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日蓮大聖人・池田大作

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まえがき  

「21世紀への母と子を語る」(池田大作全集第62巻)

前後
1  きょうも、世界のどこかで、
    新しい“いのち”が生まれています。
 そして、きょうもどこかで、
    新しい“お母さん”が誕生しています。
 新しいお母さんの心は、大きな喜びでいっぱいです。
 しかし、それと同時に、未来への不安が、かすかに心をよぎります。
 すやすやと眠っているわが子の顔を見つめながら、お母さんは考えます。
 「この子の将来には、どんなことが待ち受けているのだろう?」
 「この子が大きくなる頃、世界はどんなふうになっているだろう?」
 「この子が苦しんだり、悲しい思いをするのは、耐えられない!」
 お母さんの愛というのは、まことに深いものです。
2  イソップ物語に、「子どもと獅子」というお話があります。
 ――年老いた父親に、勇敢で、猟が大好きな一人息子がありました。
 父親は、ある日、息子が獅子に殺される夢を見てしまいます。
 その夢が正夢となることを恐れた父は、立派な住まいをつくり、息子をそこに閉じこめました。息子の心をなぐさめるために、部屋の壁には、さまざまな動物の絵を描いておきました。
 しかし、自由を奪われた息子は、それらの絵を見れば見るほど、よけいに苦しみを感じます。そしてある時、描かれた獅子の前に立ち、こう叫びます。
 「お前と父の夢のせいで、こんな牢獄に閉じこめられたのだ。どうしてくれよう!」
 息子は、壁に描かれた獅子に手を打ちつけました。
 ところがその時、トゲが彼の爪に突き刺さります。それがもとで高熱を出し、子どもは命を落としてしまいました……。
3  わが子を心配して守ろうとするあまり、息子の死を自ら招いてしまった父親――。
 これは一つの寓話ですが、今の世の中にもあてはまる警告ではないでしょうか。
 「子どものため」と思ってしたことが、かえって健全な成長を邪魔してしまう。親にとって、これほどの悲劇はありません。
 子どもは、大きくなるにつれて、さまざまな困難にぶつかります。しかし、そうした困難を、親が先回りして、すべて防ぐわけにはいきません。
 親が守りすぎると、子どもの「生きる力」が弱められてしまいます。近年、精神的に“ひ弱”な子どもが増えていると指摘する識者がいますが、原因は、こうしたところにもあるのかもしれません。
 子どもは、いつか、一人立ちしていかなくてはならないのです。
 「子どもを『幸福にすること』と『甘やかすこと』を混同してはいけない」――これは、ルソーの言葉です。
 「子どもを幸福にする」ために大切なのは、どんな試練に出あっても、それに負けない「強さ」と「勇気」を、はぐくんでいくことではないでしょうか。
4  二十一世紀へと歩みゆく、すべてのお母さんと子どもたちの幸福を願って、月刊誌『灯台』誌上で、創価学会婦人部の代表の皆さんと語らいを進めてきましたが、本書は、その三冊目となりました。
 語らいの中では、お母さんの勝利の体験談が、数多く紹介されています。多忙な毎日に挑戦しながら、懸命にわが子を育ててきた奮闘記です。
 そうしたお母さんの多くは、決してめぐまれた環境で子どもを育ててきたわけではありません。早くに夫を亡くしたり、病気と闘いながらなど、むしろ、逆境の中で育児に取り組んできました。
 日々の生活の中で戦うお母さんの姿こそ、子どもたちにとって何よりの教育となっていったのです。
5  “負けないお母さん”が、“負けない子ども”を育てます。
 お母さんの“強い心”が、子どもの“強い心”をつくります。
 お母さんの“やさしさ”が、子どもの“やさしさ”をはぐくむのです。
6  二十一世紀は、大きな変化の時代となるでしょう。これからの世代は、私たちが、これまで出あったことのない挑戦を受けるかもしれません。
 だからこそ、子どもたちに「強い心」と「生きる力」を身につけてほしいのです。
 このささやかな一書が、子育てに励む皆さまにとって、“応援の書”となることを願っています。
 子どもたちの未来に幸福あれ!
 崇高なる母の人生に勝利あれ!
 ――そう、心の底から祈りつつ。
  青葉美しき 二〇〇〇年五月 池田大作

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