Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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都市・古代と現代  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

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3  それはともかく、現代の都市を論ずるのに“ゴミ戦争”を引き合いに出さざるをえないとは、なんとも侘しい気がしてならない。しかしそれは、緑の自然が日一日と失われていくのとともに、濁りくすぶる現代の地表の姿を象徴的に示していよう。人間らしい文化生活ということを考えるとき、現代都市は、なんと憂鬱な灰色の巣窟になってしまったのであろうか。
 なるほど、高層ビルは背丈を競い、地下鉄や高速道路は網の目のように張りめぐらされてはいる。昔の、いかなる文化人も、空間を幾重にも器用に交差させて利用している現代の都市の実態を、驚嘆の眼をもって見るにちがいない。
 しかし、一方で、最も生活に密着したゴミ問題に悩む人間の姿を、いったいなんとみるであろうか。私には、今日の都市が、どうも人間のためではなく、経済的欲求という、得体の知れない怪物のために膨れあがってきたようにも思われる。
 ――「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」――有名な日本国憲法第二十五条の条文である。しかし、健康で文化的な生活とは、はたして狭い間借りの部屋にいっぱい電化製品をそろえ、その残りのわずかな空間に、人間が身をよじって横たわっている姿なのであろうか。
 現代の都市問題を考えるとき、文化的生活という考え方について、人間はもう一度見直す時期にきているのではないだろうか。

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