Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十五年(十一月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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2  十一月四日(土) 晴
 六時。月例青年部会。出席、二十名内外。
 皆、真剣の様子なれど、強き青年部の脱皮見られず。
 閉会、八時。友人達と、水道橋駅まで帰る。皆に、なかなか融け込めないのが残念である。
 夫れ一切衆生の尊敬すべき者三あり所謂主師親とれなり。(開目抄)
3  十一月七日(火) 雨
 釈尊と我等とは本地一体不二の身也。釈尊と法華経と我等との三つは全体不思議の一法にして全く三の差別無き也。(授職灌頂口伝抄)
  一、広宣流布ノ為、先駆トシテ、進ミキル、真ノ青年ニナルベキコト
  一、学会首脳ニ関スル、明確ナル判断ヲシテユクベキコト
  一、御書ノ徹底的研究ト、実践へノ猛省
  一、自己ノ与エラレシ支部ヲ、決然トシテ発展セシムコト。並ビニ組織ノ確立ヲ急グコト
  一、先生ノ事業発展へノ思索
  一、自己ノ信念ノ深浅ヲ反省
  一、自己ノ経済問題ト、新家庭ノ時期
 経済全く困窮。先生宅も、大変な御様子。一日も速やかに、お楽になって戴きたい。そして、広布の陣頭指揮を請い願うのみ。
4  十一月八日(水) 晴
 稲変じて苗となる・苗変じて草となる・草変じて米となる・米変じて人となる・人変じて仏となる。(王日女殿御返事)
 社員、同志たるY氏宅に、全快祝いにゆく。十一時までいる。若き友人、同志の尊く美しき結合。
 久しぶりに、詩吟を三度、朗吟。
 K氏、U氏も、深く感銘した模様。
 帰り、M氏宅に、挨拶により、帰宅。
5  十一月十日(金) 曇
 法華経は三世の諸仏・発心のつえにて候ぞかし、但し日蓮をつえはしらとも・たのみ給うべし、けはしき山・あしき道・つえを・つきぬれば・たをれず、殊に手を・ひかれぬれば・まろぶ事なし、南無妙法蓮華経は死出の山にては・つえはしらとなり給へ、釈迦仏・多宝仏上行等の四菩薩は手を取り給うべし。(弥源太殿御返事)
 七時三十分、起床。十一時三十分、帰室。
 寒くなり、着替えのシャツが無く、少々困る。
 一日中、五軒、十軒と、先生の代理として、部長と共に、得意先を回る。いつの時代でも、かつ社会でも、信用が最も大事であることを知る。
6  十一月十二日(日) 曇
 創価学会、第五回総会。教育会館にて。
 遅々たりといえども、学会の闘争、充実した感あり。此の中より、未来十年―――昭和三十五年の学会の世界に、幾人残るや。
 吾人の、師につく決意弥々堅し。同志の進み、成長しゆく姿をみて、自らを省みることが大事なり。自己流のみでは、真実の向上がわからなくなってしまう。
 戸田先生、見ておって下さい。此の私を。必ず、先生の遺志は、実現してゆきますと、先生の講演中、決意は漲る。
7  十一月十三日(月) 晴
 百千合せたる薬も口にのまざれば病愈えず蔵に宝を持ども開く事をしらずしてかつへ懐に薬を持ても飲まん事をしらずして死するが如し。(一念三千法門)
 帰宅、十時。
 昨日の、先生の記録を整理する。夜半までかかる。厳粛な気持ちとなる。
 先生の、後を継ぐ者として、当然な気持ちなり。
 此の心奥、いつの日か、誰人に語らん。
 先生は、一往、昨日の総会の席上、理事長職を、Y氏に譲った。そして、次の時期を待っているのだ。誰人が、学会の組織上の中心者になっても、師は、戸田先生しか、私にはない。
