Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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散る桜  

1975.2.10 「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集…

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2  また大空襲に見舞われた工場や家々はそのほとんどが焼けてしまった。蒲田六郷に近い静かな寺院の一角が不思議に焼け残っていた。私は、物思いにふけりながら一人で歩いていた。と、幾本かの桜が、生き残り、美しく咲き薫っていた。私は立ちどまった。感慨こみあげるものがあった。
 私は湧き起こる感情を詩に託して詠んだ。
 稚拙な詩ではある。しかし、私の十七歳の日の一つのまぎれもない断面である、ということで、ここに記してみたい。
  戦災に 残りて咲きし桜花  空は蒼空 落花紛々
  その背景は 現実の廃墟   花仰がずして 民憐れなり
  流浪の彼方 厳しや     親子の道
  群居の波に 開花あり    夜明けの彩色か 桜花
  ああ複写あり この存在   権力人と 平和人
  散る桜 残る桜も 散る桜と 謳いし人あり
  青春桜 幾百万       なぜ 散りゆくか 散りゆくか
  南海遠しや 仇桜      爛漫未熟に 枝痛し
  残りし友も いつの日か   心傷あり 理念界
  諸行は無常か 常住か    それも知らずに 散りゆくか
  散る桜 残る桜よ 永遠に  春に 嵐と 咲き薫れ
 私は、この終戦の年の春十七歳に詠んだ自作の詩に「散る桜」と題をつけた。

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