Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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随縁の響きもつ和歌  

1971.3.9 「随筆 人間革命」「私の履歴書」「つれずれ随想」(池田大作全集第…

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1  春光。
 春の日脚に、執筆をしている私の座敷が、暖かい。君子蘭が、鮮やかに室を飾っている。剣状の緑の葉に、樺色の花が美しい。先日、日達上人よりいただいたものである。
 四月二十八日は立宗の日。この日を記念して、植樹祭が総本山で行われることになった。広布の前途は、いよいよ春の夜明け。総本山を花の幕で飾りたい。
 第七巻の『人間革命』の原稿を、三月二十三日に手渡すことになった。三回分ほどを纏めて、第一回の手渡し分にしたいと思っている。私にとっては、その日から油断のならぬ日々となり、新たな修行となるだろう。新しい担当者は、当年二十六歳のJ君に代わったとのこと。彼は中央大学出身であり、誠実でまれにみる緻密な頭脳の持ち主であるようだ。また、剽軽なところもあるんですよ、とは第三者の人物評である。父を早く亡くしし君、佐賀にまします母のためにも、栄光の青春であれ、と私は祈る。
 戸田城聖は、よく和歌を詠んだ。数学家であった先生が、信仰より燃えいずる和歌を、作られていく人格の断面。多くの弟子に、それらを贈られたりした。また、元旦を記念したものや、青年部、女子部にあてたものもある。専門家よりすれば、さして上手とはいえないかもしれない。しかし、和歌は先生の心の詩である。その人、その人に、そのとき、そのときの随縁の心の響きがあれば、和歌の使命は達成されていよう。
2  元旦の和歌
  行くならば
    貴き御法
      身につけて
    こんろんの山も
      我は恐れじ(昭和二十九年)
  妙法の
    広布の旅は
      遠けれど
    共に励まし
      共々に征かなむ(昭和三十年)
3   雲の井に
    月こそ見んと
      願いてし
    アジアの民に
      日をぞ送らん(昭和三十一年)
  御仏の
    御命のままに
      折伏の
    旅路もうれし
      幸の広野は (昭和三十二年)
  獅子吼して
    貧しき民を
      救いける
    七歳の命
      晴れがましくぞある(昭和三十三年)
4  青年部への和歌
  荒海の
    鯱にも似たる
      若人の
    広布の集い
      頼もしくぞある(昭和三十二年)
  若き芽の
    のびゆく姿
      ながめつつ
    妙法流布の
      旅はたのしくもある (昭和二十七年)
  君等こそ
    仏の軍の
      旗本ぞ
    はげめつとめよ
      聖の訓に (昭和二十七年)
5  女子部への和歌
  秋の日に
    若き乙女と
      相みては
    君等の幸を
      祈りてぞある (昭和二十八年)
    年暮れて
      深山の雪は
        白かりき
      若き乙女の
        心にも似て(昭和二十八年)
 立宗七百年を迎えて
  幾度も
    弱き心に
      むちうちて
    仏の道に
      仕えよ友どち(昭和二十七年)
  恐るるな
     仏の力は
       偉大なり
     若き血潮に
       たぎらせて立て(昭和二十七年)
 いまだ信仰していない一婦人より、私あてにこんな手紙が舞い込んだ。
 ある冬の雨の日、寒い朝であった。凛々しい一人の青年配達員が姿を見せた。その顔に、微笑さえ浮かべている。大切そうに、抱えている「聖教新聞」をビニールに包み、誇り高く走って行く。わが子に比べて、なんという雄々しい姿であろう──幾日も、変わらざるこの姿に接し、私は決意した。大切なわが子を育てるためにも、私自身、青年に教わり、新しい信仰の道に入りたい、と。

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