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日蓮大聖人・池田大作

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民衆に愛された哲人 エマーソン『エマソン論文集』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
9  エマーソンは、つねに温かな人の輪につつまれていた。彼を慕って、多くの人びとがコンコードを訪れた。ガンジーにも影響を与えた思想家ソロー、理想主義的な教育者オールコット、宗教改革者のチャニングらとは、一緒に森を散策しながら哲学や人生を語りあうなど、美しき友情の劇を残している。
 晩年、彼は家を火災で失うという不幸に遭った。しかし、友人たちの真心により、わずか一年たらずで再築され、ヨーロッパの旅から帰国したエマーソンを、市民たちは、あたかも凱旋将軍を迎えるかのごとく、鐘を鳴らし歓呼の声で歓迎した。
 エマーソンは、語っている。
 「いっさいの門戸を押しひろげ、万人とともに味わい、万人につくす善だけが、本当に役に立つ美酒なのだ」と。
 彼は、みずからの国土を愛し、町を愛し、家族を愛し、友人を愛し、そして人間をこよなく愛した。故に、それらすべてのものから愛された。まことに、よきコスモポリタンとしての人格の光彩が鮮やかに放たれている。
 かつて、ハーバード大学のモンゴメリー教授と、エマーソンについて語らったことがある。教授は、私の親しい友人であり、カリフォルニアにある「アメリカ創価大学環太平洋平和文化研究センター」の所長を務めておられる。
 その折、教授は、エマーソンが住んでいた簡素で小さな家が、今もそのままの形で残っており、当時の雰囲気を伝えていることを紹介し、こう言い添えられた。
 「じつはこのコンコードにも、他の地域と同じように、ホテルや店舗の建設など開発の手が入ろうとしました。しかし、市民グループの行動によって、それが制限されるようになったのです」と。
 民衆に生きる人は強い。民衆に愛される人は永遠である。ダイヤモンドのごときエマーソンの生涯は、私たちに限りない勇気を与えてくれる。

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