれた頭でやれば、けっこう、勉強がはかどると思います。
 また、クラブがあるうちは、「最低、これだけはする」という計画を立てて、挑戦してもいいと思います。
 池田 ともかく、「これがあるから、自分はできない」と言いわけしたって、だれもほめてくれない。なんの得もない。
 「忙しいから、できない」のではなく、「忙しいから、集中してやる」と決めることだ。勉強をやるべき時は、パッと心を切り替えて、挑戦するのです。
 また、クラブを引退したら、人の三倍、三倍、勉強しなさい。「クラブで強くなった」自分を証明してみせなさい。
 クラブも勉強も、両方をやりきった人は、苦しんだ分だけ、深い、広い、味のある青春になっていく。そして、後輩にも、「やればできるんだ」という希望を贈っていけるはずです。がんばれ、バスケット君!
5  勉強とクラブを両立させる決意を!!
 自分との戦い
 池田 一、二年生のみなさんも、勉強とクラブの両立で悩むことが多いと思う。ある時は勉強にかたよったり、ある時はクラブにかたよったりする。
 たとえば、自転車に乗る時も、初めは右側に転んだり、左側に倒れそうになったでしょう。でも、ハンドルさえ手放さないで、あきらめずに努力していけば、やがて、どちらにも倒れないで、バランスよく、前へ進めるようになった。
 勉強とクラブも同じだ。「必ず両立しよう!」と、まず決めることだ。「それぞれの自分の目標を達成しよう!」と決意することだ。
 そうすれば、「限られた時間に、どう、やりきろうか」と知恵がわく。「時間がないからこそ」集中してがんばることもできる。上手に気分転換したり、「今は、どっちに力を入れるべき時なのか」、自分で調整できるようになる。
 ―― 勉強もクラブも、両方、がんばっている人は、たくさんいます。
 ある吹奏楽部の、部長と副部長の子は、成績でも学年で一番、二番を競っていました。練習が毎日、朝と放課後にあり、大変だったようですが。副部長の子は、生徒会の副会長もしていました。
 池田 勉強も、頭の良し悪しなんて、みんな、ほとんど変わらない。違いが出るのは、「自分との戦い」に勝つかどうかです。偉い人は、陰で必死になって努力しているものだ。
 ―― 大人も同じですね。病気で倒れたお父さんに代わって、一家を支えるために、昼は運転手の仕事をしながら、夜学に通い、公認会計士になった先輩もいます。女子部で部長をしながら、鼓笛隊でも後輩の面倒を見て、仕事の帰りには英語学校で勉強している方もいます。
 池田 そういうよき先輩の話を聞くのも、励みになるかもしれない。
 私も、いつも「一日を一週間分、十日分に使おう」という決心で生きてきた。
 何だって、「とても無理だ」と、あきらめたら、その瞬間に「試合終了」です。苦しくとも、やりきった人は、思いもよらない「力」が出る。そして、後から振り返って、そのときがいちばん懐かしく、すばらしい思い出に変わるのです。
 ―― 次の悩みは、二年生の女子から寄せられたものです。
 「顧間の先生と三年の先輩から『あなたが次の部長だから』と言われました。でも、私より技術のうまい人が、いっぱいいるし、後輩たちを、まとめていく自信がありません」
 部長やキャプテンじゃなくても、「後輩が言うことを聞かない」と悩んでいるメンバーもいます。
 池田 リーダー論だね。大事だね。
 いろいろあるが、簡単に言うと、「自分の言うことを聞かせよう」と思っている人の言うことほど、聞きたくないものなんです。(笑い)
 たとえば、母親の「勉強しなさい!」とか(大笑い)。もちろん、お母さんは、みんなのことを思って言ってくれているんだが、リーダーが、いばったり、「自分の言うとおりにさせよう」という態度だと、必ず反発されます。
 むしろ、いつも「何か問題はないですか」と心配してあげる。そういう先輩に、後輩は自然とついていくものだ。
 技術的に、もっと上手な人がいるのなら、クラブとしては、ありがたいことじゃないですか。自分は、リーダーとして、部員さんを思う「心の強さ」で一番になればいい。
 まして、中等部のみなさんは、祈ることができる。部員の成長を祈る心は、たとえ時間がかかっても、必ず通じます。
 ―― 一人一人の名前を書きだして、仏壇の前に置き、お題目を送っている人もいます。
 池田 そう、一人一人です。「自分」対「全員」、「自分」対「みんな」ではない。一対一の関係を、一人一人とつくることです。心の通う間柄になることです。
 その結果として、自然に団結ができていく。一挙に「まとめよう」とすると失敗します。
6  「長」とは「みんなの面倒を見る人」
 「共通の目標」を中心に団結
 池田 「自分を中心に」まとめようというのではなく、「共通の目標」を中心に団結していくのです。
 自分たちの目標を確認し、一人一人が、それに向かっていけるようにしていけば、いいのです。
 質問を寄せてくれた人は、きっと、先生や先輩に信頼されているから、部長に選ばれたのでしょう。大丈夫、大丈夫! 自信をもって、みんなの面倒を見てあげてください。
 ―― この一年間、部長としてがんばってきたメンバーが話していました。
 「クラブをやって、いちばんよかったと思うことは、友情が深まったことです。意見がぶつかってケンカして、でも辛抱づよく話しあって、仲が良くなって、またケンカして、話しあって、もっと仲が良くなって……その繰り返しでした。
 もちろん、部長として、なんでも率先してやろうという気持ちでやってきました。でも、自分一人では解決できないこともあります。それを一人で背負いこまずに、仲間といっしょに話しあうことだと思います」
 たとえば、「後輩の悪いところを注意する」といっても、自分一人だと感情で怒ったり、実際は「八つ当たり」だったりします。そうならないよう仲間と話しあって、正しいこと、言うべきことは、後輩にきちんと言う。また、後輩と先輩が意見を言いあうミーティングを何回もしたそうです。
 と同時に、「部長といっしょに、クラブを盛り上げていこう」という気持ちが大事だと思います。
7  クラブで悩み、人間学を学ぶ
 池田 何がむずかしいと言って、人間関係くらいむずかしいものはない。理屈では計りきれない。そのいちばん大切な「人間学」を、クラブで学んでもらいたい。それはまた、民主主義の練習にもなっている。
 みなさんの舞台は世界です。いろいろな考え方の人がいる。まったく習慣や文化の違う国もある。
 今、みなさんが悩んでいることは、将来、そういう世界の人たちといっしょに生きていくためにも必要なことなんです。すばらしいチャンスなんです。
 だから、大いに悩みなさい。そして、一つ一つを通して、自分自身の「人格」を大きく大きく育てていってほしいのです。

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