Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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昭和二十四年(六月)  

「若き日の日記・上」(池田大作全集第36巻)

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2  六月二日(木) 晴
 涙に濡れ、涙に新たなる力を感じ、涙に、云い知れぬ感激を胸奥に湧きいだす、青年時代。詩想豊かな青年、感激と努力に生きる青年。その尊き青年の生涯こそ、芸術上の極致の生き方なりと表現したいものだ。
 文学に、詩歌に、音楽に。
 青年らしく、自らの道を違えぬことを祈る。
 所詮、絶対に、御本尊を信ずるのみ―――苦悩の打開、人生の目的の成就、人類救出の偉業においては。大使命を感じながら、生きねばならぬ。大曙光を目指し、前進せねばならぬ。
 人間は、皆、虚栄を張るものだ。自分も、その一人だ。しかし、これからの指導者は、確固たる力をもつ人間でなくてはならぬ。古人、先覚者達の姿を忘れず。
 時代は、一日一日、前進する。前進に追いつき、否、前進の先駆をきれる、自分となりたいものだ。
 私は、子供が可愛い、未来の夢を実現する後輩なれば。日本人、全体が可愛い。何時でも、誰人にも、抱擁し、握手してみたい。しかしそれは、許されぬ、社会の掟が。
 私は、人類を愛する。恋人の如くに。しかし、私の口で絶叫しても、到底、届かない。
 世界の人々よ。今こそ、真の宗教、日蓮大聖人の教えに、従う時が来ているのだ。
 私は、金鐘を打つ。暁の静けさを破って。乱響の鉛鐘に負けずに。
3  六月三日(金) 曇
 朝から、涼しかった。午後より、雨になりそうであったが、降らなかった。
 毎日、忙しい。だが自分に、与えられた課題に、真正面から取り組むことだ。なれば、意義ある仕事になる。苦しくとも、実に楽しい。先生の会社を、日本一の会社にしたい。
 日本の雑誌を作り上げねばならぬ。
 学会の発展、闘争に、心を打たれる。
 父を信心させねばならぬ、一時も速やかに。我が家を、根底から、改革させねばならぬ、一日も早く。まさしく、自分の使命なりと痛感す。
 決断なき人生は、事を為すに非ず。私は、意気地なしか。これで、宗教革命を、真に成就しゆく青年といえるか。真の青年として、起て。真の青年として進め。
 夜、「三世諸仏総勘文教相廃立」を拝読。
 末代の学者何ぞ之を見ずして妄りに教門を判ぜんや大綱の三教を能く能く学す可し、頓(空)と漸(仮)と円(中)とは三教なり是れ一代聖教の総の三諦なり頓・漸の二は四十二年の説なり円教の一は八箇年の説なり合して五十年なり此の外に法無し何に由ってか之に迷わん、衆生に有る時には此れを三諦と云い仏果を成ずる時には此れを三身と云う一物の異名なり之を説き顕すを一代聖教と云い之を開会して只一の総の三諦と成ずる時に成仏す。
 ああ、無限に進動する大宇宙。連綿と創造されゆく歴史。火宅に包まれ、右往左往する社会。闘争に闘争を廻らす人生。人智の及ぼぬ、大自然の秩序ある配転。一体何をもって、多感の青年の、解決、解答の鍵とすべきか。いま、御書を拝し、歓びにふるえる。
 すべての本源、根底をあきらかに説き、真実の幸福を示唆された、仏法。
 何人よ疑わん。人類最高の指導原理ここに有り。政治家よ、文学者よ、科学者よ、覚醒せよ。信ぜよ、大白法を。
4  六月四日(土) 晴
 前進には、革命には、様々の圧迫がある。それを、打開しゆくのが青年の青年たるゆえんだ。冬に耐え、春の大地の萌芽の如くに。
 青年よ、いつまでも、甘い考えを抱いておってはならぬ。現実は、厳しい。向上、成長と、堕落との戦いが、青年時代だ。青年は、真剣に、目的に進む時、最も尊い。されど、決して、微笑を忘れてはならぬ。常に快活であれ。
 二時より、編集会議。『冒険少年』の改名問題がでる。日本一の少年雑誌に、何が何でも、仕上げねばならぬ。これが、自分の使命である。戸田先生に御恩をかえす所以でもある。
 六時より、青年部会。自分と、K君とで、邪宗仏立宗を破る法論の発表をなす。先輩各位の、熱の無いのには驚く。
 いよいよ、自分の真っ先に進む秋が来たか。広宣流布のために、大聖人の大哲学を、ひっさげて。
5  六月六日(月) 曇
 心身共に、疲労。毎日が激務だ。
 嵐の中の青春。これこそ、深く、遠く、幽である。ベートーベンの弾く、力強き調べの如き青春。ダンテの、狂わしきほどの、詩情溢るる青春。嵐に耐えゆく、雄々しき若木。嵐に光る幽美な樹木。砕かれでも、砕かれでも、なつかしき土の香り。芯まで、風雨に打たれでも、悠遠の美を忘れ得ぬ魂の躍動。嵐の中の青春よ。やがて来る、光り輝く、太陽
 を忘れず、前進することだ。
 朝より曇天。会計長より、早く出勤し、整頓するよう、みな注意をうける。女子職員も可哀想だ。資本家と、労働者との不合理を、まざまざとみせつけられる。
