Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

純粋な信仰の強さ  

1971.3.20 「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集…

前後
2  ある財産家が、なにかの理由で入信した。恰幅もよく、その地元社会では、かなり有名な人であったようだ。純粋な信仰の眼から見れば、なにか不純なものを感ずるところがあった。彼は折伏もよくした。だが、その魂胆が、所詮、自分の配下をつくり、勢力を増すことであることが見えすいてきた。
 ある日、あるとき。事業が苦難であった戸田のもとへ、友人のような姿でやってきた。雑談のなかで、彼はついに本音を吐いたのである。
 「戸田先生も、いま大変なようだから、少しぐらいなら応援してもよい。貧乏人と病人の多い学会では、なかなか布教もできまい。私を幹部にすれば、世間の見方も変わってくる」
 戸田は即座に言いきった。
 「貧乏人と病人を救うのが、本当の宗教だ。学会は庶民の味方である。学会は、いかにののしられ、嘲笑されようとも、その人たちのために戦う。仏の目から見るならば、最高に崇高なことなのである。君のように、ちょっとばかり資産家だからといって、有名を鼻にかけたり、見栄を張ったりする者の応援もいらぬし、学会の幹部になっては絶対に困る」
3  昭和二十八年の晩秋のことであった。信濃町の学会本部の第一応接室にて、戸田城聖は、とある初老の人と対面していた。戸田に呼ばれて、若き伸一も側に腰をかけた。戦時中、戸田城聖を取り調べた元司直である。
 彼は、最近入信したという。戸田に馴れ馴れしく、笑いながら、入信の経緯を語っていた。戸田は、淡々とあいづちを打っている。やがて彼は「戸田さん、過去は過去ですよ。なにか私にできることがあればしてあげましょう」──いまだ、傲慢な態度である。
 戸田は、毅然として言いきった。
 「必要ない。時代が変わったからといって、君に頼むものは学会には断じてない。私にへつらっていれば、私がいい気になると思ったら大間違いだ。学会は純粋な信仰で、いっさいを切り開いてゆく」
 伸一は彼を玄関まで、礼儀ぶかく送っていった。
 暖かな春が、今日も、また一歩近づいてきた。可憐な“忘れな草”も“さくら草”も、冬に耐え春を待っていよう。

1
2