Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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「一冊の御書」に学ぶ  

1971.3.12 「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集…

前後
2  戸田城聖の微笑が、伸一の瞳に素早く入った。戸田城聖の博学は有名である。とくに御書の拝読の鋭さは、完璧であったことはいうまでもない。「立正安国論」「開目抄」「観心本尊抄」「文段」「六巻抄」「御義口伝」等々、その悟達の境涯よりの講義を拝するたびに、世界一の大学者であったことを、私は信ずる。そのなかにあって、入信まもなく、初めて出席した総会(東京・神田の教育会館)での「開目抄 下」の一節の講演が、私の耳朶を劈いたことがいまもって忘れられない。
 詮ずるところは天もすて給え諸難にもあえ身命を期とせん、(中略)善に付け悪につけ法華経をすつるは地獄の業なるべし、大願を立てん日本国の位をゆづらむ、法華経をすてて観経等について後生をごせよ、父母の頚を刎ん念仏申さずば、なんどの種種の大難・出来すとも智者に我義やぶられずば用いじとなり、其の外の大難・風の前の塵なるべし、我日本の柱とならむ我日本の眼目とならむ我日本の大船とならむ等とちかいし願やぶるべからず。
 そのときの伸一の全生命には、大風と津波が、一時に襲いかかったような感動が巻き起こった。しかしやがて、新生の静寂な大地と、太陽光線が描き出されていった。
 一日中曇天。雨が降るかなと思ったが、降らなかった。少々、身体がだるい。二階の夜の書斎は、膝掛けがないと寒い。執筆の合間に、横になりながらスタンダールのこんな言葉を思い出した。
 “自分の本当の性格を生かせない人間は、だれでも自分の力を出しきれない”
 時計を見たら、夜半の一時をいつのまにか過ぎていた。

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