Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十七年(十二月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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1  十二月五日(金) 快晴
 二十七年の師走に入る。この一年、何と思い出多き、一年であったことか。
 十時帰宅。天空に皓々と輝く寒月は、しばし、激戦の渦中にいることを忘れさせる。激流の心も静止させてくれる。この休息が、如何に明日への、未来への、準備となることか。―――
 色心不二の仏法。この原理が、本年ほど、吾が身に、吾が心に、吾が生命に、痛切に感じられたことはない。むしろ、淋しく、悲しいぐらいに痛感した年はなかろう。
 戸田先生のお身体、非常に悪し。予の健康も、同じく又。‥‥無念なり。
 戸田先生、お身体を、お大事に。私の宿命にも、御本尊の照覧あれ。
 大使命に起ち、闘わねばならぬのだ。
 『新・平家物語』を読む。
2  十二月六日(土) 快晴
 晴れ渡る日の空気は、万金に勝る。
 太陽の偉大なる恩恵を、泌々と感謝する日がある。瞬間がある。
 大自然の運行よりみれば、如何に小さな、人間の葛藤か。政治、社会の動乱か。世間、人類の偏狭さか。
 太陽と等しき宗教。いや、それ以上大なる、宇宙と等しき大宗教。これこそ、日蓮正宗である。この思想、宗教、仏法以外に、末法万年の闇は、照らし得ないのだ。
 二時より、学会本部において、第七回総会の準備をする。K、I、K氏等と私。
 八時終了。勤行をする。九時より十時まで、中大講堂に青年部員十名と共に、最後の設営をする。青年達の献身的態度に、感謝する。
 非常に疲れた。十一時二十分、帰宅
 信ずるものは、大御本尊様以外にない。
 一時、就寝。
3  十二月七日(日) 快晴
 第七回創価学会総会、晴天。六時三十分起床。直ちに、タクシーにて、会場に―――七時三十分到着。
 九時十分、歴史的な開会。中央大学講堂を埋めた数、約五千人。司会、小生。
 三時四十五分、成功裡に終了。続いて、宴会に移る。
 帰り、今日を記念し、妻に、マフラーを買う。
 久しぶりで、風呂にゆく。一人、風呂の中で、学会の未来を考える。
 戸田先生、何となく、お元気なし。心配である。―――
 就寝、一時半。
4  十二月八日(月) 晴後薄曇
 身体の具合、良好。
 立宗七百年、最後の戦いを飾ろう。
 夕刻、S氏と会う。共に、矢口のS宅にて、十時より一時間、すき焼きを御馳走になる。美味満点。
 本年も、あと二十有余日。立派な年を迎えるため、立派に、この年を送りたい。
 来年は、二十五歳の、最も華やかな、活動すべき年齢を迎える。本年も、三障四魔との戦闘の連続であった。而し、本年は、立派に勝ち通した。来年も、そうでありたい。
 漢詩を、少々読み、床につく。
  滔滔逝水流今古  滔滔たる逝水 今古に流れ
  漢楚興亡両丘土  漢楚の興亡 両ながら丘土
  当年遣事久成空  当年の遣事 久しく空と成れり
  慷慨樽前為誰舞  樽前に慷慨して 誰が為にか舞わん
  
  一穂寒燈照眼明  一穂の寒燈 眼を照らして明らかなり
  沈思黙坐無限情  沈思黙坐すれば 情限り無し
  回頭知己人己遠  頭を回らせば 知己 人己に遠し
  丈夫畢竟豈計名  丈夫畢竟 豈名を計らんや
  世難多年万骨枯  世難多年 万骨枯る
  廟堂風色幾変更  廟堂の風色 幾たびは変更す
5  十二月九日(火) 雨一時霙(初雪)
 午後より、雪となる。寒い一日であった。自然の、雨、嵐、雪―――生命の中の、雨、嵐、雪、―――皆、人生試練の劇である。
 大宇宙も十界。吾が生命も十界。故に、世界に恐れるものは、ないはずである。
 埼玉の川越地区へ講義に行く。八時終了。
 T氏と、二十分程懇談。
 十時近く、戸田先生宅に伺う。奥様と一時間程話す。
 戦後、革命という言葉は、実に多く使われて来た。一種の流行語にさえなった。而し、人間革命という言葉は、実に意義がある。所詮、その革命、即ち、宿命打開は、信仰以外なきことが、わかって来た。
6  十二月十日(水) 曇
 暖かな一日であった。仕事順調なり。
 十一時三十分、おやじの会社にゆく。元気な奮闘に、心から喜ぶ。昼、江戸前ずしを御馳走してくれる。
 午後六時三十分、座談会。場所、川崎市木月。溌剌たる同志の姿に、歓びたえず。五年も、十年も、との元気な姿で、同志が頑張ってくれることを祈りつつ、家路に向かう。
