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日蓮大聖人・池田大作

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“妙音”の調べ  

「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第22巻)

前後
4  法華経には多くの菩薩が登場するが、なかに妙音という菩薩がいる。
 この菩薩は、浄光荘厳国という国に住み、その人徳と三昧(心を一所に定めて動じないこと)はまことにすぐれていたといわれている。なお求道心も厚く、釈尊の説法を聞くためには、八万四千もの眷属を引き連れて、はるばるやってくる。そのとき妙音を称えるように、大地は六種に震動し、天からは七宝の蓮華が降ってき、妙なる音楽が鳴りわたった、という。
 のちに、中国の天台大師は、法華経を釈した『法華文句』という書物で「妙なる音声をもって、あまねく十方に吼え、此の教を弘宣す、故に妙音品と名く」と述べている。
 ところで、法華経のサンスクリットの原本には、妙音菩薩は「ガドガダ」と表記されている。これは本来、“どもる”“聞きづらい”の意義である。
 それがなぜ、妙なる天楽の調べとともに登場する菩薩の名とされているのであろうか。
 この妙音菩薩は、過去世に、伎楽を仏に供養し、その功徳によって菩薩と生じたという。「ガドガダ」から妙音の人へ──もちろん経典にはその間の説明はない。しかし、あくまで一つの推測ではあるが、私の心には、そこに一個の人間革命の人生のドラマがあったと映るのである。
 宿命との苦しき戦いに生き抜き、やがて凱歌の人生の完成をしあげた、妙音菩薩の周囲の世界は、つねに人びとの心をなごませ、鼓舞してやまない、音楽や歌声につつまれていった。この事実から、だれびとの胸中にも、人生の生々輾転の妙なる音律はあるといってよい。挫折の友には勇気と希望を与え、みずからが名指揮者のタクトを振りゆく人生であっていただきたい。

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