 いずこの会社でも、笑って、信じ合って、働き得る日の来るのを待とう。いや、待つのではない、作るのだ。自分達の手で。
 街では、東交労組の三支部、目黒、広尾、柳島でストだ。
 公安条例反対デモで、橋本金二と云う人が死んだ。殺伐たる日は、依然続く。
 広宣流布の、一日も早く来るように。
 祈る、祈る。唯祈る。
 会社にて、九時四十分まで仕事。皆帰り、唯一人。誰も見でなくても、真剣に働くことは、実に楽しい。
 帰宅、十一時二十分。遠くて困る。
 そして、ウドンが一皿。
6  六月七日(火) 雨
 梅雨に入るか。しとしとと朝から雨だ。
 東洋人は、特に日本人は、自然に対する詩想の情が強い。戦災復興の民族も、かわらず、かくありたい。
 しかし、現実の庶民は、入梅になると、ヒステリックになり、ますます感情の悲劇が展開される。痛ましき次第なり。
 身体、非常に疲れてならぬ。朝寝坊になって困る。人間革命が、信心の目的だ。頑張らねばいかん。
 一年毎に身体の丈夫になって来ることを自覚出来る。
 溺れゆく若人に、悶え苦しむ老人に、剛腹な人々に、真実の信仰の歓喜、情熱に溢るる五体、大使命に精進する、若き意気を、示しゆかねばならない。
 「正義によって立て、汝の力二倍せん」
 画家、I氏と、二時間近く、フランスの芸術、政治、社会に関して語る。
 雨が夕刻、次第に降る。
 静かな編集室で、一人読書。これから、うんと勉強しよう。負けてはならぬ。特に、政治面、経済面の学問をも。
7  六月八日(水) 雨
 今日も雨、寒いぐらいだ。
 『冒険少年』八月号の割り付けも大体終わる。ほっと一息だ。八月号こそ、大発展させねばならぬ。
 「仏法は勝負なり」
 正しき社会観をもった、日本正学館が、他社に負けてはならぬ。
 仕事上、多くの画家、作家と会う。先生々々といわれる人々。会ってみれば、がっかりだ。世に偉大なる人とは、人格者あるのみ。
 現今の芸術界に、何人、尊敬すべき人ありや。芸術家は、偏屈で良いのかもしれぬ。だが、何度、足を運ばすのだ、この貴重な時間に。
 帰り、蒲田駅近くの靴屋にゆく。古靴一足購入。
 社会は、矛盾が多すぎる。正しく生き、働いて、物質に恵まれぬ人。働かず、要領よく生きて、物質に事欠かぬ人。様々だ。
 所詮、人生の勝利者とは、物質の獲得者か。つまらん‥‥。自己の境遇を、じっと見るベし。そして、大いなる打開をして、未来の実証となす。これ信仰ではないか。
 青年よ、決して、悲観することなかれ。羨むことなかれ。
8  六月九日(木) 雨
 梅雨‥‥梅屋敷駅まで、歩く。道行く人々も、みな五月雨に濡れている。一入ひとしお、女学生達の白服が目につく。乙女達よ、君達の前途‥‥何も考えていないかも知れぬ。しかし、君達は、たしかに人々を潤している。君達こそ、偉大な芸術の要素をもっている。君達そのものが、芸術の権化であるかも知れぬ。清新な君達が、もし、いなかったら、との町も、社会も、世界も、なんと淋しきことだろう。殺伐であろう。家庭に花なく、天に星辰の輝きなきと、同じことだ。
 一人一人の、乙女等の、前途に祝福あれ。米人の、仏人の、スペイン人の、乙女達も同じく。
 雨の中、帰宅十時五十分。自宅まで、びしょ濡れだ。全く情けない。
 孤独なれど、その半面、脈々と、将来への曙光を思い、感泣す。
 夜食パン一皿。
9  六月十三日(月) 曇
 朝から頭が痛む。身体を大事にせねばならぬ。
 変遷に変遷を重ねゆく心境。目的を凝視していながら、ふらふらしている自己の悲しさ。勇躍し、はち切れそうな青春時を実感したかと思うと、魔に流され、断崖に立つ思いをなす、自己。
 宗教革命と、大理想を、思惟したかと思うと、現実の嵐に、境遇に、戦く、淋しき自己。
 青年よ起ち上がれ。前進だ。それ以外に、人間革命はないのだ。
 現実の渦中に、飛び込んで戦え。恐るるな。大使命を痛感せば!
 神田にて『パスカル冥想録』『情熱の書』他一冊、計三冊購入。合計、百二十同也。
 今日は、幹部会。躍進しゆく学会の雄姿。取り残されてはならぬ。ただ、仕事の都合上、思うように、学会活動の出来得ぬことが、残念であり、無念である。この五体をば、大聖人に捧げることは、何と幸福であろうか。
 折伏をせねばならぬ。学問も遅れている。明日は学校(夜学)にゆきたい。ずいぶん休んだ。友人が待っていることだろう。
10  六月十四日(火) 曇
 爽やかな朝であった。身体の調子、芳しからず。九時三十分、出動。
 みんな来ているので、きまりが悪い。明日よりは、もっと早く出勤することを、決意する。
11  六月十六日(木) 雨
 戸田先生より、叱咤ある。苦しい。
 自分が、悪いのだ。猛省せねばいけない。
 先生を信じて、どこまでも、頑張りきることだ。自分の悪いことは、常に反省し、革命してゆける人にならねば‥‥。しからずんば、哀れな自身をみるよりほかの人生は、ないであろう。
 全精力を発揮して、又、前進だ。
 過去の偉人の、少年時代、青年時代を、思い浮かべよ。

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