Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

(五)  

小説 青春編「アレクサンドロの決断」他(池田大作全集第50巻)

前後
7  三十二歳の詩人アンドレ・シェニエが、その前途多い命を断頭台に絶ったのは、一七九四年七月二十五日のことであった。
 それから、わずか二日後、いわゆる「テルミドール九日」の政変が起きた。すなわち、議会は全会一致で、ロベスピエール派の逮捕を決定したのである。翌二十八日、ロベスピエールら二十二人は「暴君を倒せ!」と叫ぶ群衆の目の前で、断頭台の露と消えている。
 ただちに、旧時代の多くの政治犯の身柄が自由になったことは、言うまでもない。
 暗い牢獄の門から明るいパリの街通りへと、喜々として生還する彼らの姿があった。
 もし、シェニエがあと二日、獄中に生きながらえていたなら――。
 もはや永遠に埋めることのできない歴史の空白――。
 否、それは、いかなる空白といえるだろうか。一人の詩人の命は、更に生き続けられたであろう幾歳月の空白を優に越え、ロマン派詩の新しい時代を出現させた。
 その詩の琴は、今日もなお美しい命の調べを奏で続けている。
 そして、少年ルネは――?
 ルネは、永遠の少年として、今も生きている。
 どこに?
 ルネが最後にシェニエの姿を見たその日の青い空のように、澄みきった世界中の大空のもとで、未来をめざす全ての少年達の心の中に生きている。

1
7