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関西創価小学・中学・高等学校合同第四回… 「情熱」こそ「栄光」の力

1992.10.19 教育指針 創価学園(2)(池田大作全集第57巻)

前後
1  たいへん元気で、見事に成長している諸君にお会いして、私はうれしい。
 ご存じのように、今回、私は中国を訪問した。(=第八次訪中、10月12日〜17日)
 北京第一実験小学校と創価小学校の友情も、さらに深くなっている。北京の小学校のお友だち、また先生方からは、「皆さんにくれぐれもよろしくお伝えください」との伝言があった。まず、このことを紹介しておきたい。(拍手)
 先ほど「健康祭」(小中高合同体育大会)の表彰がおこなわれた。私は、皆さんの健闘をたたえて、一つの言葉を贈りたい。
 それは、中国の大文豪・魯迅(1881年~1936年)――”中国近代文学の父”といわれ、大革命家、大指導者とたたえられた魯迅の言葉である。周恩来総理なども、彼の精神を継承したともいわれている。
 魯迅については、今回の「中国社会科学院」の講演(=「21世紀と東アジア文明」がテーマ)でもこでも若干ふれた。ちなみに、きょう十月十九日は、魯迅が上海で亡くなった命日である。
2  「くじけない人」が「本当の勝利者」
 魯迅は、こう言っている。
 「私は運動会を見るとき、いつもこう思う、勝者はもとより尊敬すべきだ、しかし、落伍してもなおゴールまで駈けなければやまぬ競技者と、そのような競技者を見ても粛然として笑わぬ観客と、これこそはまさに中国の将来の背骨なのだ、と」(『魯迅全集4<華蓋集・華蓋集続編>』相浦杲訳、学習研究社)
 たとえ一等にはなれなくても、最後の最後まで走りぬく人、そして、そういう真剣な人をバカにしないで、一等の人と同じくらい、心からたたえ、見守っていける人――こうした人々こそが、中国のためになる、中国の未来を背負って立つ人である、と言うのである。これが魯迅の鋭い「目のつけどころ」であった。祖国の将来を見すえた史観であった。
 皆さんも、何があっても、自分は途中でへこたれない。くじけない。そういう「根性の人」であっていただきたい。その人が本当の「勝利者」なのである。
 また魯迅は、青年にこう呼びかけている。
 「君たちは、生命の力にみちあふれている。深林に出会えば、開いて平地にすることができる、曠野に出会えば、樹木を植えることができる、砂漠に出会えば、井戸を掘ることができる」(同前)と。
 ある諸君の先輩は、高校生のとき、胸を張って、こう宣言した。「将来、パイロットになって、創立者を、皆を世界中へ運びたい」と。今はもう彼は副操縦士である。
 また現在、通訳として世界的に活躍しているある女性も、中学生のとき、「かならず世界平和のために貢献したい」と決心した。そのとおりの人生を歩んでいる。
 今や中国でも、また世界のどこへ行っても、諸君の先輩たちがいる。年ごとに、その活躍の舞台は広がっている。
 ともあれ、大切なのは、”前へ進んでいこう”というパッション――「情熱」である。 
 情熱をもった人の胸には、火が燃えている。愚痴や言いわけなどの湿っぽさがない。情熱がある人は、「知恵」がわく。「力」が出る。「友」が生まれる。
 情熱がなくなれば、もはや青年ではない。若年寄のようになってしまえば、自分も不幸である。人も信頼しない。よき友人も生まれない。
 かつて私が日中友好の「金の橋」を築こうと言ったとき、最初はだれも本気で受けとめなかった。しかし、今や、多くの指導者が「金の橋」を口にしている。
 また中ソの和解も数十年前から予見し、そのための行動をかさねてきた。
 こうした時代を、私は「情熱」をもって、つくってきた。「情熱」こそ栄光の力であり、時代を開くエネルギーなのである。
3  現場に行き、現場を知る大切さ
 次に、世界一の大富豪とされたアメリカのロックフェラー(1839九年―1937年)の話をしたい。
 諸君の将来のために――。また家族や友人関係、学校教育にも通ずる教訓があるかもしれない。
