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日蓮大聖人・池田大作

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宇宙生命との対話 徳冨健次郎『自然と人生』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
6  国破れ、山河のみ残された戦後──こうして蘆花の『自然と人生』は、私の愛読書の一つとなった。そして後年、創価学会の初代会長であった牧口常三郎先生の『人生地理学』を読み、ある不思議な、めぐりあわせのような思いを抱いたものである。
 それは、いずれも二十代から三十代にかけての明治の青年──独歩や健次郎が自然を謳歌し、宇宙生命との対話をなしつつあるとき、ちょうど三十歳になったばかりの若き牧口常三郎も、いわゆる「地人関係」についての二千枚におよぶ草稿を書きためていたということである。
 牧口青年が、その原稿を柳行李いっぱいに詰めて津軽海峡を渡り、はるばる上京して来たのは、明治三十四年(一九〇一年)の春であった。やがて地理学者、志賀重昂の推輓すいばんを得て、大著『人生地理学』を上梓したのは、明治三十六年(一九〇三年)十月、奇しくも著者三十二歳のときである。
 「地を離れて人なし。人を離れて事なし。人事を論ぜんとせば、まず地理を究めよ」とは、同書に引かれた吉田松陰の言葉である。

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