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日蓮大聖人・池田大作

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環境問題のヒューマニスト ルネ・デュボ…  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

前後
4  生命の永遠性についても、ご意見をうかがった。博士は「あなたの質問は、難問ばかりですね」と苦笑されながらも、「個人が現世を超えて生き残るということを信ずる」と、肯定的であった。その理由の一つとして、人類史の発端と同時に宗教があったこと、そして原始人が死後の生命を信じていた形跡があることなど、人類学的な根拠を挙げられて、「太古にこのような観念が、人間精神に根ざしていたということは、それが人間の普遍的な特質を物語っているとも考えられる。人間は経験的過去を忘れ去ることはできないのですから」と述べられた。宗教的存在としての人間の本性を鋭く洞察した発言であった。
 対話に引き込まれて時の移るのを感じなかったが、ふと壁ぎわの置時計を見ると、すでに十時近かった。二時間におよぶ実り多い対談であった。
 別れの握手とともに、私はなにかほっとした気持ちになった。それは、トインビー博士との約束を果たせてよかったという思いである。デュボス博士との会見は、それより半年前にトインビー博士が私に課した″宿題″だったのである。
 その後、デュボス博士から、ご自身の近著『内なる神』が届けられた。その扉に「本書の最後の一行に『ものごとのなりゆきは運命ではない』とあるのは、私が日蓮正宗の教理を人文主義的、科学的に表現したものである」と、サインとともにしたためられであった。添えられた手紙を見ると「本書の精神は″人間革命″というあなたの思想と、必ずや一致するものと思う」とあった。
 ものごとのなりゆきは運命ではない――。
 私は、相接する部分が多々あった対談のひと夜を思い出す。そして、この一句を思うのである。人は、とかくものごとを運命のせいにしたがる。だが、運命の奴隷となってはならない。英知と勇気を発揮して、自ら希望を切り開きゆくことこそ、人間らしい自由意思の発揚ではないか、と。
 博士は今、七十九歳。ロックフェラー大学主任教授として、毎日、研究室へ通うなど、なお、お元気で活躍されているようである。

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