8  十一月十四日(火) 快晴
 再び、先生の代理にて、伊東にI宅を訪う。午後七時着。風強く、寒き晩であった。九時、失礼し、M旅館に泊まる。なかなか、静かな、良い旅館であった。温泉に入り、十二時近くまで、ワイルドの『獄中記』を読む。
 非常に、身体を無理している。実際、自分で、自分自身の運転が出来得ない状態に苦しむ。
 一人して、旅館に泊まるは、人生始まって、はじめてである。計、四百三十円也を払う。
9  十一月十五日(水) 晴
 仏になる道は豈境智の二法にあらずや、きれば境と云うは万法の体を云い智と云うは自体顕照の姿を云うなり。(曾谷殿御返事)
 七時十四分発、熱海行き電車に乗る。熱海駅にて、乗り換え、四十分待ち、東京に十時三十分着。寒い朝であった。疲れが出たのか、列車内にて、よく眠る。
 十一時、出勤。先生に種々報告。
 十二時より、仕事にかかる。なかなか疲れてならぬ。
 帰り、新橋において、映画「レ・ミゼラブル」を観る。
10  十一月十六日(木) 快晴
 十二時、寝る。室が寒くて、困る。火の気、全然なし。
 M宅にて、臨時座談会を催す。猛反対の出席者に、対治悉檀をなす。
 昼、戸田先生と、日大の食堂にゆく。
 民族論、学会の将来、経済界の動向、大学設立のこと等の、指導を戴く。
 思い出の、一頁となる。
11  十一月十七日(金) 晴
 火にたきぎを加える時はさかんなり、大風吹けば求羅は倍増するなり、松は万年のよはひを持つ故に枝を・まげらる、法華経の行者は火と求羅との如し薪と風とは大難の如し、法華経の行者は久遠長寿の如来なり、修行の枝をきられ・まげられん事疑なかるべし。(四条金吾殿御返事)
 八時、学会本部より、T氏と共に帰る。
 「如説修行抄」拝読。
 勇気ある信心を、深く自覚する。
 南無妙法蓮華経。
 詮ずるところは、信力と行力に尽きる。御本尊様には、法力と仏力があられるのだ。この御本尊様の、偉大なる大法則の力を、実証し、実験し、体得するには、自身の信心よりほかに何もないのだ。
 午前一時、就寝。
12  十一月十九日(日) 雷雨
 譬えば如意宝珠の玉は一珠なれども二珠乃至無量珠の財をふらすこと・これをなじ、法華経の文字は一字は一の宝・無量の字は無量の宝珠なり。(日妙聖人御書)
 午後六時三十分、先生宅にて、講義拝聴。
 「草木成仏口決」及びご生成仏抄」。
 先生の、次期の学会指導者の養成に、自覚、更に新たなり。
 出席者、K女史ほか数名。
 夜食を御馳走になり、帰宅、十時三十分。
13  十一月二十日(月) 快晴
 心を観ずるに心なし。顛倒の想より起る。此の如き相の心は妄想より起る。空中の風の依止する処なきが如し。(観普賢菩薩行法経)
 戸田先生と共に、一日中、社の建設のことにつき、談合。
 全く、多事多難である。全く、多情多感である。
 私の、凡愚の智では、なにも出来ぬ。以信代慧を確信し、唯々、題目をあげ、第一にも努力、第二にも努力して、建設に向かおう。
 私の、先生に対する、忠誠は‥‥。
 帰宅、十一時。
 宰が寒くてならぬ。題目をあげると、生命全体が暖かくなる。誠に、不思議なことだ。
14  十一月二十二日(水) 雨
 我も亦為れ世の父 諸の苦患を救う者なり。(法華経如来寿量品)
 M君と一日中、仕事のため、外出。
 O部長の臆病には、ほとほと弱る。先生も、戦争中、若き将校は勇敢であったが、指導的立場の将軍が、意気地がなくなったのと同じだよと、慰めて下さる。
 此の一年が、会社も、私も、学会も大事であると深く思考する。一つの広布のギアとして、人それぞれ、お互いに懸命に勝利を導くことだ。
