Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

教育の場は身近にある  

「婦人抄」「創造家族」「生活の花束」(池田大作全集第20巻)

前後
6  人間らしさをはぐくむ教育は父母の役割
 少年は大自然の恩恵に感謝しつつ、万物をはぐくむ宇宙生命への畏敬の念を深くし、天地に律動する“生命の糸”を見いだした喜びにひたると思う。文明は、これら少年の心に宿る貴重なものを、まったく無視しつつ今日の危機を迎えるに至ったといってよい。自然は人間にとって征服の対象であり、利用すべきものであるという不遜な価値観を転換させてくれるものも大自然の深いかいなである。
 残念なことに、大人たちのつくった現代の都会生活は、少年から大宇宙に憩い、自然と遊ぶという生得の権利を、いよいよ決定的に奪おうとしているようだ。すでに大都会では、自然は破壊しつくされ、子供たちの日々の生活は大地から離れてしまった感がある。
 しかし大地を離れた教育は、真に人間らしさをはぐくみはしない。私は、子供たちに物を大切にする心、生命の尊厳にうなずく心を期待するならば、まずなによりも雄大な自然美に感動し、宇宙の律動を教えてあげるような優しくも厳粛な父であり、母であってほしいと願わずにはおれないのである。
 都会の片すみでひっそりと咲く雑草に心をとめ、強風でスモッグが吹きはらわれたひとときの夜空に夢を語り、窓辺にまぎれこんだ小動物にあいさつを交わすような美しい母の心があれば、どんな都会に住もうとも、幼子を母なる自然へとおもむかせると思う。
 休日のピクニックもよい。公園での水遊びもよい。植物の栽培、小動物の飼育でもよいだろう。工夫をこらして、子供たちに自然に親しむ場を与えれば、それがなによりの身近な教育の場となろう。 生あるものとともに生きる文明のあり方──その苦難の道を開くところにしか、もはや人類が生きつづけ、輝く未来創造を可能にする方途はない。私たちは、宇宙生命の妙なる鼓動に触れ、自然との“応対”を身につけた若者の成育を待って、自然略奪と物質浪費の文明からたもとを分かち、新たな大自然との共存の道を探りたいと思う。
 種々思いつくままに書き綴ってきたが、幼子をもつ父と母の視点の置き方によっては、いくらでも身近に貴重な教育の場があるものだ。
 子供たちの瞳がいつも希望に満ちて輝きつづける世界のために、次代のために、父と母は重要な役割を担っているのである。

1
6