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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十五年(十二月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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2  十二月二日(土) 晴
 人身は受けがたし爪の上の土・人身は持ちがたし草の上の露、百二十まで持ちて名を・くたして死せんよりは生きて一日なりとも名をあげん事こそ大切なれ。(崇峻天皇御書)
 十二時五十分発、松島号にて、先生と共に伊東に商用。I氏に面談にゆく。
 車中、「観心本尊抄」を、講義して下さる。
 I館に一泊。二人して、温泉にゆっくり入る。種々、雑談―――先生、様々の事を思い巡らして居られる様子。
 夜、I氏等、再び来る。
 明朝、再び、私が挨拶にゆくことに決まる。
 今夜は、東京では定例青年部会。はじめて欠席―――。
3  十二月五日(火) 曇
 凡そ仏法を信ずる人は仏と経との二を明らむ可き也。(法華大綱抄)
 早朝に、M氏来室。少々懇談。出社遅れぬよう、急ぎ、バス停留所まで駆け足。
 苦闘よ、苦闘よ。
  汝は、その中より、真の人間が出来るのだ。
  汝は、その中より、鉄の意思が育つのだ。
  汝は、その中より、真実の涙を知ることができるのだ。
  汝よ、その中より、人間革命があることを知れ。
 帰宅、十一時。
4  十二月七日(木) 晴
 小波小風は大船を損ずる事かたし・大波大風には小船をやぶれやすし、王法の曲るは小波・小風のごとし・大国と大人をば失いがたし、仏法の失あるは大風・大波の小船をやぶるがごとし国のやぶるる事疑いなし。(神国王御書)
 起床、六時。元気。元気に出発。
 夕刻、アパートを世話してくれた親娘三人を、有楽座に招待する。ロードショーの洋画を観る。
 「嵐ケ丘」。ヒースクリップとキャサリンの、愛別離苦の描写に胸を打たれる。帰り、日劇地下で、ちらしを御馳走する。喜んで帰った。
 招待もよいが、折伏で救うことが、真実の御礼である気がしてならない。
 帰宅、十時五十分。
5  十二月九日(土) 雨
 身つよき人も心かひなければ多くの能も無用なり。(乙御前御消息)
 警視庁記者クラブにて、K記者と会談。共に、虎ノ門、喫茶店において、記者論を交す。面白し。
 社にて、夜半まで読書。
 「草木成仏口決」「一生成仏抄」「生死一大事血脈抄」を拝読。
 帰宅、二時。
6  十二月十日(日) 快晴
 午前中、洗濯、その他雑用。
 午後より、先生宅にお邪魔する。
 「生死一大事血脈抄」の講義をして下さる。
 夜遅くまで、種々指導賜る。
 自分で、先生の指導が、わかったつもりで、なかなかわからぬ、無能を悔しがる。
7  十二月十一日(月) 晴
 「人生とは、闘争の異名なり」と、叫んだ哲人がいる。
 正しく、人生は、戦争の如く、厳しく、目まぐるしい感を抱く。何も知らなかった少年時代が、慎かしい。だが、一歩も、退くことは、許されぬ。
 人生は、闘争だ。
 だが、闘争の中にも、休息は必要だ。
 その休息の中に、次の理想を浮かべることだ
 そして、その理想の中には、必ず、個人も、社会も、大善がある理想を忘れぬことだ。
 更に、その理想を実現してゆく、色心の力を燃やしきることだ。
 そのために、休息は、必要だ。
 結局、人生は、究極まで闘わねばならぬ。
 最高の理想たる、広宣流布の実現を目指して。
8  十二月十二日(火) 晴
 此の大法を弘通せしむるの法には必ず一代の聖教を安置し八宗の章疏を習学すべし。(曾谷入道殿許御書)
 人間の感情ほど、微妙なものはない。昨日まで、水魚の仲の親友も、今日は、腕を振るう敵となる。今朝まで、心から愛していた人が、タベには、水の如く、心移り変わる。先日まで、親しく会話していた客人も、一瞬の心の動揺にて、血相を変えて怒る。
 我が胸変わらざれども、対境の恐ろしさ。
 若人は、周囲から、踏まれでも、吹かれでも、若芽が、黒色の大地より出ずるが如く、力強く、もくもくと起ち上がっていかねばならぬ。若々しき、清浄なる生命力で、生ききらねばならぬ。
 青年という、宇宙最高、最大の特権。且つ、信心ある、確信の青年にそれがなくては、魂のなきが如しだ。
 社会は、混迷している。負けることは、悲しい。敗れゆくことは、不善の第一歩になる恐れあり。
 帰宅、十一時。
9  十二月二十三日(土) 晴
 本年も、あと一週間となる。
 この一年、実に大悪の連続であった。妙法は、此の大悪を、大善に変えてくれるわけだ。
 最後の日まで、法刀を振りあげて戦い抜こう。先生のため、自己のため、学会のため、社のため、日本民衆のため、人類のために。
 会社も、学会も、朝日が今、闇を蹴り、正に昇らんとしているのだ。
 夜、M宅に仕事の用事でゆく。二十数名の人、集まっている。種々、説明をする。
 帰宅、十一時三十分。
10  十二月二十七日(水) 快晴
 晴天、爽やかな朝であった。
 身体の具合、良好。
 一日中、思いきり動く。先生に対する非難、ごうごうたり。私は、断然、戦う。
 先生の大使命を、最も知っているのは、私だと確信する。先生の意中を、最も理解しているのは、私一人だと決意する。憤然として、命を張って、戦いきろう。
 帰宅、一時二十分。就寝、三時。
11  十二月二十八日(木) 快晴
 人生は、生涯、戦いの連続だ。ただ、その戦いが、何を目的としているか、何を根本としているかが、大事なことだと考える。
 自己の戦いの目的が、微塵も悔いなければ、最大の幸福の戦いだ。今、全く悔いなきことを自覚している。なれば、莞爾として、進軍あるのみだ。
 戦いには、自分らしく、立派に活躍しきって終幕を飾りたい。勝敗は第二義として。―――而し、その戦闘の、能力、実践力、確固、責務―――これらを、完全に発揮しきってゆくことを、第一義とせねばならぬ。
 ナポレオンは、戦勝した。次に、大敗、又戦勝。最後は、敗戦の英雄であった。
 ペスタロッチは、五十年の人生の戦いは、完敗の如くであった。而し、最後は、遂に勝利の大教育者として飾った。
 今、自分は、どのように戦い、どのように終幕を飾るかが重大問題だ。
 所詮、題目に、生ききってゆく以外の、なにものもなかろう。
 帰宅、十一時三十分。就寝、一時三十分。
12  十二月三十一日(日) 快晴
 午前中、社の掃除にゆく。
 夕刻、帰宅。室の中を、少々掃除。久しぶりにて、風呂に入る。帰り、すし屋で一人食事。
 来年は、夜学に再び行きたい。
 来年は、思うように勉強したい。
 来年の、自分の運命は、どう動くか、考えられぬ。
 来年も、又、私の師の、指導通り動くことが、私の人生の総てであろう。
 二十二歳の、青春は、過ぎていった。あまたの歴史と思い出を、因果の二法と胸に刻んで。
 就寝、十二時五十分。

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