Nichiren・Ikeda
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ごまかせない晩年の顔
「第三の人生を語る」(池田大作全集第61巻)
前後
3 一歩退くか、一歩踏み出すか
松岡 さて、トインビー博士が、先生とのいっさいの対談を終えたさいに、対談に同行した人に″ぜひとも会ってほしい人物″を、そっと挙げられました。
池田 もし、直接に名前を言ったら、押し付けになるかもしれないと、間接的にメモで渡してくださった。その心遣いには、今も感謝しております。
佐々木 ローマ・クラブ創立者のぺッチェイ氏は、博士が名前を挙げられた一人でした。
先生は、パリで一九七五年に初めて会われました。ちょうど緑の薫風さわやかな五月でしたので、パリ会館の庭で対談されました。
池田 人類が経験した産業革命、科学技術革命は、すべて外側からの革命だった。次に人類がめざさなければいけないのは、内側からの人間革命である――との点で、完全に一致しました。
佐々木 ペッチェイ氏とは、その後、何度もお会いされましたね。
東京で、イタリアのフィレンツェで、ふたたびパリでと……。
フィレンツェでは、ぺッチェイ氏は前日にロンドンからローマの自宅に戻り、対談のためフィレンツェへ車で四時間かけて、ご自分でハンドルを握って、駆けつけられています。
池田 この時、ペッチェイ氏は七十二歳。じつに若々しく精力的でした。
お会いした方々は皆さん、年齢を重ねれば重ねるほどお若く、さらに本格的に仕事に打ち込んでおられた。これでこそ、本物です。つねに満々たる前進の息吹をたたえていくことです。
ともすれば、人間は年をとると「前進」の気概を失ってしまうことが多い。
しかし、そこで一歩退くか、一歩踏み出すかは微妙な一念の差かもしれないが、「人生の総仕上げ」の段階にあっては、取り返しのつかない違いとなって表れてきます。