Nichiren・Ikeda
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昭和三十年(十一月)
「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)
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2 十一月二日(水) 快晴
一時より、後楽園スタジアムにて、総会の予行演習を行う。
中心になって、種々、指導、指揮をとる。皆、疲れている感あり。多忙な中、済まぬ気持ち。幹部が皆、後輩を、大事にしていくことだ。役職や、組織のみで、左右することは、危険であり、禁ずべきだ。人間性を、第一義にすべきである。
特に、旗手の人々に、何かしてあげたいと考える。自分に、金がなく、何も出来ず、淋しい思いであった。
四時終了。M君、H君、Y君、及び部隊長級と、散歩しながら帰る。
本部へ、先生に、お目に懸りに行く。一時間ほど、指導賜る。
蒲田駅前にて、妻と時間を約束したことを、二時間以上も忘れ、叱られる。
夜遅く、Y夫妻来る。家屋の事であった。複雑な人である。T部長来宅。楽しからず。
3 十一月三日(木) 晴
待ちに待った、秋季、第十三回総会。
菊花かおる晴天。
創価学会も、最早、日本の潮である。
激浪に進みゆく、力強き、大総会であった
九時二十分、後楽園の会場へ着く。
七万の同志の顔は、紅潮し、歓喜を包んでいる。見事なる前進、躍進の学会、新時代の潮。
瞬間の姿でなく、限りなく永遠に発展しゆく、因であることを信ずる。
新聞社、報道関係、警察関係、百人を超える。渉外部も、忙しい。
僧侶、約八十名。最高に集合の員数とのこと。未来、幾百、幾千人の、僧侶の巣立つことを期待する。さなくんば、広布の達成はあり得ない。
十二時、劇的な、入場式に移る。
「日本男子の歌」「憂国の華」「学会の歌」の順に、参謀室、男女部隊旗、部隊長、本部旗、会長、理事、支部旗、支部長の順で、中央壇上に向かい行進。
新しい足音。新しい感激。新しい思潮。新しい人間性。―――
参謀室、初めて、壇上に席する。
一歩、我等の指揮とる時代に入るのを、胸奥に感知する。
″仏勅実現の日まで″
御本尊様にお尽くしするに、何の遠慮があるか。何の卑屈があるか。
師子の子よ、吼えろ、
師子の子よ、進め、勇然と。
N園にて、二次会あり。
司会をする。―――疲れた。
今朝、先生より、直々に、お電話にて、総会を記念し、和歌を戴く。
三類の
強敵あれど
師子の子は
広布の旅に
雄々しくぞある
師子王の
雄叫び聞いて
奮い起つ
広布の旅の
子等ぞ勇まし
雄々しくぞある、は、雄々しくぞあれ、か、又は、雄々しくぞ起て、の方が、吾等としては、宜しいと思う。
4 十一月四日(金) 快晴
午後二時。
理事長と共に、警視庁へ行く。
昨日の総会、警備の御礼旁、挨拶。
S係長、S次席、K課長に面会。
S係長の日く「恐ろしき力になり、驚いた」と。
S次席は、高慢な態度で、注意する。末端の事、選挙違反の事等。
K課長には、典型的な官僚臭あり。医師法、不敬罪、共産思想の侵入を恐れ、注意している、と。
学会の本質も知らず、見おろしての言葉に、反発を強く感ず。勇ましく戦って帰る。
先生の友人? K氏と語る。二時間ほど。不可思議な、注意すべき人物と思う。
一、先生を、表面は尊敬しているようでも、心底は、小馬鹿にしきっている。
一、身延など、会長のいう如く、決して、滅びることはないとの事。
一、金銭を、利用出来ねば、側に行く必要なしとの事。
人の心、恐ろし。鳴呼。
「観心本尊抄」講義。六時半、本部にて。
教学、仏法の真髄は、本尊論にあることを、痛感する。
5 十一月五日(土) 快晴
午前中、在社。
身体疲れてならず大事にせねば。
六時三十分、本部講義。
「顕仏未来記」終了。
講義は、
一、熟読すること。
二、明確に、解釈すること。
三、理論的であること。必ず、体験を通し、幅広く講義をなすこと。
