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日蓮大聖人・池田大作

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不安な時代を生きるあなたに  

「婦人抄」「創造家族」「生活の花束」(池田大作全集第20巻)

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3  苦難のなかの経験がいつかは……
 私はこの話を老インテリから聞いて、私自身、こういう時代にならないよう心から願っている一人ですが、今、思い浮かんだのは、これからの世の中がまことに住みにくいことになるのではないかということです。若い人びとにとっては、じつに思いがけぬ衝撃が襲うことにもなりかねませんが、満州国はもはや二度と私たちの前には現れないでしょう。国の経営が輸出産業に依存しているだけに、資源のないわが国は、前途多難といわなければなりません。
 資源といえば、誰でも石油を考えざるをえなくなっています。太平洋戦争直前の日米交渉は、実のところ石油交渉でした。アメリカが日本の侵略を抑えるために、日本への石油輸出を途絶したことから、日本の死活の問題となりました。交渉は決裂し、日本は東南アジアの石油資源を手に入れるために、開戦に踏み切ったのです。
 ここで私は考えるのですが、アラブの石油制限は、ひと昔前だったら、第三次大戦勃発の十分な火種となったにちがいありません。アラビアの海には大艦隊がずらりと並び、砲門をアラブの国々へ向けたことでしょう。石油獲得の威嚇のための一触即発です。
 今、世の中は変わって、そのような事態が現出せずにいることを非常な幸せと感じております。ともかく、世界は狭くなり、経済的な利害は互いに緊密に錯綜し、戦争という悲惨な愚挙は敵味方もろとも破滅することを知った人類の知恵が、やっとここまできたかと、私は嬉しいのです。世界の人びとの心に宿る恒久平和祈願の精神が、目には見えない平和的努力として、強く根をおろしはじめた一事実として、一つの光明として、祈りたい気持ちを禁じえません。
 天災はどうしようもありませんが、人災は人間の究極の知恵でいつかは克服することができます。人類数千年の間に繰り返されてきた残酷な戦争さえもやがて遠い昔話となることもあるでしょう。
 皆さんは、戦争を知らずに、戦後も遠くなりつつあります。
 これから初めて経験するであろう深刻な経済不況も、石油飢饉もすべて人災に属します。
 人災を克服するには、何が必須な条件かといえば、それはただ一つ、人間の心の奥に巣くうエゴイズムを克服すれば足りるのです。容易ならぬ克服であるとしても、一人また一人と、己のエゴイズムの醜さを自覚することが、これからの人類の最大の課題になっていくにちがいありません。
 人の一生を具にみれば、波乱に富んでいて、見当もつかないことにも遭遇しますが、社会もまたそのとおりで、思いがけない緊急事態に陥り、やがて血路を発見し、新しい展開をもたらすものです。しかし、人間の英知が真に芽生えるのもこのような時です。皆さんは、いつまでもぬるま湯につかってはいられません。これからは世界のさまざまな新事態を経験し鍛えられ、苦難のうちに多くのものを体得するに至るでしょう。その体得したところのものは、未来の人類の知恵の種になり、やがて輝く時のあることを私は信じております。

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