Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

創価中学・高等学校第25回入学式、関西… 若き日の鍛えに「栄光」は輝く

1992.4.8 教育指針 創価学園(2)(池田大作全集第57巻)

前後
1  「大いなる希望」を抱いて創価学園に入学された、東京校第二十五期生、関西校第二十期生の皆さん、本当におめでとうございます。皆さんは、私の誇りであり、希望です。この学園に勇んで集ってくださった皆さん一人一人を、私は創立者として、最大の礼をもって歓迎いたします。
 きょうは重要な用事があり、どうしても出席することができず、残念でなりません。しかし、私の心はいつも皆さんと一緒です。これからの三年間、また六年間、何度も皆さんとお会いし、語りあえることを楽しみにしております。
 私は先ごろ、エジプトの二人の識者とあいついで会見し、エジプトの文化的伝統や古代王朝の歴史などをめぐって、友情の心かよう語らいをかわしました。
 有名な「十進法」や、「太陽暦」など、エジプト文明は、五千年の時を超えて現代に光を放っています。その輝かしい歴史を後世に残し伝えたのは、無名の「書記」たちでありました。彼らは、ちょうど皆さんと同じ十代のころから、徹底した「鍛え」の日々を送りました。先輩について、複雑な文字の暗記や文章の暗唱、筆写などの厳しい訓練に明け暮れる毎日でした。古代エジプトの文字は複雑な形で、細かく分けると三千字近くもあったといいます。それらをすべて覚え、読み書きできるようになるには、たいへんな努力が必要でした。葦のペンを使い、パピルスの巻き紙に、一文字、一文字、丹念に書き写す作業を粘り強く続けました。太陽の王国エジプトの「栄光の歴史」を残したのは、若き日より自分を鍛えぬいた俊英たちだったのです。
 この古代エジプトの書記の像が、現在、パリのルーブル美術館にあります。あぐらをかいて座り、ひざの上に紙を広げ、ペンを構えて鋭く前方を見つめている。集中力と気迫に満ちた姿は、仕事にかける「使命感」と「誇り」に輝いています。ところが、この書記たちが書き残したエジプト文明も、その本当の姿は、後世の人々に長い間、知らされませんでした。古代エジプトの文字であるヒエログリフが、解読されていなかったからです。
 古代文明の英知は「謎」に包まれていました。その一扉を最初に開いたのが、フランスの「エジプ卜学の創始者」、シャンポリオン(1790年〜1832年)です。幼いころから考古学に興味をもっていたシャンポリオンは、十代前半のある日、エジプトに詳しい学者の家で、はじめて、ヒエログリフのきざまれた石板に出あいました。夢中になって見いりながら、「これは読めるのですか」と、シャンポリオン少年はたずねました。学者は、首を横に振ります。少年は「では、ぼくが読みます!」「ぼくが大きくなった時に!」と、確信をこめて言い放ったのです。
 そして、彼は、アラビア語、シリア語、カルデア語、コプト語等、エジプトに関係のあるあらゆる言語を勉強しました。古代文明の解明という壮大な夢を描きながらも、語学という基礎の中の基礎、地道な勉学に、徹底して打ちこんだのです。その道程は、決して順調ではありませんでした。
 努力が認められて得た大学教授の立場も、政変のなかで奪われました。学問の師匠からも見放されました。ライバルたちは、華々しく論文を発表していきます。彼は底の破れた靴をはき、ぼろぼろの上着を着て、寒さに震える日々を送っていたのです。
 しかし彼は、どんな境遇になっても、勉強をやめませんでした。「努力」と「夢」を捨てませんでした。そして、ついにシャンポリオンは、完璧なヒエログリフの解読に成功したのです。「ぼくが読みます―」と叫んだ日から、二十年の月日がたっていました。
 ヒエログリフの文字は、「意味」を表す場合(表意)と、「音」を表す場合(表音)の両方に使われます。シャンポリオン以前の研究者たちは、表意か表音か、このいずれかしかないと決めていたため、行き詰まっていました。シャンポリオンは、語学の基礎があったので、古い先入観に左右されませんでした。そして、誤った学問の伝統を、堂々と打ち破ることができたのです。
 解読成功から六年後、シャンポリオンは、はじめてエジプトを訪れました。そこで実物のヒエログリフを調査して回りながら、「自分の研究は正しかった―」と、あらためて確信したのです。彼は、この旅の四年後、四十二年という短い生涯を終えましたが、青春時代の努力を「勝利」で飾った人生の最終章は、彼からはじまる「エジプト学」の発展とともに、不滅の輝きを放ち続けています。
 エジプトの文化を後世に残した書記たち、その英知を未来へと開いたシャンポリオン。ここに共通するのは、いずれも皆さんと同じ若き日に、徹して勉強しぬいたということです。一面、地味で単調な「努力」の積みかさねによって、「古代の英知」と「未来の人類」とを結んだのです。
 古代エジプトのある賢者は「富を得ることは幻の場合もある。しかし正義の力は永遠である」と、息子に語りかけました。マハトマ・ガンジーは「数の力は臆病者が喜ぶところである。勇敢な人は、一人闘うことを誇りとする」と、戦いました。そして、創価教育学の創始者である牧日常三郎先生は「悪人の敵となりうる勇者でなければ、善人の友とはなりえぬ」と言われています。
 皆さんは、この創価の学舎で、若き自身を鍛え、勇敢に一人闘う正義の勇者になってください。
 皆さんとお会いできる日を楽しみにしつつ、私の祝福のメッセージといたします。

1
1