終了後、Kさん等、三人して、Bにて、夕食。
仏法は体なり、世法は影なり―――と。真実の体とは、強き、強き、信心に尽きるか。真実の体を、確立しきるために、一生涯、自分らしく、若い人らしく、歩もう。魔風魔浪に、流されぬように。
帰宅、十一時を過ぎる。友、数名来ている。
6 十一月六日(日) 晴
日曜日は、いつ、先生より、電話連絡あるかも知れぬ。自宅に、午前中、待機する。
青年部員、十数名来る。第一部隊、世田谷地区関係の人々。
人材が欲しい。人物が足りぬ。
私の指導法を、よくよく反省してみる。
一、指導は、明確にして、焦点をつかむこと。
二、指導は、何を指導するのかを、即ちその目的を、示すこと。
三、指導は、所詮、慈悲を持ち、確信に満ちて、為しゆくこと。
二時少々過ぎより、家中にて、多摩川園に遊びに行く。
四時頃まで、思う存分、子等と共に遊ぶ。
途中で別れ、常在寺の座談会へ。久し振りの座談会であった。而し、一日の内で、一回、何等かの学会行事に出る事が、絶対必要であると痛感する。
苦悩。当然、求道者にはあろう。反面、早く、天真にして、大空に飛び、独朗にして、闊歩しゆく、人生になりたし。
蒲田駅西口より、妻と共に帰る。途中、お好み焼き―――。詩情多々。
7 十一月七日(月) 高曇
身体の具合芳し。
休息も大事、行動も大事、共に、健康には。
先生と、奥様と三人して、種々、将来の、社の在り方等で打ち合わせ。
夜、中野桃園会館にて、二級講義。
『折伏教典』の、生命論に入る。自分としては、気持ち良く終了したと思う。事前に勉強することが、大事。帰り、N支部長宅へ寄る。
刻一刻と、寒さ増す。
湯タンポを入れて休むとは、若いくせに、困ったものだ。
8 十一月八日(火) 曇後快晴
長谷川如是閑の話。″貫録とは、頭に非ず、才に非ず、その人、本性の人間性なり″と。
けだし、一切の根本の解決、革命は、妙法による以外になかろう―――。
精進根も、念根も、定根、慧根の確立も亦、これ、最大の人間革命の、縮図である。
夜、部隊長会。皆、全く元気なし。
疲れか、指導者の不得手か、経済的な悩みか。もっと吾等は、掘り下げて、皆を激励し救済する、慈愛が大切だ。
君等よ、伸びのびと進め、歩め。そして、生き生きと、自由の大空に羽ばたけ、と心で祈る。
無駄な神経など、使うな。もっと、大胆に、社会を闊歩し給え、と云いたい。
青年を、窒息させてゆく社会、機構、制度。誠実な青年が、実力に応じて、栄進出来ぬ、本末顛倒の社会。
指導者も悪い。社会も悪い。而し、それらをおしのけて起ち上がらぬ、青年も悪い。
この解決が、今、吾等が、実践している一日一日なのである。頑張れ、青年よ。
吾等は、君等は、世界最高に、強いのだ。
参謀室にて、I君をまじえ、仏教伝来の話にふける。北方伝説、南方伝説等、議論尽きず。I君の学識の深さを偉いと思う。
T部長。M君等と、新橋にて、やき鳥を食す。一本二十円と思いしを、五十円也と聞き、驚く。計八百八十円也と。持ち合わせがあったので、恥をかかずに済む。
帰宅、十二時三十分。疲れてならぬ。
二、三日、朝、遅刻している。気のゆるみか。
9 十一月九日(水) 快晴
今日も、朝寝坊してしまう。
先生、お元気で、さきに来ておられた。
極まり悪し。
学会のことについての報道、しきりなり。中傷あり、曲解あり、無認識あり―――。
このことで、退転する人もあると聞く。情けない人だ。縁に紛動されて、誰人が、確信をもって救ってくれると思うのか。―――
批判した雑誌や、新聞や評論家が、その救済の結論を持っていると思うのか。
愚や、愚や。
夕刻、社員達と共に、ニュース映画を観覧。自界叛逆の世相に、思うこと多し。
帰り、皆して、すき焼きを食う。実に美味なり。
早目に、帰宅。「大白蓮華」の原稿を書く。
法華経に曰く、
「世は皆牢固ならざること 水沫泡焔の如し」
又曰く、
「以何令衆生 得入無上道」
10 十一月十日(木) 曇後晴
朝の勤行は、最も大事。
一日の勝敗を決し、一日の人生の盛衰をも決する故に。因果倶時の哲理の、実践の上からも。
