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日蓮大聖人・池田大作

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百年の評価  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

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3  生誕百年といえば、私どもの創価学会の創立者である牧口常三郎初代会長も、やはり明治四年の六月六日生まれである。今年はそのささやかな記念の式典を催し、またつい先月の十八日には年忌法要も行った。その生涯と事蹟――とくに教育学の分野における業績については、今ではかなりの注目を浴び、三十二歳のとき、出版された『人生地理学』が見直されているのをはじめ、やがてはライフワークというべき『価値論』もかならずや大きい波紋を投げかけていくことと思う。
 牧口常三郎の生涯は研究、教育に没頭した時期と、昭和五年、創価教育学会を設立し、教育者の訓育、実践的宗教運動に身を投じた時期とに分かれる。しかしその両期を貫いて変わらなかったものは、人間、とくに貧しい民衆に対する愛情であったと私は思っている。それは昭和十九年、軍国主義権力によって投獄され、七十三歳で獄中に逝くまで、微動もすることがなかった。 ──人間としての深き愛と正義に殉じようとした思想家には、概して不遇な人が多い。今年、生誕百五十年を迎えたドストエフスキーもその一人だった。しかし、一時まったくロシア文壇から追放されていたドストエフスキーも、最近では復活しつつあるという。それだけ、現代が人間性回復を、潮流として待望しているのだともいえよう。
 ともあれ、世紀はまことに微々とした歩調ではあるが、人間の思考は人間自身に向かわねばならぬという前進の歩みを始めたことを、尊重していきたい。

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