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日蓮大聖人・池田大作

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自然こそ最良の教師 ルソー『エミール』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
10  ルソーの思想の光源は、すでに生前から西欧世界を照らしていた。
 ドイツにおいては、カントをして「人間の真の価値をさとった」といわしめたほど、その盛名は轟いていた。またゲーテも「ルソーとともに新しい時代がはじまる」と、彼の著作を読んで賛同している。
 死後は、彼の思想はいっそう光度を増し、ダイナミックな展開を遂げる。一年にして起こったフランス革命では、ロベスピエールなどによってルソーの思想が継承され、革命の導火線の役割を果たしたことは、あまりにも有名である。またアメリカの独立革命にも理論的根拠を与え、中国、ロシア、日本にまで、ルソーの思想的影響は流布している。
 わが国においては、中江兆民や島崎藤村らの文学者にルソーの影響は受け継がれた。中江が、自分の名を「億兆の民」をあらわす兆民とし、庶民を誇らかに自称していたととなども、ルソーの影響によるものと見る人もいる。
 現代においても、ルソーは謎の哲人、型破りな天才等と評される。その研究も、研究者の数だけある、といわれるほど多彩である。
 私も、これまでルソーについては何回か講演でも言及し、著作のなかでも浅学の一端を述べたことがある。彼の思想の根幹をなす自然人の思想、さらに、そこから創造される人間復興の精神には深く共鳴を覚える。
 恩師戸田先生も「子どもは、機会があれば田舎へ行かせて、はだしで土を踏ませなければ、丈夫に育たない」と、よく語っておられた。私は今でも、ルソーを読むと戸田先生のこの言葉を鮮やかに想起するのである。

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