Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十五年(六月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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1  六月一日(木) 雨
 薫風をきって、水無月のスタートをなせり。
 一、健康に注意すること。
 一、勉強をすること。
 一、価値生活の実施。
 信仰を根本に、充実した、前進の月を期す。
 大善と正義の前に、堂々と進もう。
 あな嬉し。あな面白や。
 M氏宅の座談会に出席。帰宅、一時三十分。
2  六月二日(金) 雨
 請い願わくば道俗法の邪正を分別して其の後正法に就て後生を願え今度人身を失い三悪道に堕して後に後悔すとも何ぞ及ばん。(守護国家論)
 日本橋、高島屋に、部長とゆく。A氏宅を訪うために。近代の粋を集めたる、デパートの雑踏に驚く。富める人が、いかに多いかと。人の波、化粧の匂い、目を奪う商品の陳列の山。
 事業は、時代を動かし、時代を作るものか。事業は、健男児の、檜舞台か。事業にも、幾種類もの事業がある。一大事業は伺か。それは、恒久平和を築く、全人類の幸福の為に通ずる、事業でなくてはならない。
 友人、来室、雑談。一時、寝床に入る。
3  六月三日(土) 小雨
 日蓮其の身にあひあたりて大兵を・をこして二十余年なり、日蓮一度もしりぞく心なし。(辧殿尼御前御書)
 反省と前進。苦悩と光明。雑念と清浄。
 これ、青年の持ち悩むところなり。青年の批判、正義感、進歩への情熱は、満ちみちていなくてはならぬ。
 口のうまい、壮年の言語が何だ。左右されてはならぬ。若人の革新の息吹に依つてのみ、老いたる社会の眼を覚ますことが出来るのだ。
 青年は、卑怯な、意気地のない、老人の如き姿と化しではならぬ。それこそ、早く、ずるい妥協の、淋しき人生となってしまう。
 青年よ、快活であれ。青年よ、理想に、厳粛に進め。
 六時三十分より、青年部会あり。意義ある、総合打ち合わせ会が出来た。
 先生、見ていて下さい。きっとやります。
4  六月四日(日) 雨
 慈を以って身を修め、善く仏慧に入り、大智に通達し、彼岸に到り‥‥。(法華経序品)
 参議院選挙は、棄権する。
 人生の目的、善悪の基準。これは、吾等人類にとって、重大な課題である。これを、明確に、断言して、教えてくれる人がいたら、大偉人といえよう。
 大仏法を、実践、勉強し、自ら、確証と信念を持つことだ。これ大事の中の大事だ。
 吾人、今日の生活に間違いなかりしか。いや、青年が、いちいち、躊躇する必要はないか―――。
 青年は、前に進めばよいのだ。正義感と、情熱を、信念を、持ちつづけて。
 革命児には、先覚者には、苦難はつきものだ。青年には、苦悩がつきものだ。ただ、それらを打開して進むことが、革命だ。
5  六月五日(月) 晴
 日蓮をば日本国の上一人より下万民に至るまで一人もなくあやまたんと・せしかども・今までかうて候事は一人なれども心のつよき故なるべしと・おぼすべし。(乙御前御消息)
 仕事繁多、自分になれない仕事故か。
 毎日が、激戦! 若人は戦う。
 全生命力を、賭して。
 それが、尊く、それが美しい。
 疲労の中に、起ち上がる瞳、
 そこに、希望が湧く、未来が生まれる。
 そこにこそ、天の大聖曲が聞こえる。
 戦うのだ、正義の為に。
 闘うのだ、大善の前に。
 今、大衆の目は閉じている。
 だが、大衆の目は、必ず開くだろう。
 否、聞かせねばならない。
 小生の室にて、座談会開催。K兄出席。
 小人数なり。淋しいけれども、そこに、修行有り。
6  六月六日(火) 晴
 世人の心は、豆よりも小なり英雄のみ英雄の心を知ると、詠った人があるまた、笑うものは、汝の笑うにまかせん、誹る者は、汝の誹るにまかすべし、といった人がいる。
 大聖人の大原理が、愚か者にわかる道理がない。批判する者は、勝手に、批判するがよい。而し、諸君等がいるが故に、自己は、仏になれるのだ。
