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日蓮大聖人・池田大作

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桜梅桃李  

「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第22巻)

前後
4  訪米の旅のなかで、とくに感慨ぶかかったのは、戦後アメリカに嫁ぎ、アメリカSGI(創価学会インタナショナル)の基礎を築いてきた草創の婦人たちとの再会であった。初めての出会いから、それぞれが二十年の風雪を刻んできた懐かしき人たちである。
 アメリカの大地に逞しく根を張り、生きいきと生活している彼女たちの明るい表情に接したとき、私は、ひたすら母国への帰郷だけを願っていた二十年前の彼女たちの、心細げな弱々しい姿が思い出されてならなかった。
 あるカメラ雑誌が、戦後、アメリカに嫁いだ日本女性たちの近況を、印象ぶかい写真で紹介していたことがある。
 取材に応じた人びとのなかで、自分はアメリカの“土”になると、きっぱりと言いきったのは、十人に二人。いまでもほとんどの人が、母国に帰ることを夢見ているという。
 私の会った婦人たちにしても、家庭不和、生活苦、さらにその苦悩を語る友もいない孤独のなかで、日本に逃げ帰りたいと、どれほどの葛藤がつづいたことであろうか。しかし、宿命の苦しみを使命感へと昇華させ、アメリカ社会に貢献しゆく立派な一員になろうと、精いっぱい努力したことであろう。
 言葉をマスターし、車の運転を覚え、未来に希望を見いだしながら、あらゆる障壁を乗り越えてきた彼女たち──。私は「桜梅桃李」の、ヒューマン・リブの美しい結晶を見る思いであった。
 時は人間の真実を洗い出す。
 アメリカの大地に、誇らかに自身を咲かせきった彼女たちの笑顔は、満開の桜花のように晴れがましかった。

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