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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十四年(十月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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2  十月二十五日(火) 雨
 朝、曇天。やがて、秋雨と化す。うっとうしい一日であった。
 『少年日本』休刊が発表される。全く意気消沈。午前中、編集室、事務室で、客と応対するばかり。
 自転する地球が、急停止したら、その反動は、大である。飛びゆく飛行機が、瞬間にエンジンが止まったら、大変だ。
 昨日まで、全生命を賭した仕事が、急停止したのだ。驚くのは、当然だ。
 ただ、世法の人々の曲解を、私は恐れる。戸田先生の御人格と大使命を、観ずればこそ。
 先生の指示のもと、私は、再び、次の建設に、何でも、お尽くししてゆけばよい。そう思えば、社員の、あわてふためいている姿は、滑稽にみえる。信心している者も、ない者も。
 戸田先生の人格は、嵐や、波浪で、押し流されるようなものでない。最終の事業によって、その偉大な、人格の勝利は、決定されるものだ。浪を越え、嵐を越え、最後に、その力と、高貴なる感化は、満ち溢れ、万人の尊敬と、渇仰の金字塔となることだろう。
 大衆は、愚人が多いともいえる。しかし、賢である。また、歴史は、偉大なる人物を、置き忘れることもある。
 されど、私は、真の人格者たる先生は、その光輝ある力は、消えうせることは、決してないと信ずる。
 A画家を、秋雨の中、訪う。不幸な人。
 大聖人の哲学を話す。早く、幸福になることを念じつつ。
 夕刻、銀座文庫に、I氏のぺン画『マゼラン太平洋発見』を、受け取る。
 帰り、新橋にて、一人、映画観賞。座談会に出席しなかったことを、痛切に苦しむ。
 さあ、明日だ。希望の明日だ。
3  十月二十六日(水) 快晴
 爽やかな、秋晴れ。元気で出勤。
 『少年日本』の跡後片付けだ。一日も早く整理し、一日も早く、先生の次の旗揚げを、待とう。そして、光輝の秋を送りたい。
 午後、H画伯を訪う。最後のお別れかも知れぬ。利害の付き合いは淋しい。大家、少年の心を、知らず。
 靴を、修繕する。一金百円也。
 身体が疲れてならぬ。夜学は、無理の様子。先生も、非常に、大変な様子。
 君の目的は何か。それは、宗教革命だ。
 宗教革命とは何か。それは、人類幸福への直道だ。
 宗教革命する方法は、何だ。
 自らが、この大哲理をば、実践しゆくことだ。
 そして自らが、根本を会得、感得しゆくことだ。
4  十月二十七日(木) 雨
 秋雨蕭条。正午まで雑談、編集室にて。
 嵐が発生したとの予報あり。今年ほど、嵐の多かったのも、珍しいであろう。その原因如何。ただ自然現象と、放言出来得ぬものがあるはずだ。
 I氏を、厚生省にたずねる。相変わらず、元気な友人の顔をみて、嬉しい。ダンスに夢中らしい。溺れねば良いがなあ。心配だ。多忙のため、少々の雑談で別れる。
 風雨、益々強し。
 五時にY先生と、大森駅に待ち合わす。五時三十分、来られる。二人して横浜小湊のH宅の座談会に出席。雨のため、市電遅れ、七時過ぎに、到着。五十人ほどの求道者あり。なかなか、意義ある座談会であった。十時閉会。Iさんと、蒲田まで帰る。
 台風、いよいよ激しい。題目をあげながら、嵐の中を帰宅。十二時。
5  十月二十八日(金) 雨後晴
 台風一過。十時頃より、秋晴れ。
 仕事、残務整理。午後より、机にて、本を読む。
 『少年日本』最終刊印刷出来上がる。これが当社の最後の雑誌か。大した出来ばえに非ず。実に、残念だ。刷りといい、紙といい、惜しく思うのみ。
 五時半、ソバを食す。社を、やめようとする人のあるを感ずる。己むを得まい。
 私は、また、明日より、強い、明るい力を発揮して、頑張ろう。若いんだ。青年なのだ。
 久しぶりに、夜、風呂にゆく。
 次第に老いゆく母を、可哀想に思えてならぬ。
6  十月二十九日(土) 曇
 朝八時、出勤。
 社員達と、神田通りを少々漫歩する。みな元気なし。
 途中、小雨降る。
 三時より、新事業への会合をする。
 戸田先生の経済観を、胸を高鳴らせて聞く。
 共産経済と、資本経済と、信用組合との連関性等。
 なお、先生の事業体験談。一生涯を貫いてきた、努力、情熱、苦心談等、尊いお話であった。他の社員はどう聞いておるか知らぬが。
 六時、分割払いの給料を貰う。床屋にゆく。給料が安い。私も、皆も、大変だろう。
7  十月三十日(日) 晴
 ゆっくり休む。九時、起床。秋晴れ。
 高らかに、題目を唱える。姪と昼食時まで戯る。可愛い子等は、人生のオアシスだ。
 尊い、幼少の子供等を、万人が、お互いに大事にしてゆけば、自然に、戦争回避の一大思想になると思うが。
 午後より、出勤。途中三か所、全国競技大会の聖旗の走持者と会う。真白きランニングに、逞しい力を思う。
 夕刻まで、編集室にて、残務整理。読書。
 夜、K宅を訪う。種々懇談。
 帰ると、母、ぐっすり寝ている。偉大なる母よ。

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