Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

後記  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

前後
2  『私の人物観』に引き続いて収めたのは『忘れ得ぬ出会い』である。ここには、有名無名織りまぜて三十名にのぼる人々が登場している。
 このなかでは「初老の駅員」「小学校の担任楢山先生」「周恩来首相と桜」「ある農家の主婦」等、名随筆として知られているものも多い。
 「初老の駅員」では、五十年配の詰め襟の駅員が、満員の出征列車に乗っている一人の兵士を探すために懸命の汗を流す光景が描かれている。兵士と母、兵士の弟の著者。その三人の束の間の出会いのために、駅員はメガホンをたずさえてホームを往き来し、ついに兵士を列車の窓側に呼びだすことに成功した。
 人が人に対し、われを忘れて懸命につくす姿ほど美しいものはない。善意の行動に込められた誠意は、常に一幅の名画にも等しい人間模様を描きだす。厚い人情や人間愛の灯も随所にともされ、まことに心温まる随筆集となっている。
3  最後に『心に残る人びと』であるが、本書には前述した雑誌「潮」に掲載されたもののほか、新たに書き下ろされたものを含んでいる。
 すなわち「潮」の掲載期間は昭和五十四年三月号から同五十六年五月号までであったが、その後、著者が旧ソ連、東欧、西欧を訪れた際に会見したチlホノフ・旧ソ連首相、フランスのポエール上院議長等のものも加えることとなり、いっそう充実の度を加えての発刊となった。なお「潮」掲載のものにも、その後、若干の加筆がみられるのでお断わりしておきたい。
 『心に残る人びと』は、随筆としては『忘れ得ぬ出会い』と趣を同じくする印象記の感があるものの、こちらは同じ出会いの相手が、すべて一国を代表する知性三十名となっている。思想や信条もほとんど異なるこれらの人々と、著者は人間としての生き方を介して人種、国境を超えた心の触れ合いを和気あいあいのうちにかもしだしている。著者とこれらの人々との間に交わされる対話は、みごとな友情の虹を描きながら、さらに国際的な金の懸け橋にまで及んでいくに相違ない。胸襟を打ち聞いた対話は、温もりのこもった人間味を生み、人々の帰るべき心のふるさとを作りだす源泉となるであろう。
 以上三冊の随筆集はともどもに味わい、深く、人生の水源たり得るものばかりである。
    平成四年七月十七日

1
2