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日蓮大聖人・池田大作

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未来社会を担う「創造家族」とは  

「婦人抄」「創造家族」「生活の花束」(池田大作全集第20巻)

前後
3  創意に満ちた主婦の姿
 狂乱物価に、まず、知恵の発動をうながされるのは、家庭の主婦である。
 悪どい企業者のエゴを見抜く知恵、毎月の家計簿からその家庭の症状を冷静に診断し、対策を練るための知恵、できるだけ物を長持ちさせ、有効に使用する知恵、高価でなくても手づくりの味をととのえる知恵ある主婦、夫との対話、マスコミを通じての情報、隣人との情報交換、祖父母の深い経験に根ざした知識を吸収しながら養いゆく理想的主婦の姿を、私は思い描くのである。
 主婦が創意に満ちた生き方をしていけば、その生き方はそのまま、子供たちの生命に植えつけられる。それは家庭教育のなによりの栄養分となるはずである。
 夫や祖父母の心からの協賛をえることも、ほぼ間違いないであろう。創造的な知恵を絶えず磨きぬく主婦の照らす家庭には、創造的な生命をはぐくむ土壌がつちかわれていこう。ある哲人は「家庭は社会の永遠の学校である」と言ったが、「社会に開かれた家庭」からは、いかなる試練にも耐える創造的生命が羽ばたいていくにちがいない。
 「創造家庭」「創造家族」の集団は、愛の動脈をかよわす人間錬磨の道場である。夫と妻、父と子、兄弟姉妹の間に繰り広げられる相互啓発の人間模様ほど、華麗な美を私は知らない。既成の美、他者から与えられた美には、生の輝きが失せている。
 創造家族のあやなす家庭美には、祖父母や老人たちの伝統が息づき、現代感覚に目覚めた若者の血潮と融けあっている。現代と歴史の触発、重厚な体験と青春のエネルギーの昇華から、創造家族のつくりだす未来の家風がうぶ声をあげる。個性豊かな家庭原理とも呼ぶことができる。
 押しつけられた人生観ではない。与えられたビジョンでもない。一昔前のカビのはえた生活様式でもない。創造のかぎりをつくして、家族全員の協調と汗のもたらした家宝──その伝持者に、私は主婦を選びたいと思う。
 主婦の体内にはぐくまれ、次々と誕生する核家族に伝えられる、その家族独自の生活理念が、娘や息子や孫たちの、逞しい未来を飾るにちがいない。創造家族の営みは、社会に開かれているとともに、世代を貫いて未来の人類にも開かれていると言わざるをえない。
 私は、つねづね、暗雲たれこめる二十世紀後半の世界を転回させる人間群を、創造的人間に求めてきた。あと二十五年にして幕をあける新たな世紀に現出するであろう社会を、創造社会と呼べるようであってほしいと願っている。そして、今、私は、創造社会という生命体の基礎をなす家族集団──創造家族──の創設を、慈愛と知性美にあふれる太陽のごとき主婦の手に託すことができるかどうかに、未来社会の一切がかかっているとさえ思うのである。

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