Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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心の浄明刀  

「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第22巻)

前後
6  人間の可能性といえば『新書太閤記』(吉川英治著)のなかに、福太郎という人物が出てくる。秀吉がいまだ若き日吉丸といっていたころ、奉公していた家の少年である。その少年は、甘やかされながら育っていったために、わがままで意地が悪い。日吉丸もさんざんいじめられる。
 やがて戦乱のなかで家が没落し、福太郎も人足などしながら、諸国を転々とする。性格はすっかりいじけてしまい、たまたま秀吉の下で働いているときも、小姓たちに“おたんこなすのお福”とからかわれたりして、ますます萎縮してしまう。そんな福太郎が、あるとき縁を得て、茶道の千宗易(後の千利休)に仕える。そこで隠れた才能の芽が発見され、やがてはひとかどの茶人になれるであろうと嘱望されるにいたる。生きいきとしてきて、性格的にも自信と落ち着きがでてきたことはいうまでもない。
 この小説の展開とは、あまり関係ないことであろうが、妙に私の印象に残っている。まことに人間の可能性というものは、どんなところに潜んでいるかわからないということを、感じさせる挿話である。

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