Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十五年(九月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

前後
1  九月一日(金) 晴
 嵐の前夜を思わせる、一日一日である。刻一刻と深刻なる事態の肉迫を受く。
 二十二歳の、青春―――これが、決定されていた、師弟の縁か。
 小局と戦い、大局に動ぜず。
 先生も、本当に、お苦しい様子。悔し涙が一杯。そして、師に続き苦しみゆける、感涙が一杯。
 百年の計を決して忘るな。百年の計を、決して、過たずゆけ。
2  九月二日(土) 晴
 日蓮が弟子等の中に・なかなか法門しりたりげに候人人は・あしく候げに候。(上野殿御返事)
 今週も終わる。
 内外の、批判、誹謗の声、しきりなり。
 先生、重役達と共に、大宮方面に、事業の打開策を講じにゆく。重役達も先生を信じていない様子を、感ずる。
 信ずるものは、大御本尊様あるのみ。
 寂莫は、人をして、深く、己れを知らしめ、同時に、彼をして、其の心を真面目ならしむ。
 国家を愛する者だけが、国家を愛する者を知る。
3  九月四日(月) 晴
 会社の整理、遅々たり。社員の心、動揺あるを悲しむ。互いに人間なれば、己むを得まい。
 S宅を、一か月ぶりに訪問。気心痛むものあり。良き時は、笑顔。悪しき時は、他人の如き扱い。
 帰り、長月冴ゆ。詩の、空想の世界に遊ぶ念い、しきりなり。
 而れども、現実の渦中は、空想のみでは、許されぬ。若人の胸は、戦く。
 希望。大志。―――新たなる、人生の船出。嵐は覚悟の上だ。
4  九月九日(土) 曇
 国土乱れん時は先ず鬼神乱る鬼神乱るるが故に万民乱る。(仁王経)
 身体の具合非常に悪し。健康を害しきっては、何事も不可能だ。留意を要す。
 九時に、床につく。
 良く眠る。一年間の、休息をしているようだった。
 題目をあげる以外に、打開の道はない。心身共に―――。
 勝利を信ずる、原動力は、題目だ。
 若いのだ。進もう。一直線に、吾が道を。
 若いのだ。働とう。天より与えられしものを作る思いで。
 若いのだ。勇気を出せ。師の下に戦うは、総てが、善に通ずるを確信して。
 若いのだ。快活であれ。負けても、勝っても。苦しくとも、淋しくとも。
5  九月十一日(月) 晴
 帰宅、十一時三十分。
 今日も、力の限り奮闘。
 だが、嵐の前の静けさだ。吾が社も、気象時報も。
 大宮に、O重役とゆく。大宮のk氏も、乱れる心となっている。全く、頼れる人では、決して無い。
 学会幹部の人々と、先生と共に、将来のことを懇談。会社の事務所にて。
6  九月十二日(火) 曇
 一日一日、人間革命の日である。
 一日一日、新進の日であれ。
 身体の事で、先生より激励される。
 本部にて、先生、御本尊に、御祈念して下さる。
 生命力が弱っている、弱っていると、強き強き叱陀。
 先生の、真剣な御様子に、驚く。感激、恐怖、厳粛‥‥
 K氏と、大森駅まで帰る。
 帰宅、十一時。
 今夜より、良く眠れることだろう。
7  九月十六日(土) 快晴
 一日中、暑い日であっ
 先生宅の座談会に、出席。先生の生命論をお聞きする。皆嬉しそう。
 先生は、未だ学会の理事長であられる。どうして会長になられぬのか、深く考える。
 T氏、来る。信心のこと、会社のこと、小一時間語る。いい人だ。
 就床、十二時三十分。
 現実と理想、理想と現実。
 現実を逃避する者は、卑怯なり。理想を抱かぬ者は、又、生ける死者と、同じなり。
8  九月十七日(日) 晴
 九時まで休む。一日中、室に居る。今日が初めてなり。誰人も来ず。
 明日の、構想を練る。
 洗濯をする。左隣の室のおばさんに、夜遅くの勤行は安眠妨害だから止めるよう、厳しく叱られる。
 その隣のおじさんに、早く帰って来い、何を、いつも、うろうろしてるのだと、たしなめられる。
 管理人の若主人からも、御本尊を持つために、何やかやと注意される。
