Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

昭和三十年(十二月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

前後
2  十二月十八日(日) 晴
 第四回男子青年部総会。
 場所、蔵前国技館―――。時、一時二十五分開始。一万五千名の同志結集。
 割れんばかりの拍手―――。人々は世紀の総会と喜ぶ。しかし、わが胸は悲し。淋し。苦し。精鋭の一万名でなかったこと。吾が師、戸田先生の、力弱き歩みを見て。
 四時二十五分終了。引きつづいて、部隊長だけで小宴を開く。労をねぎらうと共に、真実の青年部の構想とは、いまだほど遠きことを訴う。
 われも、心ひそかに、厳しき闘争の決意をする。
3  十二月十九日(月) 晴
 戸田先生、お疲れか、お姿見せず。
 われも、身体の調子、再び苦し。淋し。
 来年は、青年部の充実と、機構の改革、訓練に全力をあげよう。
 堀米尊師の講義出席。「当体義抄」。
 教学の徹底的究明ほど、最大事はなし。
 十一時すぎ帰宅。
 妻、非常に美し。
4  十二月二十日(火) 晴
 朝より、なんとなく、あわただしき気持ち。
 男女の総会も終わる。本年最大の行事は、いっさい終わったわけだ。
 午後、会長室にて、I君、H君、F君と四人にて、先生と懇談。第三代会長の事、学会の未来性について、お話あり。
 先生に褒められる人あり、先生に娼びる人あり。
 妙法、信心の奥底は、甘言にて左右しゆくものに非ず。
 夕刻、短期指導の件にて、部隊参謀と打ち合わせをす。青年達の心、清くして、生命、逞し。
5  十二月二十一日(水) 雨後曇
 吉川英治作『宮本武蔵』を再読。小学四年の頃をなつかしく偲びつつ。
 剣の人。技の人。この一念、この心理、この人生修行、この生命の躍動も、現代社会にフィットするなりと思いて。
 六時三十分より、先生と共にRにて、銀行招待のため、会食。
 十時すぎ帰宅。此の一星霜のことを、種々念う。
 反省、勇気、高杉晋作、同志、先輩、そして、未来、十年、二十年先の吾が人生を。
6  十二月二十二日(木) 晴れたり曇ったり
 M重役より、ネクタイ戴く。ありがたい。先生亡きあと、生涯護りゆく人、戦いゆく人が自然に決まっていくようである。
 先生と、丸半日ご一緒。
 先生より指名された人物論を読むことにする。
 先生の御身体の具合、悪しき様子。先生は「『説己心中所行法門』を色読できるなり」と笑う。
 先生の日く「大ちゃん、人生は悩まねばならぬ。悩んではじめて、信心もわかる、偉大な人になるのだ」と。
 われ、わが浅はかなるを恥ず。
 夕、妙光寺―――。三部隊誕生式に出席。
 本年最後の指導として、十時まで、真剣に指導をなす。
  友が憂いに吾れは泣き
  わがよろとびに友は舞う
 を口ずさみながら、同志と、駅に向かう。
7  十二月二十七日(火) 晴
 小春日和を思わす一日であった。
 十時東京発「玄海」にて、総本山へ。先生と共なり。
 霊鷲山に似た、荘厳なる富士大石寺。信心のみに八年半。信仰ということを、やや知得。
 咋二十六日月曜日は、第二の学会の柱、I君、Z君、U君、K君、H君、M君と共に、先生宅に集まる。三時間余にわたり、指導あり。厳、そして暖に。
 ネールも、周総理も、蒋介石も、いずれは総本山に呼ばねば、また世界の、次代の指導者たちも―――。アジアを指導するは君等なりと―――。雄にして大の指針あるなり。
 心身共に、疲れゆく。
8  十二月二十八日(水) 晴
 今年も、はや、あと数日。
 人生の花、二十代との決別も、一年ごとに近くなる。淋しく、未来を憂い、社会の厳しさ、交錯すること多々。
 若い。まだまだ若い。自己を鍛え、磨かねば。(1)読書 (2)書くこと。
 夜、忘年会。九時すぎまで、友と歌い、そして舞う。
 二十七歳も、あと三日か。三年後には三十代に。運命の人、多感の人、青年の前途は、何が待っているか。
 性格は運命なり、といった哲人がいた。
9  十二月二十九日(木) 晴
 暖かな一日であった。気分爽快。嬉しい。
 夏季闘争の功徳なりと、しきりに思う。
 色心不二ということを、深く思索し、実感し、自己を本物にせねば。
 真実とは、と考える時がある。変転極まりなき人の心。真実の基準とは、と考える時がある。複雑、変動の社会にあって。
 六時三十分より、参謀会議、本部にて。楽しい会議であった。皆よく戦ってくれた。来年も、この調子で進みたい。
 帰宅後、三人の友来る。来年は、人生の栄光の年にしようと語る。
10  十二月三十日(金) 晴
 春暖の如き陽気。
 近年にない、安定しきった年末。感激少なきともいえるか。
 自己は、激動が好きのようだ。静かに、平凡に暮らすことは苦痛のようだ。身体が弱いのに。自由奔放に、大空に羽搏はばたくのが、最も適した人生であるらしい。
 しかし思う。英知で、人の本質、社会の動向、世界の未来を、じっと観察することも大事なりと。
 二十七年を反省する。よくここまで進んでこられた。幾度か累卵の如き、人生の多かったことよ。
 謝す妙法、師、両親、友人―――。
 身体だけは、何とか丈夫にせねば。広宣流布の、その日まで生き抜きたい。
 夜、文京の最後の会合へ行く。機嫌悪く、みんなに非常に悪いことをした。反省。
 自宅まで、タクシー。
 静かな、吾が家。質素の中に、尊い幸福が輝いている。どの部屋にも、花がさしてある。心暖かし。

1
2