 帰宅、十一時半。
 家庭を持つと、何かと、独身時代とは異なって来る。良い面、そして厄介な面、実に助かる面、そして、自由が失われてゆくように感ずる面。
 個人も幸福に、一家も、精神的、健康的、経済的、生活的、和楽、幸福にさせてゆく真道は、近道は、信心以外に絶対なきことを確信する。
7  十二月十四日(日) 晴
 午前中、寝る。良く寝る、といいたいが、夢、悪夢の連続。結局、疲れてならなかった。
 午後、女房と共に、大森に洋服をみにゆく。夕刻より、矢口にゆく。幹部達と種々打ち合わせ、会談をする。
 明日より、本年最後の、総仕上げにかかる決意をする。学会活動も、社の方も。
  一、緻密なる、企画性
  一、整然たる、企画、運営
  一、闊達なる、行動力
  一、撓まざる、前進
 思うこと多し。大志を抱く若人の胸には。
 『新・平家物語』を読む。興味津々。
 就寝、一時半。―――
8  十二月十六日(火) 雨
 六時より、水滸会。
 集合人員、会長、筆頭理事、指導部長、各部隊長、幹部室、班長代表各五名(各部隊)なり。
 『水滸伝』の序文を読み、先生、水滸会の意義、使命、確信を述べられる。此の座に集いし数、三十八名なり。
 宗教革命、政治革命、社会革命を断行しゆく鳳雛である。皆、闘志満々たり。意気天をつく。確信と勇気は、大洋をも動かさん。頼もし、頼もし。十年後の姿が、目に浮かぶようである。
  一、勉学に励むこと
  一、一芸に秀でること
  一、勇断なる活動をなしゆくこと
  一、思慮、果断の将たること
 仙台支部歌を、声高らかに歌い、九時散会
9  十二月十七日(水) 曇
 暖かな一日であった。頭が痛む。
 三越に買い物にゆく。実家その他の、歳暮のため。
 七時、R部隊の会合に出席。総数、八十名。盛会である。一日一日、青年部の成長が為されている。広布の礎、学会の柱は、青年部をおいて断じてない。
 人に認められようとするな。汝自身の行動は、御本尊様に見て戴くことだ。予に悔いなきや。ある―――大いにあるなり。これを如何にせん。
 十一時、帰宅。『水滸伝』を読む。
10  十二月十八日(木) 快晴
 いよいよ、歳末の気分も、緊迫感を帯びてきた。京浜デパートで、お歳暮の品を求め、S宅、K宅に挨拶にゆく。夜、戸田先生宅に御挨拶にゆく。一時間ほど、種々の指導を賜る。
 S紙、頑強に、学会誹謗に食い下がる。中傷記事、はなはだ悪質。吾等、怒り心頭に発す。
 数名にて、談判に行くことを決める。
 我が学会が、正しく、仏勅を蒙りたる教団なりしを、弥々覚知する。他の教団は企業であり、折伏はなく、ひたすら、金銭で自らの弱味を、カバーするのみ。学会は純粋である。権力や、財力や、悪や、魔に、絶対、妥協しない。故に、魔力が仏の生命を奪わんと働くは、仏法の定理である。
 先生を護ろう、力の限り。先生を護ろう、吾が生命のある限り。理由は、唯一つ、先生を護ることが、大御本尊流布を護ることに通ずるからである。師弟の道、師弟不二。人類最高の道を、私は、真っしぐらに進むだけだ。戸田先生の偉容が、胸臆から離れぬ。瞬時たりとも、私には。―――
 『水滸伝』を読む。就寝、一時半。
11  十二月十九日(金) 晴時々曇
 厳しい一日であった。
 S新聞との、闘争の火蓋を切った。
 三時より、本部参謀会議。H、K、B、T、U、H、I、R、及び小生が集合。五時三十分終了。後、青年部幹部打ち合わせ会。
 七時、講義を受講にゆく。「当体義抄」。
 講義終了後、各部隊五名の調査部員を集め、種々指示を与える。
 T、U部長等と共に帰る。
 洋服、一二、〇〇〇円にて購入する。
 信心。この信心の確立に一生を送ることだ。これが人生の目的であっていいのだ―――永遠の生命からみれば。
 隣人は批判する。だが、人生の根本問題は、誰人も教えてくれぬ。この根本問題だけは、人に聞く必要のないことだ。ただ、日蓮大聖人の教え通りに実践しゆくことが正しい。
 来年は、更に信心に励もう。実践に進もう。教学に徹してゆこう。青年の面目をほどこそう。
 『水諦伝』を読む
12  十二月二十一日(日) 霧
 薄ら寒い日曜であった。
 正午まで眠る。
 T氏来る。実に可哀想だ。而し、どうすることも出来ぬ。信心をすすめることしかない。私には。―――
 六時、調査部員、本部に集合す。前進だ、前進だ。情報網の樹立を急ぐ。
 八時三十分、先輩、同志等と、すき焼き会を催す。自宅にて。皆、よく食べてくれた。肉も、御飯も、全く足らなくなったとのこと。
13  十二月二十二日(月) 快晴
