Nichiren・Ikeda
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初老の駅員
「私の人物観」(池田大作全集第21巻)
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3 品川から帰る京浜急行の車中、母は「会えてよかったね」と言ったが、それきり寡黙だった。その無言の母の心は、知りえようはずもなかった。
長兄は、一度は中国大陸の戦線より帰還したが、再び召集されて、昭和二十年一月十一日にビルマで戦死した。兄の誕生日の翌日であった。その白木の箱を手にした母も、他界してすでにいない
四十年も前のことである。そのときの感謝とともに忘れ得ぬ駅員さんも、健在ならば九十歳前後になっておられるはずだ。さまざまな運命と波瀾の人生であったにちがいない。