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日蓮大聖人・池田大作

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関西創価中学・高等学校第21回、創価中… 生涯「学びの道」「勇気の道」を

1996.3.17 教育指針 創価学園(2)(池田大作全集第57巻)

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1  皆さま、卒業おめでとう。ご家族の皆さまにも、心よりお祝い申し上げます。また、教職員の方々、ご来賓の諸先生方に厚く感謝申し上げたい。
 本日、関西学園は第二十一期生、東京学園は第二十六期生、そして関西創価小学校は第十三期生、東京創価小学校は第十五期生の晴れの卒業となった。
 ただ今、代表へのさまざまな表彰があったが、私の気持ちは「卒業生全員に創立者賞をさしあげたい」ということである(大拍手)。だから全員が胸を張って、人生の最後の勝利へと進んでいただきたい。学園生は全員が「宝の人」である。(拍手)
 ご存じのように、今回、私は、創価学園・創価大学の創立者として、アジアの誇る世界の名門「香港大学」から名誉文学博士号を授与された。授与式は立派な伝統がにじみでている、荘厳な儀式であった。
 この栄誉を、私は何よりもまず、愛するわが学園生にささげたい。これをもって皆さんの門出を最大に祝福申し上げたい(大拍手)。こうした受章も、すべて、学園生の皆さんが二十一世紀に、アジアをはじめ世界の人々と友情を広げながら、大指導者と育ちゆく栄光の象徴であると、私は確信している。
2  「学ぶ人は恐れることがない」
 さて今回、香港大学で、私とともに名誉博士号を受けられたのが、香港の高名な画家である方召麐女史である。今年、八十二歳。まことに偉大なる芸術家であり、偉大なる女性であり、偉大なる母であられる。
 本年、香港大学から、二人の女性に名誉博士号が贈られた(=創立者を含め6人が受章)。その二人が、この方女史と、令嬢の陳方安生女史という、母娘だったのである。
 令嬢のほうは、女性として、また中国人として、はじめて香港の行政長官という行政府のトップの要職に就かれた方である。
 この母娘が一緒に名誉博士号を受けられたことが、香港のさわやかな話題となっていた。きょう、巣立ちゆく学園生とご両親の皆さまも、それぞれに、そういう「ロマンと使命の花道」を親子で飾っていただきたい――これが私の希望であり、夢である。
 学長ご招待の夕食会で、私は、お母さんの方女史と、じっくり「人生」と「歴史」と「芸術」を語りあった。シルクロードの宝石「敦煌」であれ、中国古代の信念の政治家「屈原」であれ、中国科学史の大家であるイギリスの「ジョセフ・ニーダム」であれ、何を語っても、話が響きあった。
 ふくいくたる学識と教養の方であられる。それというのも、波瀾万丈の人生にあって、女史が徹して「学び」の姿勢を貫いてこられたからであろう。
 動乱の時代にあって、女史は十一歳の時に、父親を暗殺されてしまった。しかし、残された女史の母親は「社会が激動するなかだからこそ、たしかなものを身につけさせたい」と思った。
 「どのような時代になっても、学ぶ人は恐れることがない」という信念をもって、彼女に教育を受けさせたのである。
 その母の真心に、方女史は応え、学びに学んだ。大好きな絵の才能も、磨きに磨いたのである。
 皆さんも、これからが、いよいよ「学問の本舞台」である。
 みずからの才能を、どれだけ発揮できるかという「大闘争」のはじまりである。「獅子」のごとく戦い、勝ってもらいたい。「百獣の王」は何ものも恐れない。「獅子」は、何ものにも負けない。
 方女史は、結婚し、次々に子どもをもうけ育てるようになってからも、学び続けた。時代は、日本の悪逆な侵略の真っただ中であった。彼女の一家も、中国の各地を転々とせざるをえなかった。
 しかも、思いもよらぬ悲劇が襲いかかった。
 香港に移ってから、生活が安定する間もなく、最愛の夫を病で亡くしてしまったのである。彼女には、十一歳を頭に三歳まで、じつに八人の子どもが残された。
 しかし、その悲哀のどん底の中から、彼女は「よし!」と発奮する。「自分は生きてみせる!」
 と。ここに真の人間の強さがあり、偉さがあると私は思う。
 方女史は「私は勝ちました」と言っておられた。私の母もまた、最後の言葉は「私の人生は勝ったよ」「私は勝ちましたよ」であった。女史は、貿易の会社を懸命に、やりくりしながら、八人の子どもに皆、立派な教育を受けさせ、育てあげていく。
 たしかに教育こそ、子どもに残せる最高の財産であろう。同時に、女史は、仕事と子育ての合間を縫って、みずからの天職と定めた絵の修業も続けた。子どもたちの記憶では、「お母さんが筆をとらない日は見たことがない」という。しかも、経済的に余裕ができた四十代に入ってからは、彼女自身が香港大学に入学し、ふたたび「学びの挑戦」をはじめたのである。そして今、八人の子どもさんは全員、見事に、それぞれの分野で第一人者として活躍されているという。女史の絵も、世界の多くの人々から愛されている。
 女史のお顔は「慈母」のようであり「菩薩」のようである。皆さんのお母さんも、だれよりも皆さんの幸せを祈っている「慈母」であられる。そのありがたさは、将来、皆さんが親となり、年をとっていくほど、しみじみとわかるにちがいない。