 共産党、中央委員二十四名、追放さる。
 世界、日本の思潮、今や、激烈たり。
 若人の起てる秋は、遂に来たる。
 詩人、革命児よ、宗教革命児よ。
7  六月九日(金) 小雨
 K宅、座談会、帰室、十一時三十分。
 梅雨、しきりなり。
 不幸に喘ぐ人々を、根本より、大慈大悲をもって、救っている宗教が、いずこに有ろうか。ああ、なんと不合理な社会か、政治か。
 一生は、夢の如く去る。。五十年の人生。
 如来の使いとして、御仏の弟子として、尽くすことは、最大の誇りといえよう。
8  六月十日(土) 雨
 大地はささばはづるるとも虚空をつなぐ者はありとも・潮のみちひぬ事はありとも日は西より出づるとも・法華経の行者の祈りのかなはぬ事はあるべからず。(祈祷抄)
 身体の疲労重なる。調子、頗る悪し。
 今夜、実家にて、長兄の法事とのこと。戦死して、五年余。二十六歳、独身で死ぬとは、誠に、可哀想な限りだ。吾が室より、最大の功徳を、送り申そう。
 『ゲーテとシラー』『樗牛全集』等を、神田にて求む。
 過去、幾百億年、未来、幾千億年の、現在、師となり、弟子となり、親となり、子となる、結合を、密かに、不思議と思う。
9  六月十一日(日) 雨
 身体、痩せてくる。自分でよくわかる。病魔に負けては、絶対にならぬ。
 清浄なる生命、歓喜に溢るる紅顔、この実相の生命を築くことが信心なのだ。汝自身に打ち勝った、姿がみたい。
 午前、中野・歓喜寮にゆく。帰路、友人達と、S宅を訪問。
 梅雨しきりなり。健康に注意せねばならぬ。
 御本尊、吾が身の健康だけを、救い給え。
10  六月十二日(月) 雨
 吾が家に帰る、七時。皆の元気な姿を観て、非常に嬉しい。特に、母の肥った姿。蒲田にて、下駄を求めて、差し上げる。
 H君とYさんと三人にて、東邦医大に寄る。H氏、R氏達を、折伏。
 誠心とめて、唯、その人の幸福を願って、大仏法のことを、話せる心境。これ以上の、地上における尊い仕事、心境は、絶対にあり得なかろう。
 明日も、前進だ。唯、戦い進む以外に方法はない。
11  六月十三日(火) 雨
 願くは我を損ずる国主等をば最初に之を導かん、我を扶くる弟子等をば釈尊に之を申さん、我を生める父母等には未だ死せざる己前に此の大善を進めん。(顕仏未来記)
 「我れを生める父母等には、未だ死せざる巳前に、此の御本尊様に、帰依させよ」との仰せだ。
 ああ、吾が信仰の愚かなることよ。父母の他界も、吾れより早期は必然なり。一日も速やかに、成仏するよう、永久の救出に、努力を怠ってはならぬ。
 一日中、豪雨。傘が無くて困る。
12  六月十四日(水) 雨
 今日も、豪雨。傘を求める。夕方近く、晴れてきた。
 新聞には、各地の被害、洪水の報道しきりなり。
 「雨壌を砕かず」の、広宣流布の日は、いつの日ぞ。全人類が、朝な夕な、夢みている理想郷は、いつ来るのか。平和な、明るい、笑いの尽きぬ、世界は。
 さあ、青年は、明日に、逞しく生きよう。御本尊のお力を、お借りして。
13  六月十五日(木) 曇
 たのしくして若干の財を布施すとも、信心よはくば仏に成らん事叶い難し。縦ひ貧なりとも信心強くして志深からんは仏に成らん事疑い有る可からず。(身延山御書)
 一歩前進、
 努力だ。
 吾が大道に、
 一歩一歩、山を越え、谷を越え、進むことだ。
 忍耐だ。
 衆人の、批判の嵐、怒濤を、莞爾として、耐え、時を待ち、時を築け。一段、一段と。
 確信だ。
 いかなる闘いにも、確信に、しくはなしだ。一念三千の大波動を、常に、つくりゆけ。
 信念だ。
 苦闘の連続、その中に、生き、勝ち、証明してこそ、偉大なことなのだ。
 本の歴史は、間違いだらけだ。自己の歴史には、自己の胸中の歴史だけは、一分の、嘘も、飾りも書けぬことを知れ。
14  六月十六日(金) 晴
 久しぶりの上天気。帰宅、十一時三十分。
 輝き渡る、太陽の下で、働けることは、幸福なことだ。雨、長く続いて、初めてわかる。
