Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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雑草  

詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)

前後
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 彼は生きる
 羅列して 緑の素肌のままに
 強く生きる
 秋霜にも慄えず 不撓の意思と
 天性のしなやかな反発力をもって
 かれは愉快に生きぬく
  
 かれは生きる 貪婪に生きる
 かれには陰気など さらさらない
 母なる大地の活源に
 相呼応しながら
 自らの友を増幅して生きぬく
  
 天上の光に 乱調子に生きる
 地底の露源に感謝しながら
 静かに生きる
  
 かれは自己の環境と峻烈に戦い
 自らの環境を自在に楽しみ
 日々充実の生を刻み続ける
 干天と強風と豪雨と
 朝露と夕焼と満天の星座とともに
 かれは歌舞しながら生きる
  
 炎熱はかれを否応なしに苦しめる
 一滴の水が珠玉と映る渇きとの
 ひたすらな戦い――
  
 嵐は俄然 かれを抹殺しようと狂う
 しかしかれは 地表に揺れ動きながら
 昂然と胸を張る
  
 糠雨は かれを洗い落とそうと攻めたてる
 前列も後列も浸されながら
 熱怒せず かれはそれをはね返す
2  試練という波が易しかろうはずがない
 生死をかけた忍耐の持続
 ただ不屈の反抗だけが全てを越えさせた
 敗北を知らぬ彼
 旺盛なバイタリティを漲らす彼
 ――そして 変わらぬ笑顔の彼
  
 砂漠さえ かれには浜辺
 泥濘さえ かれにはオアシス
 荒野こそ かれが望む楽園!
  
 やがて かれに訪れる
 安らぎのひととき――
  
 朝露は優しく目覚めを呼びかけ
 小鳥は天空につづみを打ち
 日のかがやきは草原に満つ
  
 紅の夕日はかれを彩り
 地平の彼方へ別れを告げる
 一日の労働をほめたたえながら
 かれは端座して瞑想にかえる
  
 銀河の流れ天下りて
 かれと夜毎に夢を語り
 千変の歴史と万化の人生を
 無情薄幸と憂慮うれうる
  
 ――この小さき生命の醒起を
 だれが知っていよう
 だれが心で会釈しよう
3  かれは温室を知らない
 植木鉢の退屈も欲しない
 展覧会など眼中にない
 かれは鑑賞もされない
 摘まれもしない
 まして買われることもないだろう
  
 しかし聞きたまえ
 屈託のないかれの独自を
 その強烈な自負と誇りを
 虚飾も そして人工も
 生きるという至上の価値からすれば
 それらは幻影にすぎぬ と
 かれは打ち震えながら叫ぶに違いない
  
 あの煩雑な保護も
 繊細な愛情も
 われには不要なのだ
  
 大風を恐れまい
 孤独を悲しむまい
 宿命を憤るまい
  
 鴬は梅にまかせよう
 月の宿るは松にまかせる
 春雨は柳にまかせたい
  
 無名には無名の
 野生には野生のみの
 使命と開花がある!
 みずからの手で
 みずからの道を開墾する――
 これが わが麗しき
 青い生存の道なのだ
4  喝采のない舞台で
 無償の乱舞と行進の美を
 無限に ひたすらに表現しぬくのだ
 ああ その名 雑草――
  
 汝は何と偉大なのか
 汝は何と逞しいのか
 汝は何と明るいのか
  
 ひたむきに生きる青き友よ
 さあ! こちらへきたまえ
 君のために半座を分かとう
  
 君の辛労を私はじっと見守ろう
 君の躍々たる真実を私だけは讃えたい
 その姿を 私の
 生涯にわたる路線としたいのだ
  
 流れる星を眺めつつ
 君よ 奔放に生きたまえ
 それが正しき道なれば
 本位の要素のままに
 どこまでも君らしく生きるのだ
  
 群生の美
 土着の力
 随縁の智
  
 それは飾りなき庶民の世界
 そして人間群の共和の世界
 それこそ懐しき寂光の世界
5  太古よりの天地に
 限りなく虹を追いながら
 地から湧きいづるがごとき
 生命の力――
  
 かれは楽しみにふけりながら
 きょうも生きる
 強く平等愛に到達して生きる
 羅列して苦行を忘れて
 きょうも生き抜く!
  (1971.10.3)

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