3  不幸をバネに大きな勝利ヘ
 女史は言っておられた。「若くして夫を亡くしたからこそ、逆に香港大学にも学べたし、絵の勉強も深められたのかもしれません」と。
 ここが大事である。不幸をバネに、よりいっそう、強くなり、よりいっそう、大きく勝利してみせる――そういう心をもつかどうかである。
 日蓮大聖人は「状況がよいのは不思議、悪いのは当然と思え」と言われている。また「聖人・賢人は、ののしることで本物かどうかためされるものである」とも述べられている。人生は順調な時ばかりではない。また、そうであっては人間ができるはずがない。
 成功すれば妬まれるし、失敗すれば馬鹿にされ、叩かれる。これが人間の世界の実相である。これからの皆さんの前途にも、思いがけない悲しみや悩みがあるかもしれない。しかし、その時こそ、絶対に負けてはならない。あきらめてはならない。後退してはならない。このお母さんのように、「よし! 『新たな挑戦』の時がきた」と腹を決めていただきたい。
 「苦に徹すれば珠と成る」という言葉があるが、苦労につぐ苦労、波瀾万丈の人生を生きぬいてこそ、深みのある本物の人物ができるのである。その「揺るぎなき境涯」にこそ本当の幸福もある。
 このお母さんに健康法をたずねると、中国の古典(易経)の一節をあげられた。それは「天行は健なり。君子もって自強して息まず」(『易経』高田真治・後藤基巳訳、岩波文庫)と。
 すなわち「天体の運行は健やかで息むことがない。君子は、この健やかさにのっとって、みずから強めはげむ努力を怠ってはならぬ」(同前)という言葉である。
 方女史は、この言葉をとおして、「地球も毎日たゆみなく回っています。人間も、地球と同じように、たゆみなく仕事を続けていけば、健康になります。そして精神を高めることができます」と言われていた。まことに至言である。
 わが学園は、アメリカの有名なウイルソン山天文台と、コンピューター・オンラインで結ばれており、日本にいて天体を観測できる。
 たしかに、地球も、太陽も、宇宙の天体は、それぞれに、みずからの軌道を確実に進み続けている。
 皆さんも、自分らしい「学びの軌道」「努力の軌道」「挑戦の軌道」を着実に進んでいただきたい。
4  人生の勝負は「四十代から」
 一ぺんに偉くなろうとか、早く有名になろうとか、裕福になろうなどと、あせる必要はない。
 いってみれば、地球もあせらない。太陽もあせらない。それでいて着実に、たゆむことなく「わが軌道」を進んでいる。地球があせって、二十四時間のところを三時間で自転したらたいへんである。(笑い)
 人生もたしかな「軌道」に乗り、軌道の上を確実に進んでいるかどうか。それがいちばん大切なのである。見栄を張り、虚栄を追い求めるような人生は、結局、たしかな法則から外れてしまう。
 自分らしく、人知れず、地道に、こつこつと努力しぬいた人が、最後は勝つ。
 春、種をまく。三日で育てといっても無理である(笑い)。やはり「実り」は秋を待つしかない。これが道理である。人生の秋は四十代、五十代、六十代である。四十代以降に、花が咲けばよい。実がなればよい。それまでは全部、修行である。全部、忍耐である。今、お金がないことなど、少しも恥ではない。むしろ若いときこそ、苦労していく環境が必要なのである。
 さて今回、私は、香港在住の文豪・金庸先生とも二回目の対談をおこなった。
 金庸先生は、暗殺など、生命の危険に何度もさらされながら、断固として正義を主張してこられた言論の大英雄であられる。
 その金庸先生が、私との対談の中で、こう述べておられた。私自身のことになって恐縮だが信頼する学園生であるゆえに、ありのままに紹介させていただきたい。
 「私が、池田先生を尊敬してやまないのは、その著作の中で、すばらしい見解を発表され、世界平和のために絶え間ない努力を続けておられるということだけではありません。また、非常に価値ある精神の大団体の大指導者であるということだけでもありません。さらに大事ことは、池田先生が、真理のために勇気を堅持し、多くの悪意や偏見に満ちた世論の圧力にも、屈服しないということなのです。私が書いた小説では、主人公は、一人もしくは数人の英雄です。
 そして英雄のおもな資質は勇気です。それは肉体的な勇気だけではありません。さらに、重要なのは『道徳の勇気』です」(「聖教新聞」1996年3月20日付)――と。
 これは、決して私自身への称賛であるとは思っていない。
 創価教育の父であられる牧口先生、戸田先生の道に、厳然と続いている事実を語ってくださったと思っている。
 学園生の皆さんは、世界の良識が信頼し、見つめる、この「勇気の道」を、私とともに、「創価の英雄」として、誇りも高く進んでいただきたい。
 いまや世界中に学園生がいる。創大生がいる。香港にも、多くの皆さんの先輩が活躍しておられた。学園と創価大学出身の皆さんの活躍ほど、私にとって頼もしく、うれしいことはない。
 終わりに、「ご両親を大切に!」「自分自身を大切に!」そして「友情を大切に!」と申し上げ、祝福のスピーチとさせていただく。
 きょうは本当におめでとう!

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