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日蓮大聖人・池田大作

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貪愛の母  

「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第22巻)

前後
4  日本は母性社会であるといわれる。だが、二人の母の例にみられるような母性のもつ強さというものが、現代の社会では徐々に毀れつつあるように、私には思えてならない。深く進行しつつある子どもたちの登校拒否や家庭内暴力などは、その証左といってよい。
 ある識者は、登校拒否児に共通する特徴として、母親と一緒にいたいという欲望と同時に、学校へ行かせたいという母親の願いに対する反発をあげている。 その反発が、長じて家庭内暴力へと発展する──。もとより母親ばかりの責任では決してないが、それらの根にあるものは、岡本かの子女史や福沢諭吉の母の生き方とはまったく逆の、母と子のもたれ合い、癒着した関係である。
 仏法では「貪愛の母」ということを説いている。
 貪愛とは、五欲に執着することで、広くエゴイズム一般とも拝せよう。わが子に寄りかかり、思いどおりにしようとする欲望も、当然そのなかに含まれる。しかし、それでは子どもたちの自立心は育ちはしまい。 はえば立て 立てば歩めの 親心──とよく言うではないか。
 どこまでもわが子の、健全で逞しい成長を願うのが、親心である。であればこそ「貪愛の母」であってはならない。みずからの生き方を正しく保ち、自信をもった“後ろ姿”を、わが子の前に示していく以外にないと知っていきたい。

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