Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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(二)  

小説 青春編「アレクサンドロの決断」他(池田大作全集第50巻)

前後
7  なんだか心が落ち着かない――どういうわけなんだろう。なぜ、こんなに息苦しいのだろう……。
 剣司には、わかっていた――黒雲がかぶさってくるような、このいやな気分が、あの紅白試合での竜太との一件から始まったことを。それが時を経るにしたがって、ますます大きくふくらんでくる。
 はじめは、小さなしこりであった。これは気のせいだと、自分で打ち消すこともできた。ところが、日がたつにつれ、だんだんとふくらみ、もはやごまかすことのできないほど大きなものとして剣司にのしかかってきた。
 大声で笑っても、心のすみではそのしこりの存在を意識している。うれしいことがあっても、素直に喜べない。そんな自分を、剣司はどうすることもできなかった。
 剣司は、あせっていた。早く自分の心をすっきりさせるのだ。そうしなければ、自分のほんとうの力が出せそうもない。
 一週間後には、パブリック・スクールの少年たちとの試合をひかえている。それまでには、なんとしても、もとの自分をとりもどさねばならない。
 そのためには、なにをしなければならないか――それも剣司には、よくわかっていた。
 竜太だ! 竜太に、あのときのことを、正直に、包みかくさず打ち明けるのだ……。そして……そして……。
 これまでにも何度か、そのように思い立ったことがある。しかし、なかなかきっかけがつかめず、うやむやになってしまった。
 だが今度こそ、きちんと竜太に謝らなければいけない。しかし、いつ……どこで……どんなふうに……。
 その日の最後の授業が終わるまで、剣司はひたすらそのことを思い悩んで、勉強にもほとんど身が入らなかった。

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