 夜、K宅にて、座談会。K氏、慈悲論の講義をする。立派な講義。偉い人物だ。
 私は尊敬する。
 信仰―――多くの人が、実行し、多くの人が、知っている大切な言葉。そして、多くの人が、遠ざかろうとする意義。だが、真の対境たる本尊が、邪であり、低であり、無であれば、真実に、信仰とは云えぬことを、知らない人の多きことよ。
 三大秘法の御本尊様に、題目を唱えて、初めて、信仰といえるのだ。そして、必ず、生活の上の現象、体験が、幸福と現れなくてはならぬ。なお、時と処とを選ばず、誰人にもあてはまる普遍性が存しなければいけない。生きた法則でなくてはならない。
 帰室、十一時三十分。室が湿っぽくて、困る。
15  六月十七日(土) 曇
 今日の、戦いの結果はどうか。
   ただ、頑張った、私らしく。
 今日の、戦いに、悔いはないか。
   あるといえばある。ないといえば無い。
 今日の、戦いに恥ずる所なきか。
   女々しい戦いでは、なかったはずだ。
 明日の前進の、準備はよいか。
   大丈夫、千里の道、進まずして、着くわけがない。
 明日の向上の、心構えは、確信は良いか。
   大丈夫、山登らずして、頂は望めぬ。
 明日の建設の、信念は良いか。
   大丈夫、一日の建設をなさず、次の完成はない。
 人生の目的に、忠実なりや。
   努力する。ただ努力する。
 人生の究極の、使命を忘れざるや。
   忘れない。忘れたら、何もなくなる。
 O部長に、神田にて、夕食を御馳走になる。
 帰室、十一時。
16  六月二十二日(木) 雨
 石を金にかうる国もあり・土をこめにうるところもあり、千金の金をもてる者もうえてしぬ、一飯をつとにつつめる者に・これをとれり、経に云く「うえたるよには・よねたつとし」と云云、一切の事は国により時による事なり、仏法は此の道理をわきまうべきにて候。(上野殿御返事)
 時代、社会、世界、思想。共に人類歴史、未曾有の、多事繁雑なる時代に入りにき。
 将来、如何にして、日本も、世界も進行してゆくつもりや。誰人も、何人も、知覚出来得ざるや。
 国際間の緊張、日増しに激重たり。心痛せる者、吾れ一人に非ざるや。
 朝寝坊し、部長より注意受く。
 今日は、早く休もう。十一時半、床につく。
17  六月二十三日(金) 晴
 K宅にて、八時より十一時まで、指導員会議。帰り、良き先輩K氏を、自宅まで送る。
 帰室、一時。
 出席者 K H
     T U
     R S
18  六月二十四日(土) 三十二度 晴
 一日中、暑い日であった。
 朝、大森駅にて、友人O君に会う。若干、金子を手渡す、お互い様と思って。悩める人。o宅の問題に、頭痛める。あわれなる学校長の末路。
 八時、K宅、座談会。非常に疲れる。
 十一時三十分、床に入る。
 今日の激闘は、終わる。明日は又敢闘ある己。
19  六月二十六日(月) 晴
 凡夫は我が心に迷うて知らず覚らざるなり、仏は之を悟り顕わして神通と名くるなり神通とは神の一切の法に通じて礙無きなり、此の自在の神通は一切の有情の心にて有るなり。(三世諸仏総勘文抄)
 北鮮と南鮮の、戦火、遂に上がる。世界大戦の導火線になることを憂う。
 世界は、刻々と動く。地球は、もはや、小さな戦場、劇場の如しだ。
 人類は、再び、悲しみと、苦しみと、淋しさの、苦悩の渦に巻き込まれてしまうのか。
 三界は安きことなし、猶火宅の如しだ。
 吾等の、決然奮起する秋は来たのだ。
 まず祈り、実践だ、広布への。
 見ょ、人類よ。この吾等の、人類を愛し、平和を希う、勇姿を。
20  六月二十八日(水) 雨
 世界の情勢、危機をはらむ。
 遂に、来るか。人々、決戦の覚悟。
 平和を希う。絶対、戦火を拡げてはならぬ。
 吾人の覚悟は、泰山の如し。
 何も、恐れることはない。
 しかし、弱き人々を思う。
 されば、吾が心は、痛む。
 みな、長寿して、安穏であらんことを祈る。

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