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日蓮大聖人・池田大作

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永遠の都  

詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)

前後
1   
 ひとときのやすらいもなく
 鋭い軋みの音を立てながら
 歴史の轍は回転する
  
 神聖と美の
 ローマ――
 憧れの王都
 多感な若者の魂を踊り狂わす
 太陽の帝都
 あらゆる時代を超えて不滅に光る
 西方の文明ひかり発祥ふるさと
 それは
 来たるべき世紀の理想の中心地
 永遠の都!
  
 私は知っている
 かって この新しき都で演じられた
 悽愴せいそうなる ある戦いのドラマを――
  
 すべてを眼底に収めながら
 冷い寂寥を漂わせてねむる
 古都の石壁
  
 その血のくすみたる色から
 その破れ裂けた隙間あわいから
 血なまぐさい興亡の叫喚と
 悲しげな無告の歔欷すすりなきが聞こえる
  
 落日の都を染める 革命の烽火のろし
 古き体制の王座を揺るがし
 正義の道を開かんと
 黎明よあけの挑戦の号砲
 再発見の歴史の軌道を進みゆく
 熱狂と騒然のなかに
 確かなる人間真実の詩をうたいながら
 民衆の都への蘇生のために
 非難と戦い 革新に生きぬいた
 二人の劇的な親友とも
2  数奇なる星の下で
 波乱の運命さだめをこえて
 ひとり孤独に挑む青年ロッシ
 わが児を敵の砲弾に失い
 みずからは獄舎に囚われながら
 盟友を信じきりながら
 昂然と散り去った信念のブルーノ
  
 彼ら二人の苦闘の持続のなかから
 終に民衆勝利の
 激しい凱歌はあがった
 その勝利の声に敬礼する人は多い
 しかし そこに流れた
 数多あまたの罪なき群衆の赤き血のために
 一人の孤独者として 私は
 栄光に隠された悲劇の弾痕に哀悼したい
  
 革命とは 時代の亀裂に轟く
 やむなき憤怒いかりの爆発と言ってよい
 そして 古来
 耐えに耐え 慟哭を包みながら
 大いなる変革の車輪の下に
 尊き生命いのちを砕き散らしたのが
 歴史の流転の法則であったのだ
  
 平和革命に走るロッシは
 暴力を否定した
 かれはアナーキストではない
 人間主義を至高の権威としながら
 すべての人間群が相擁あいようして生きる
 人間家族の幸福と
 人間共和の繁栄を夢みたのであった
3  その重荷を背負った勇気と熱情
 その強烈に叫ぶ日々の闘い
 ああ しかも――
 生々とした歴史は
 血に飢える虎の如く
 かれの夢想を無残にも蹴散らすのであった
  
 時は去り
 時は移り
 いま われらは
 現在の血によって
 永劫の憂苦を民にのこす
 未来の福祉という むごい美名の宿命論を
 絶対に許すまい
  
 無気力な現状肯定の道か
 また 流血の革命の道か
 われらは
 その二律背反を止揚したいのだ
  
 われらは目ざす
 自身の限りなき苦闘の決意を秘めながら
 一人の犠牲をも需要しない
 無血にして悠遠の革命の方途みちを選ぶ
  
 われらも戦う
 先駆するロッシの如く勇遁に
 愛するブルーノの如く誠実に
  
 われらは甘美夢幻の栄光を斥ける
 安逸のみ欲する幻影の都
 蜃気楼の建築を反復したくないのだ
4  それはさらにけわしく
 さらに厳しく
 さらなる忍耐を強いるにちがいない
  
 われらは いま
 仮有けうの都 諸行無常のまちより出でて
 本有にして常住の都を構築したいのだ
  
 自由の館に君と語り
 平和の鐘が鳴り響く
 民主の庭に友は舞い
 幸福さちの園に子は歌う
  
 人間と人間とのあいだに
 心と心とのあいだに
 そして 心奥の深みに
 なべて人の肉団の王国に
 牢固にして真如の都を築きたいのだ
  
 この現実うつつの都に至るには
 坦々たる平道みちはないだろう
 その王門を開くには
 特権の入場証はないだろう
 そこには 今日も また明日も
 苦闘という晴れがましいマークを胸に
 徹底的に汗を流して戦いぬく者のみが
 華やかなる堂々の凱旋をするに違いない
  
 新天地の都を荘厳するのは
 ぜいたくに着飾った
 高貴な人たちではない
 胸中に錦をまとうた
 強靭にして平凡な
 庶民群であることを忘れまい
5  いつしか大廈たいか高楼も
 風雪の試練に朽ちていく
 重畳とした歴史の砂塵は
 無慈悲に埋没させてしまうにちがいない
  
 われらは築きたい――
 累々たる瓦礫の真っ只中から
 万年につづく
 燦然と輝き残る
 崩れなき永遠の都を
  (1971.11.4 ホール・ケイン『永遠の都』を題材)

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