日増しに、寒し。
二時より、本部面接。人間には、順調、不順等が、誰人にもあると思う。だが、その人に力あれば、その差はないこととなるであろう。
自分の指導力のないことを悔む。
先生は、昨日より、御子息をつれ、登山。本夕、お帰りの予定。
私、最後の一級講義。方便品、寿量品、観念文等、三か月に亘る講義終了せり。毎自作是念。
帰り、支部長宅へ
「末法相応抄」につき、支部幹部及び、女子部幹部と語りあう。
遅く、先生宅に呼ばれる
種々、厳しき指導あり。自身に、強く火花の如く響くなり。
夜中、″人間革命″の詩を記す。
悪業、皆、重々と黒く、
奈落、修羅、又、鬼畜に徨はん、
業、又、業を重ね、感果亦厳しく悲し
此の社会
此の人類
人生の航路、無始たり、宇宙の原動、文、永遠
天に旭日昇り、生命に、若芽の生息始動せり
妙法の力、動源の力
巌をも砕き、悪業をも、霧散せしむ
11 十一月十一日(金) 快晴
今朝は、先生に、お目にかかれず。淋しかった。
私の人生は、激動を欲し、激動に生き、更に、求めて激流に向かい、激浪に向かうが如きなり。
信心とは何か。
社会とは何か。
国土とは何か。
政治とは、経済とは、文化とは何か。
つれづれに、何の気なしに思うことがある。思索も大事。しかし、私は、未完成の自分を、自分らしく、真面目に反省し、猛省して、生涯生きたいと思う。
人に対しては、その人の真価、その人の福運、その人の本質を、見極めるよう努力しよう。そして、その人が、強く、逞しく、少しでも、大善の方向に向かうよう、最善を尽くそう。
金曜講義。先生の大確信、教学の力に、恐れ入るのみ。‥‥この儘、いついつまでも。
帰り、友等と、池袋にて、うな丼を食す。
「佐渡御書」
日蓮を信ずるやうなりし者どもが日蓮がかくなれば疑ををこして法華経をすつるのみならずかへりて日蓮を教訓して我賢しと思はん僻人等が、云云。
牧口先生の、常に、拝読なされた御書と聞く。学会の、大信念の依文なるか。―――
12 十一月十二日(土) 秋晴
いずこに行く処もなき、秋の土曜日。
三時まで在社。
六時、本部。教学部員候補生の講義。「妙密上人御消息」終了。全員真剣。頼もし。
今の学者が、此の古文書を、幾たり完全に解釈出来ることか。今、幾百千万の庶民が、これと取り組んで、生活の源泉としているのだ。尊し、尊し。
週刊誌の文化とは、軽薄この上もない。次の、深く、輝く文化は、必ずや、この大衆を土壌にしたところに、永遠の金字塔の文化が、樹立しゆくことだろう。ああ、第三文明。
今日で、朝の、先生の勉強―――政治学、法律、化学、漢文、天文学、経済学等、終了する。
一生涯、勉強してゆかねばならぬ。生涯、謙虚に。決して、教学に、学問に、慢の人になること勿れ。
帰り、妻と共に、神田のT宅に寄る。帰宅、十二時近し。
家静か。幸福、平和、精進、希望、福運等に、満ち満てり。
13 十一月十三日(日) 快晴
八時起床―――寒い。
先生の御親戚の引っ越しに行く。タクシーにて、妻と共に。堂々たる邸宅である。
夕刻まで、真剣にお手伝いする。夕飯、御馳走になり、失礼する。
梅ケ丘の、京王地区の総会に出席。盛会であった。四十分にも亘る講演をする。
一、仏道修行とは
一、折伏の意義
一、誇りある学会人たれ
概略、以上の内容にて―――
帰宅、十二時。寒い一日であった。
14 十一月十四日(月) 快晴
先生に、お目に懸り、指導を戴く幸せを、泌々と感ずる昨今―――。
朝、「依義判文抄」の講義を、お願いする。
文段、六巻抄の大事を痛感する。此の三か年において、勉学、徹底せねばならぬ。
本部―――五時三十分。
先生と、新任部隊長のこと、地盤(編注・翌三十一年の参院選)のこと等について、お話しする。
六時三十分より、参謀会議。
一、第一部隊の編成の件
二、総会の運営問題
三、予算の件
四、来春の参院選への対策
九時少々すぎに、終了。
帰り、S理事、T部長、自宅に来る。
心身共に、大事にせねば―――。自己を反省し、教学を研鎖し、そして、これからの大切な戦いをせねばならぬ。