 あるとき、彼は、関連の「石油カン製造工場」に行った。そして、カンができあがる工程を見てまわった。上に立つ人は、かならず現場に行き、現場を知ることだ。上から命令だけしていて発展するはずがない。
 見学するうち、ロックフェラーは、一人の工員に目をとめた。彼(工員)は、一つのカンの封をするのに、それまで「ハンダ十四個」かかっていたのを、工夫して「ハンダ十三個」でできる方法を考えだしたのだという。(=「四十個を三十九個に」との説も)
 たった一個分の節約――。しかし、ロックフェラーは、彼の手をとって、跳びあがらんばかりに喜び、絶賛した。
 「それはすばらしい― 君はじつにすばらしい!」
 その喜び方があまりにも激しく真剣だったので、周囲も、ほめられた本人も、びっくりしてしまったという。
 しかし、この「工夫を大事にする」「小事を大事にする」精神があったればこそ、ロックフェラーは大事業を成功させたのである。
 また、この逸話は、「人をほめる」ことの大切さも教えてくれる。「人を怒る」ことばかり考えているのは愚かな指導者である。
 先生方も、生徒に「いいこと」があれば、心の底から、ほめることである。「自信」をもてば、その人の可能性は、いくらでも引きだされていく。
 将来ある諸君のため、人生を勝ちぬくための”知恵の言葉”を、いくつか語っておきたい。
 まず――
 「経験の示すところでは、成功するかどうかはその人の能力より情勢に負う所の方が大きい。自分の仕事に身も心も捧げる人間こそ勝利者となる」(ドローシー・カーネギー編『カーネギー名言集』神島康訳、創元社。以下、引用は同じ)
 イギリスの社会活動家チャールズ・バクストンの言葉である。わずかな才能の違いよりも結局、情熱の人かどうかが人生の勝敗を決する。
 そして「勝利者」とは、自分が楽をし、人を踏みつけにして、いばっている人間ではない。それは人間としての敗北者である。大目的に身も心もささげゆく人こそ、それ自体、勝利の姿なのである。
 また、アメリカの思想家デール・カーネギーの言葉にこうある。
 「世界の大偉業の大半は、もはやこれで絶望かと思われた時にも、なお仕事をやり続けた人々の手によって、成し遂げられた」
 もうダメか――そういう窮地になっても、絶対に仕事をやめない。「かならず勝つ」と決めて戦い続ける。そこに、私どもの「奇跡」とさえいわれた大前進も生まれたのである。
 電球や蓄音機を生みだした”発明王”エジソン――。
 「ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイディアを考えるのは不可能だという所まで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに」
 もうこれ以上できない――そこでやめるか、「いよいよ、これからだ」と立ち上がるか。このわずかな「一念」の差が、人生の大きな分かれ目になってしまうのである。
4  「自分の弱さ」以外に「障害」はない
 さらに、アメリカの詩人ロングフェローの言葉。
 「辛抱すればこそ、成功が得られる。長い間大声で扉を叩き続ければ、必ずだれかが目を覚まして開けてくれる」
 いったん決めたら、「続ける」ことである。目標を達成するまで、忍耐し、努力し続けることである。叩き続ければ必ず「勝利の扉」は開かれる。
 最後に、エルバート・ハバードの言葉。アメリカの教育家の名言である。
 「天才とは、絶え間なく努力を続けられる人間のことである。(中略)やる気をすっかりなくさない限り失敗はあり得ない。自分の内部から生ずる敗北以外に敗北は存在せず、われわれが生まれつき持っている心の弱さ以外には、越えられない障害など存在しない」
 結論すれば、人生の勝敗を決めるものは、すべて自分の「一念」である。「心の持ち方」である。
 この「一念」の勝利者こそ、真の勝利者である。
 これらの言葉も、私は全部、実践してきた。そして勝った。
 きょうは本当にご苦労さま。お父さん、お母さんによろしく。またお会いしましょう!

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