 夕刻早めに、食堂に一人ゆき、二食分食う。朝、昼なしで、本当にうまかった。
 室を、久方ぶりに掃除をする。
 十時少々前に、休む。静かな室。
9  九月十八日(月) 雷雨
 トルストイの『日記』を読む。
 偉大な文豪たりとも、生涯、苦悩の連続であった。深く思念することをおぼえる。
 所詮、人生に於ては、最究極の道にゆくため、求道者は、限りない努力をするものだ。しかし、吾等は、妙法という、絶対最極の原理を、すでに知ったのだ。幸せなことだ。偉大なことだ。
 一日早く、妙法を知れば、一日早く、幸福に、平和になるわけだ。一日躊躇すれば、一日、幸福と平和が遅れることだ。
 いかなる有名人、学者たりとも、妙法を持たざれば、結局は、決して人生の解決とはいえない。だから、不幸者となる。
 帰室、十一時三十分。
 一人、滝廉太郎の「荒城の月」を聴く。
 春高楼の花の宴‥‥歴史の変転、勇者の面影が、信しく映る。
10  九月十九日(火) 雷雨
 七時四十分出勤。混む電車に、疲労が、倍加する思い。
 自己を偽ることは、非常に罪悪だ。人みな、義務、権利を、正しく実行できる社会であるべきだ。自分の思ったこと、正しいと思うことが、率直に実行出来ぬことは、辛い。人も、皆、あまりにも偽りが多すぎる。悲しいことだ。
 いやな葛藤が多すぎる。万人の性格の違いは、いかなる宿命によるものか。少年、青年のみは、もっと、正しく伸びのびと成長させゆくよう、未来のため、大人が、責務を持ってもらいたいものだ。
 十一時、帰室。
 御書を拝読。全く難しい。
11  九月二十一日(木) 雨
 鳥は人の害せん事を恐れて木末に巣くふ、然れども食のために地にをりてわなにかかる、魚は淵の底に住みて浅き事を悲しみて穴を水の底に掘りて・すめども餌にばかされて鉤をのむ(四条金吾殿御返事)
 会合の後、先生に歌を差し上げる。先生、非常に喜んで下さる。
 先生より、和歌、二首、返歌として、即座に下さる。
  幾度か 戦の庭に 起てる身の
    捨てず 持つは 君の太刀ぞよ
  色は槌せ 力は抜けし 吾が王者
    死すとも 残すは 君が冠
12  九月二十二日(金) 曇
 秋風、肌に爽やかに感ずる候。
 一日中、涼しい、清い気持ちの日であった。夕刻近くは、寒きが如くであった。
 本部、「御義口伝」講義。約五十名。K氏と大森駅まで、種々語りながら帰る。
 生涯、年齢、時代の推移を超越し、公明正大に生きたいものだ。質実剛健に進みたいものだ。重責を担い、堂々たる人生でいきたいものだ。
 帰宅、十一時過ぎ。蚊が少なくなって助かる。
13  九月二十三日(土) 晴
 涼しい一日であった。十二時、帰宅。
 身体の具合、良好になる。
 歓喜で働ける日、苦しみながら戦う日、様々だ。だが、とれ程、真剣に戦えば、絶対に悔いはない。倒れても、誰人も見ていなくとも。
 御本尊様のみ、すべてを解決して下さる。唯、反省は、自己の信仰に、謗法ありや、否やだ。
 K宅、座談会。
 歌をつくる。
  荒猛ぶ 曠野に 一人 決然と
    光掲げん 先覚の子は
  一、反省を怠らぬこと
  一、一歩一歩、邁進を怠らぬこと
  一、物事に迷わぬこと
  一、信仰を、厳しくすること
14  九月二十八日(木) 曇
 此の経は能く一切衆生をして諸の、苦悩を離れしめたもう。此の経は能く、大いに一切衆生を饒益して、其の願を充満せしめたもう。(法華経薬王菩薩本事品)
 七時三十分、出勤。
 何となく、涼しくなった。Yシャツ一枚の青年。上着がほしくなった。電車内では、皆着ているのに。
 I君に、一杯食わされる。悪い奴だ。
 人を騙して、見栄を張って生きるなんて、人間として最低だ。
 目的のある苦労は、張り合いがある。目的なく、苦労して、死んでいく人は、奴隷のように見える。
 「三重秘伝抄」講義持聴。
 帰り、雨となる。全く寒くなってきたT氏と、大森まで帰る。実直な人だ。

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