 O宅座談会に出席、新しき人なし。
 帰宅、十二時五十分。
 静かなる、月光であった。久しぶりに、詩を吟じながら帰る。感多し。
 何かの書に、書いであった
 心軽ければ、其の仕事も軽い。
 賢明な思考よりも、慎重な行いが重大であると。
15  十一月二十四日(金) 小雨
 再び、先生の代理として、伊東に出張。I氏、S氏と会見。当人達の、話の変化に苦しむ。私には、老成者の、微妙な腹芸が、わからない。
 四時過ぎ、列車に乗車。月下の東海の静寂なる、金波、銀波に、瞬時、現実の世界より、夢の、聖なる芸術の世界に、佇みし思いとなる。七時、東京着。
 社に帰り、直ちに、先生宅へ。
 種々、報告申し上ぐ。先生、頗る御機嫌悪し。
 帰宅、十一時五十分
16  十一月二十六日(日) 小雨
 十時、起床。寒い朝であった。冬型の季節となる。オーバーが無い。此の冬も、オーバーなしで通そう。
 T氏と一緒に、M宅に折伏に行く。入信せず。一人の人を、折伏することは大変なことだ。而し、これ以上に、尊い、偉大な、且つ最高なる活動はない。
 今、一人の人が入信せずとも、幾百千万の人々が、吾等を待っている。二人して、悠々と帰る。
 夜一人して、大森にて、洋画「ベーブ・ルース物語」を観る。
 帰宅、十時三十分。寒い。お茶でも飲みたい。なんにもないことが、未来の思い出ともなることだろう。
17  十一月二十七日(月) 小雨
 夕方より小雨。九時少々過ぎに帰宅。勤行後『宇宙の謎』を夜半まで読む。
 身体の具合、少々良好となる。嬉しい。
 早く帰っても、何となく、物足りぬ思いがしてならぬ。
 本日、営業部長に、昇格する。
  一、経済の勉強を致すべき事
  一、事業の発展に、責任を一段と深くすべき事
  一、学会の前進に、遅れざる事
18  十一月二十八日(火) 小雨
 誓えば頭をふればかみゆるぐ心はたらけば身うごく、大風吹けば草木しづかならず・大地うごけば大海さはがし、教主釈尊をうごかし奉れば・ゆるがぬ草木やあるべき・さわがぬ水やあるべき。(日眼女造立釈迦仏供養事)
 寒い一日であった。一日一日、寒くなる。身体の調子、順調となる。功徳であると確信する。
 今月で、三か月給料遅配。本日、少々戴く。帰り、大森にて、シャツ等を購入。金、百六十同也。
 帰宅、九時三十分。
 『世界文学全集』を読む。第七巻目に入る。
19  十一月二十九日(水)みぞれ
 朝より雨。寒波。本年、最高の寒さの様子。
 半日、先生と共に語る。私が、師の遺業を、継ぎ、実現せねばならぬことを、泌々と指南して下さる。
 午後より、先生は、大蔵省にゆかれる。寒さの為、震えて帰ってこられる。
 先生日く「世の中は、寒いなあ」と。笑って居られる。
 ″大作、自分は、決して負けたのではない。敗れたのに過ぎぬ。本当の戦いはこれからだ″と。―――
 先生に、学会に、指一本指させぬ覚悟で戦う決意、更に燃え上がる。
 I氏に、気を付けねばならぬ。彼は味方である振りをして、陰で先生に対し、策動している。
 帰宅、十一時。明日は、大宮方面に。
20  十一月三十日(木) 小雨
 十一月も遂に終わりぬ。決戦の師走を明日に控える。
 大宮に午後より出発。十時三十分、帰宅。事業は、五十年の体験活動なるも、仏道修行は、永遠にわたる根本修行なるを、忘れてはならぬ。
 トルストイの『少年時代』を読む。暴君の少年時代と、吾が少年時代とを、対照して考に耽る。

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