 七時、本年最後の地区部長会。於本部。並びに忘年会。全く面白からず。
 青年を大事にする先輩は少ない。否、いない。自分のことで、精一杯なのか。
 先生なきあと、各先輩が、次期の人材を育てることを忘却したら、広布の総仕上げは出来ぬことを反省して貰いたい。信心にかこつけて、尊敬されゆく役職を、私は心配する。
 十一時三十分、帰宅。
 幸福は、財のみに非ず。快楽に非ず。名誉のみに非ず。所詮、信心による仏界の湧現に尽きるのだ。
 活動、実践、行動の永続するところに、その達成があるわけだ。
 就寝、十二時半。
14  十二月二十三日(火) 晴
 暖かな一日であった。
 先生、お元気を取りもどされる。
 先生、私があれば、御心配なく、御静養下さい。
 I氏は、良き先輩である。大人の器なり。護ってあげよう。
 二時間ほど、自宅にて休み、七時から、支部幹部会に出席。集合人員二百名。本尊流布、四百三十世帯。実に驚異的発展の姿である。来年度は、未曾有の五百世帯は、悠々であろう。
 今年の戦いに、思い残すことはなかった。良く戦ったと思う。自己満足でなく、慢心でなく。―――
15  十二月二十四日(水) 曇
 T氏、御本尊を戴く。信心以外に、この人を救う道なし。可哀想でならぬ。私にとって、生涯忘れられぬ人なれば。
 本部幹部会。七時に、妙光寺よりまわる。
 終了後、G氏の御本尊送りに、数名にてゆく。謗法払いに、晴ればれとした、おばあさんの姿が、胸に残る。
 戸田先生、常に親類、兄弟のことを心配して下され、ただただ胸がせまる。
 起とう。進もう。青年闘士らしく。自己の胸に、そして、人類に、勇ましく、暁鐘を打ち鳴らしゆこう。
16  十二月二十五日(木) 曇
 T氏、朝来る。真剣そのもの。―――
 立宗七百年も、残りは数日となる。常に来年のことを思う。今日も思う存分働く。今日は生活費、逼迫す。全く、金欠病となる。
 R部隊の指導会に出る。青年の元気な姿を見て、心から喜ぶ。
 職場も、革命も、組合も、時代も、政治も、教育界も、科学界も、すべて、青年を味方にせずして勝利はない。青年を味方にするか、敵にするかが、すべての戦の鍵である。勝利の鍵である。
 十一時三十分、帰宅。
 個人にも、家庭にも、社会にも、世界にも、様々な問題がある。而れども、死以上の重大問題は絶対にない。
 身体の具合悪し。口をきくのも億劫なくらいである。熱があるのかも知れぬ。
 就寝、一時五十分。―――
17  十二月二十六日(金) 曇後雨
 寒い朝であった。
 寒風に耐えてゆく吾が身、吾が心の試練を考う。強く育ちゆかねばならぬ。人々の、依佑依託の人になるには。―――今は、師に包まれている。両親に護られている。良き同志を持っている。とかく、時代も、順調である。
 逆境に遇っても、常にかわらぬ指導者となって、立派に後輩を護れる人になりたいものである。
 同志、兄弟達が、楽しく、無事に、歳末を送らんことを祈る。祈る。―――
 来年は、本を読もう。読んで読んで読み抜こう。来年は、勉学の年としよう。学会の飛躍に遅れぬためにも。
18  十二月二十八日(日) 快晴
 ゆっくり休む。多少、疲労回復の感あり。
 Y君、N君、K君、十二時三十分、来宅。四時まで、食い、且つ語り、歌う。更に、来年度の企画を練る。
 夜、妻と共に、先生宅を訪問。種々、指導及び注意を受ける。嬉しきことなり。
 十時三十分、辞去する。
 I君は、立派な先輩である。尊敬してゆくことにする。
 誇りとできる人を、同志にしたい。友にしたい。先輩にしたい。後輩にしたい。
 就寝、十二時三十分。
19  十二月三十日(火) 快晴
 私には、静穏な歳末である。
 神奈川のO宅に、一人、歳暮にゆく。身体の具合よからず。
 帰宅、三時。直ちに、体温計を入れる。三十八度九分とのこと。
 夜、早目に床に就く。雑誌をみることにする。
20  十二月三十一日(水) 曇
 昭和二十七年の、終曲の日。
 立宗七百年の輝く終飾の日。吾人も、二十四歳の青春を送る日。
 四時、会社にて忘年会。先生を囲み、一人一人、指導を受く。或るは厳しく。或るは未来の十年を。或るは経済、外交の問題を。‥‥或るは教学のことを。或るは先生の少年、青年時代のことを。
 小生も、食べ過ぎて、腹の具合悪し。皆も、良く食べ、良く飲んでいた。
 帰宅、八時少々過ぎ。―――レコードを聴く。静かな、平和な夜。幸福と、和楽の家庭。妙法に照らされ、最高、最大の幸福者であることを感謝する。

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