Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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良医の反省  

「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第22巻)

前後
3  病気を治してもらった恩に報いようとする王様の厚い心と心づかいの財物を知って、医者は有徳の王を恨んだ不明を悔いるのである。まことに「情けは人のためならず」である。とともに私は、この説話から、より深い教訓が学べると思う。
 それは、人情や愛情など、人間同士の心のやりとりにおける無報酬ということの大切さである。「自分がこれだけしてあげたのだから、相手も相応のことを」と、報酬を求める人間関係はどうしても脆い。相手が応えてくれないと、すぐ崩れてしまう。もちろん友人や知人の間で、礼儀が必要なことは当然だろう。しかし、それとても、古今の美しい友情物語などには、どこかに無報酬、無償の絆が秘められているものだ。
 ましてや、夫婦の間、そして親子の関係ともなれば、計算ずくのやりとりでは、とうてい成り立つはずがない。そこに要請されるものは、絶対の信頼関係であり、愛情である。無心に乳を口にふくむ嬰児と母親とのまなざしの交差のように──。ひたすらわが子の健全な成長を願うお母さん方の無償の愛情のように。
4  実際、「焼野の雉子夜の鶴」とは、よく言ったものだと思う。雉子は巣を営んでいる野を焼かれると、わが身の危険もかえりみず、雛鳥を救おうとする。また巣篭る鶴は、霜の降る夜には、みずからの翼でわが子をおおってかばう、というのである。
 母の愛をたとえるこの諺は、お母さん方の間では、決して死語になってはいまいと、私は信じているのだが──。

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