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日蓮大聖人・池田大作

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生の躍動  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

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4  フランスの哲学者ベルクソンはその著『創造的進化』で、全宇宙を進化の過程としてとらえる壮大な形而上学を打ち立てた。十代の終わりごろ、ベルクソンの哲学に惹かれた私の脳裏には、今も「エラン・ビタール(生の躍動)」という言葉がこびりついている。宇宙、生命の神秘を垣間見たベルクソンの魂の叫びであったろう。
 彼は『創造的進化』を書き終えたときの心境を、次のように述べている。
 「それまでは、数学と物理学に非常な興味をいだいていた。物質もまた一大神秘だと言いかねなかったことだろう。それ以後は違う。生命に注意を集中したとき、わたしは生命が大神秘であることが分かった」
 「生の哲学者」ベルクソンのこの感動を、現代人は謙虚に分かちもつ必要があると私は思う。生命、宇宙の神秘さに心を傾けることなく、いたずらに生を浪費することは、みずからに対する、また宇宙自然に対する叛逆ともなろう。
 宇宙人へのメッセージを積んだ木星探査機パイオニア10号が飛んでいるという。それがたとえ何百万年先のことであろうと、夢があっていい。天空を飾る星座は、それぞれの軌道を無表情に運動しているかのようでありながら、生々のリズムを刻んでいる。その宇宙と夜ごと対話し、生命の不可思議さ、その本源の深慮さを謙虚にみつめ思索する、余裕のある人生の姿勢をもちたい。そこに人間らしさというものを支える、見えない基盤があるのではあるまいか。

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