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日蓮大聖人・池田大作

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″民主″の星 リンカーン  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

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9  南北戦争以来百有余年、リンカーンの体現していた伝統の精神は、どれだけの命脈を保ちつづけているであろうか。それを判別するほど、私は彼の国の事情に詳しくない。ウォーター・ゲートの事件のとき、祖父の時代に帰れと声高に叫ばれていたのをみると、まだまだ生きつづけているのかもしれない。だが、ベトナム戦争という、精神史的には南北戦争以来の大試練が、数百年の伝統と使命感を、大きく汚してしまったことも事実といわねばならない。リンカーンが、今日生きていたとすれば、その顔に浮かんだ憂いは、いっこうに晴れないにちがいない。
 私の二十代のことであったろうか。ラジオが「私は奴隷になりたくない。だから奴隷を使う身にも、なりたくない」という趣旨の、リンカーンの言葉を流していたのを記憶している。福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」などと並べて、繰り返し放送していた。この偉大な憐欄と人間愛が、人類の頭上に陽の目を見るのは、いつの日であろうか。

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