Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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発想の泉  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

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5  「コロンブスの卵」という言葉がある。一つの偉大な事業や発見というものは、それがなされてしまえば、決してはるか彼方にあるものではなく、むしろ日常の平々たる地点にあるもののように思われるものだ。しかし、その身近な、ある意味では素朴であるといってもよい死角に、勇気をもって英知の光をあて、そこから普遍的な真理を浮き彫りさせることは、なかなかできないことなのである。哲人や偉人といわれる人物の行動や探究の裏には、かならず、こうした一見なんでもないような、それでいて画期的な発見、発想がある。それゆえにこそ歴史上にその名を長くとどめているのであろう。
 現代は、膨大な知識の洪水のなかで、こうした、瑞々しい大きな価値の創造をもたらす発想、発見が喪失されているのではないだろうか。
 思想、哲学がすぐれているか否かを決めるのは、複雑とか単純とかいった問題ではなく、創造的な発想をどこまで生かしきっているかだと思う。すぐれた思想体系の根底には、かならず生活体験から生まれた発想があり、それは、だれにでも理解でき、共感しうるものであるにちがいない。それを欠いた思想哲学は、どんなに壮大な体系を誇ろうとも、あえて言えば、ただ空しい殿堂にしかすぎまい。現実の人間生活の汗と体温のぬくもりのなかに、汲めども尽きぬ発想の母がある、と私は信じたい。

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